洗濯、トイレ、仕事、カフェを兼ねる…急拡大中「チョコザップ」が街のインフラ化でコンビニを超える日
プレジデントオンライン / 2024年4月5日 11時15分
■チョコザップのサービスの多様化が止まらない
コンビニジムとして知られる「チョコザップ」が、「スマートライフジム」に向けて新領域を展開するというプレスリリースを出した。発表によれば、2024年3月28日から、カラオケ、洗濯、キッズパークなどの新サービスが本格的に導入されるという(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000121693.html)。
チョコザップは2023年9月、「セルフホワイトニング」「セルフネイル」「マッサージチェア」などの6種の新サービスを導入したばかり。これら新しい取り組みによって、会員数や店舗数が増加し、現在、店舗数は1383店舗(24年3月末見込)、会員数は112万4000人(24年2月14日時点)に及んでいる。
こうしたチョコザップの多角化が進む中で、そのビジネス上の敵が変わっている。今回は、その変化について見ていこう。
■初期は「対ジム」だった「チョコザップ」
もともと、チョコザップは、既存の本格的なジムに対して「チョコっとだけ」トレーニングをすることができるジムとして、その優位性を発揮していた。ジムというと、トレーニング上級者(トレーナーなど)の男性がいて、どこか怖い雰囲気がある……というイメージを崩したのが、チョコザップである。
この段階でチョコザップは、あくまでも「ジム」であり、既存のジムがターゲットにしていなかった層を呼び込むことを目的としたビジネスであった。特に住宅街の中など、日常的に使いやすい場所に狙いを定めた出店によって、運動の服に着替えずに数分だけ鍛える、美容を主目的にする、などジムに行くことのハードルを下げた出店は、こうしたライト層への訴求に役立ったといえるだろう。この点は、同社社長の瀬戸健もインタビューの中で繰り返し述べているところだ。
初期の頃、チョコザップが戦っていたのは「既存のジム」であり、そうした施設との顧客の奪い合い(あるいは新規顧客の開拓)に成功したことが、チョコざっぷ躍進の理由でもあった。
しかし、現在のチョコザップの展開を見ていると、筆者の見立てではもはやチョコザップが戦うべき敵はジムではなく、以下の3つの場所になっていると感じる。
①カフェやファストフードなどの「時間を潰す場所」
②コインランドリーなどの「時間を潰す必要が生まれる場所」
③コンビニなどの「半ば公共インフラ化している場所」
以下、詳しく見てみよう。
■「ジム」から「時間を潰す場所」へ
まず、①カフェやファストフードなどの「時間を潰す場所」、について。
近年、同社が料金月税込3278円はそのままで積極的に増やしているサービスは、もはや、ジムの枠を超えている。例えば、カラオケ(追加料金なし、以下同)やキッズスペースなどは、明らかに運動とは関係ないものである。現状、一部店舗のみの展開だが、月額料金コミコミで全部使える。
ここから見えてくるのは、チョコザップのビジネス上の敵は「既存のジム」から「時間を潰す場所」に変わったのではないか、ということだ。
「ワークスペース」もそうだ。一枠20分で、フリーWi-Fi、フリー電源が完備されたスペースを書斎代わりとして仕事にもプライベートにも24時間利用することができる。2024年4月1日現在、全国で216店舗しかないが、公式ホームページの説明によれば、「カフェの代わりにサクッと寄れる」ことも魅力の一つとして書かれている。ここからもわかるように、明らかにカフェ的な需要に応えるものとなっている。
さらにこんな利用法もある。出先にて、待ち合わせまで20分ぐらいあるとしよう。カフェに入るのはいいが、そこまでゆっくりもできない……というとき、近くにチョコザップがあれば、このワークスペースをちょっとだけ使うことができるわけだ。
ちなみに、チョコザップには「ドリンク」というサービスがある店舗もあり、会員であれば、一回一杯、コーヒーやプロテインなどを飲むことができる。ジムでの運動後に喉が渇いたときに飲むことが想定されているが、ワークスペースと組み合わせれば、立派なカフェの誕生だ。
また、今回の発表でも取り上げられた「キッズパーク」は、例えばマクドナルドなどにある「プレイパーク」などの代わりにもなるだろう。子供がそこで遊んでいる間、親はトレーニングマシンでトレーニング、などということもあるかもしれないし、親子でちょっと待ち時間ができた時も使えるわけだ。ここではマクドナルドが標的になっているといってもいい。
チョコザップの敵は、カフェや、ファストフードのような、「時間を潰す場所」になってくるのだ。逆に言えば、近くにチョコザップとカフェがあったとして、顧客がチョコザップを選び取るようにすることが、今後のチョコザップが拡大できるかどうかを占うわけだ。
■スキマ時間を「作り出す」サービスも
次に、②コインランドリーなどの「時間を潰す必要のある場所」、について。
チョコザップの展開を見ていると、「スキマ時間」に対応するだけでなく、むしろ「スキマ時間」を作るサービスも展開している。
