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「トップダウン」でも「ボトムアップ」でもない…結果を出せる強い組織に共通する「第三の選択肢」

プレジデントオンライン / 2024年3月6日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Eoneren

強い組織は何が違うか。中尾マネジメント研究所の中尾隆一郎さんは「トップの資質に依存し長期的な安定感がないトップダウンと、判断に時間がかかり瞬発的なスピードがないボトムアップのいずれもダメである。変化の激しい現代では、最終的には現場が自分で考えて、自分で行動し、成果を出し、そこから学ぶ、自律自転する人・組織が1つの回答になる」という――。

※本稿は、中尾隆一郎『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■「トップダウン」と「ボトムアップ」どちらが正解か?

変化が大きな現在、「どのような組織を作りたいのか?」「作る必要があるのか?」ということを考えてみましょう。判断の仕方、情報の流れという観点で組織を考える際、一般的に対比されるのが「トップダウン型」の組織か、「ボトムアップ型」の組織かという議論です。

トップダウンとは、企業のトップであるリーダーが判断を行い、ボトムである現場に指示することで事業運営を行う方法です。

一方のボトムアップは、トップダウンとは逆に、現場にある程度の権限を与えて、現場の意見やアイデアをトップが汲(く)みとったうえで事業運営を行う方法です。

トップダウン・アプローチとボトムアップ・アプローチ
出所=『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』

それぞれメリット、デメリットがあります。

トップダウンの一番のメリットは、判断の時間が早い点です。

デメリットは、どうしてもボトムである現場は受け身になり、指示待ちのメンバーが増加します。加えて、上司に判断を仰がないと、自分でやることを決められないので、モチベーションが低下しがちです。

しかもトップの能力に依存するので、業績を上げ続けたトップが交代した際に、新しいトップの判断ミスなどが起きがちで、長期的に業績安定が見込めません。カリスマ経営者が、次の経営者に引導を渡せない話などが該当します。

■トップに判断を仰がなくても現場で判断ができる組織か

ボトムアップの場合、現場の意見が事業運営に採用される、つまり、現場の従業員にとって自分たちの意見でやることを決められるので、モチベーションが高くなります。

ボトムアップのデメリットは、判断の合意形成などに時間がとられることが多い点です。変化が大きい時代に判断に時間がかかるのは致命的です。みなさんの組織は、どちらに近いでしょうか?

一般的に、「トップダウン」と「ボトムアップ」どちらがよいのかという議論になるのですが、トップダウンは、トップの資質に依存するので、長期的な安定感がなく、ボトムアップは、判断に時間がかかるので、瞬発的なスピードがありません。

変化の大きい現代では、変化を把握するためにも、顧客情報を持っている現場の意見を参考にする必要があります。加えて、変化が大きいので、瞬時に判断することが求められます。つまり、トップダウンだけでも、ボトムアップだけでもダメなのです。

最終的には、トップに判断を仰がなくても、(トップの判断の軸が分かっている状態で)現場で判断ができる組織が求められます。つまり、現場が自分で考えて、自分で行動し、成果を出し、そこから学ぶ、自律自転する人・組織が1つの回答なのです。

■理想的な組織は「ミドル・アップダウン」

そこで登場するのが「ミドル・アップダウン」によるマネジメントです。

ミドル・アップダウンは、トップダウンとボトムアップそれぞれのメリットを活かしつつ、デメリットを弱めることが可能だと言われています。「トップ」はリーダー、「ボトム」は現場のメンバー、「ミドル」は中間管理職を指します。

ミドルである中間管理職が、トップの考えをすばやく現場メンバーに浸透させつつ、現場が把握している顧客情報や、意見、あるいは不満を汲み上げ、トップに伝える役割を担います。

かつて、中間管理職は不要だという議論があった時代もあったのですが、変化が激しいこの時代には、トップとボトムを上手につなぐことができる「ミドル=中間管理職」の役割が再度注目されています。

つまり、「トップダウン」でも「ボトムアップ」でもなく、それらのいいところ取りの「ミドル・アップダウン」が自律自転する組織を作るための1つの最適解なのです。

ミドル・アップダウンの組織イメージ
出所=『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』

■新たな「ミドル=中間管理職」を育成する

しかし、「ミドル・アップダウン」にもデメリットといえる実現が難しいポイントがあります。それは、この「アップダウン」を行える「ミドル=中間管理職」が、組織の数だけ必要になる点です。

最近は、ミドルである中間管理職は、マネジメント業務に加えて、自分自身もプレイヤーであることが少なくありません。

つまりプレイヤー業務、通常のマネジメント業務に加えて、新たに「アップダウン業務」が求められるのです。これを「あなたたち中間管理職の仕事だからやるべきだ」と、押し付けるだけでは何も解決しません。必要なのは次の3つです。

①中間管理職の育成
②現場の見える化
③アップダウンする仕組み

私自身もリクルート時代に、この中間管理職の育成と現場の見える化、そしてアップダウンをする仕組み作りに積極的に取り組んでいました。

まず、育成については、中尾塾という中間管理職育成塾を組織内に作り、次の中間管理職候補を育成し続けました。

育成には、一般的には、セミナーや研修形式で知識やスキルを習得するOff-JT(職場外研修)と実際の仕事を通じて知識やスキルを習得させるOJT(On the Job Training)の2つを組み合わせることが必要です。

中間管理職の育成における2つの要素
出所=『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』

なぜ、2つを組み合わせる必要があるのか。

片方のOff-JTとして研修やセミナーを実施し、スキル習得を行ったので、「もう現場で実践できますね。頑張ってください!」だけではうまくいかないということです。

中間管理職のみなさんが、学んだスキルや知識をどのように現場で活用しているのか、それを「見える化」して、必要に応じてOJTで支援する必要があるのです。

それは、中間管理職が、知識やスキルを習得したからといって、それを実際に現場で実行できるかどうかは分からないからです。

■「知っている」と「できる」の間にある大きな溝

知識やスキルを習得して、それをいつでもできるようになるには、次の5つのステップがあります。

具体的には、「知らない」→「知っている」→「理解する」→「実行する」→「できる」の5つのステップです。そして、それぞれのステップの間には大きな壁、溝が横たわっています。

「知っている」と「できる」の大きな壁
出所=『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』

例えば、Off-JTで知識やスキルを習得できたら「知らない」→「知っている」に変わります。しかし、「知っている」からといって、できるかどうかは分かりません。

中間管理職が、学んだことや方針を「できる」ようになるために、「理解する」以降を「見える化」して、必要に応じて中間管理職を支援することが、トップや本部機能に求められているのです。

中尾隆一郎『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』(フォレスト出版)
中尾隆一郎『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』(フォレスト出版)

そして、これらを実施してこそ、「現場の意見がトップに伝わり、それを参考にトップが判断し、それを現場に伝え実行する」というミドル・アップダウンのサイクルが回り出します。

もちろん、これにも仕組みが必要です。

これらの中間管理職の育成、現場の見える化、アップダウンする仕組み化を整備して、現場主導の自律自転する人・組織が実現します。

そして、変化の大きい現在では、この自律自転する人・組織を作ることで、安定的に業績を挙げ続けられるようになるのです。

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中尾 隆一郎(なかお・りゅういちろう)
中尾マネジメント研究所(NMI)社長
旅工房取締役。LIFULL取締役。ZUU取締役。東京電力フロンティアパートナーズ投資委員。LiNKX監査役。1964年生まれ。大阪府摂津市出身。1989年大阪大学大学院工学研究科修士課程修了。同年、リクルート入社。リクルート住まいカンパニー執行役員(事業開発担当)、リクルートテクノロジーズ社長、リクルートワークス研究所副所長などを経て、2019年NMI設立。NMIの業務内容は、①業績向上コンサルティング、②経営者塾(中尾塾)、③経営者メンター、④講演・ワークショップ、⑤書籍執筆・出版。専門は、事業執行、事業開発、マーケティング、人材採用、組織創り、KPIマネジメント、経営者育成、リーダー育成、OJTマネジメント、G-POPマネジメント、管理会計など。

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(中尾マネジメント研究所(NMI)社長 中尾 隆一郎)

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