どういうことか。今回の新サービス導入における「洗濯」の導入が、その具体例だ。これは「コインランドリー」の代わり、ということになるだろう。コインランドリーを使ったことがある人ならばわかると思うが、洗濯を待っている間は暇で、まさに「スキマ時間」が生まれる。既存のコインランドリーには、暇を潰せるような施設があることは少ない。洗濯を待つ間、家に帰るか、それともスマホでも見ているか、ということになるが、チョコザップで洗濯をすれば、待っている間にトレーニングやカラオケをする、なんてこともできる。
つまり、「洗濯」のサービスはスキマ時間を作っているのであり、これまでのサービスとは根本的に発想の転換がある。それと同時に、既存の「時間を潰す必要が生まれる場所」の対抗馬になることも表しているだろう。「洗濯」サービスを導入する店舗が増えたら、専業のコインランドリーの数は激減するかもしれない。
■公共インフラ化する「チョコザップ」
最後に、③コンビニなどの「半ば公共インフラ化している場所」、について。
私が聞いたある話では、トイレを使うためだけにチョコザップに入る、という事例もあった。近くにチョコザップがあれば、確かにトイレはきれいだろうし、何より確実にトイレがある。コンビニでも、トイレを貸さない場所が増えている現在、チョコザップがかつてのコンビニ的な役割を担っていくようになる側面もありそうだ。こうなってくると、もはや、チョコザップは、公共インフラ化していく、とさえいえる。コンビニ自体、半ば公共インフラ化した場所であるが、その対抗馬になりうる可能性があるということだ。
これは想像の話であるが、将来的には、チョコザップの中に無人コンビニなどの機能も導入できるかもしれない。施設の中に無人コンビニコーナーが設置され、トレーニングの合間に軽食や日用品を購入できるようになれば、利便性はさらに高まるだろう。また、「仮眠スペース」などの設備を充実させれば、街における休憩所的な役割も果たせるようになる。仕事の合間に汗を流し、シャワーを浴びて、少し休憩する。そんな使い方もできるようになるかもしれない。
■拡大し、機能が変わってくるチョコザップはどこへ行くのか
チョコザップのビジネス上の的となる場所は、「ジム」から「時間を潰す場所」・「時間を潰す必要が生まれる場所」、そして「半ば公共インフラ化している場所」に変化している。
今回発表された新サービスは、チョコザップの可能性を大きく広げるものばかりだ。カラオケ、洗濯、キッズパークといった多様なサービスを導入することで、より多くの人々のニーズに応えられるようになるだろう。そして、そのとき、チョコザップの敵は明らかに変化している。
よく言われることだが、日本の都市は再開発によって滞留できる場所が徐々に減少している。そのため、休日の繁華街のカフェなどは大混雑しているが、そんな中でチョコザップのような「居場所」の重要性はますます高まっていくのかもしれない。スキマ時間を活用するための場所として、チョコザップはどこまで進化していくのか。今後の展開から目が離せない。
----------
ライター
1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業後、早稲田大学教育学術院国語教育専攻に在籍。デイリーポータルZ、オモコロ、サンポーなどのウェブメディアにチェーンストア、テーマパーク、都市についての原稿を執筆。批評観光誌『LOCUST』編集部所属。2017年から2018年に「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。
----------
(ライター 谷頭 和希)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「チョコザップ」最後の空白県・宮崎に出店、店舗数では吉野家超え…社長「どこにでも・いつでもに価値」
読売新聞 / 2024年5月17日 15時5分
-
「チョコザップ」の会員数が150万人を突破、瀬戸社長「新たに200億円を投資」
マイナビニュース / 2024年5月15日 19時29分
-
昔は簿記3級に落ちるレベル…絶好調「chocoZAP」仕掛ける社長が今、財務担当級の会計知識で敏腕振るうワケ
プレジデントオンライン / 2024年5月14日 16時15分
-
「チョコザップ」が高速道路に初出店 日本平PA(上り)に
ねとらぼ / 2024年5月8日 7時30分
-
ドラEVERは「chocoZAP」店舗内広告プロモを全店舗へ拡大!
PR TIMES / 2024年5月2日 18時15分
ランキング
-
1ドライブスルー中古車査定が登場…強みは「スピードと会話の短縮」
レスポンス / 2024年5月20日 19時30分
-
2米レッドロブスターが破産申請=外食チェーン、食べ放題裏目に
時事通信 / 2024年5月20日 22時29分
-
3だからトヨタは「全方位戦略」を貫いた…「富裕層のシンボル」テスラがここにきて大失速しているワケ
プレジデントオンライン / 2024年5月20日 9時15分
-
4【速報】JR東海 水位低下問題でリニア工事の即時中断を発表 湧水減少の薬液を注入開始
CBCテレビ / 2024年5月20日 21時25分
-
5新幹線の並び席で荷物を隣の席に置く乗客…「一人」で「2席」使うのはアリ?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月20日 6時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください