離婚調停 -「親権」は事実上、売買されている
プレジデントオンライン / 2013年4月24日 9時45分
言うまでもないが、人身売買は絶対にやってはいけない行為だ。ところが日本では、事実上の人身売買が公然と行われている。離婚後の子どもとの面会交流をめぐる問題だ。
子どもがいる夫婦が離婚する場合、よく問題になる点が3つある。「離婚の可否」「婚姻費用(離婚成立前の生活費)や養育費」「子どもとの面会交流の内容」だ。これらの問題について当事者間で合意できなければ、家庭裁判所に調停を申し立てて、話し合いを続けることになる。
家庭裁判所にステージを移した後は、「離婚調停」「婚姻費用分担調停(離婚成立後は養育費請求調停)」「面会交流調停」の3つの調停を同時に進めていく。それぞれ手続きとしては別だが、もともとはどれも離婚から派生した問題。現実には3つの問題を絡めて、駆け引きをしながら合意を目指す場合が多い。
調停における駆け引きは、なかなかシビアだ。「月2回会うことを認めるなら離婚に同意してもいい」というのは、まだかわいいほう。「慰謝料の額によっては、親権をゆずってもいい」「養育費を増やすので面会交流の回数を増やせ」といった交渉もよく行われている。これは子どもをお金で取引するようなもので、あまり褒められたことではない。子どもの親権問題に詳しい小嶋勇弁護士は、交渉の実態を次のように語ってくれた。
「調停では子どもの意思も年齢等に応じ、一定程度尊重されます。あるケースでは、子どもが『ママと離婚してくれたら、会ってあげてもいい』と言ったと調査報告書に書いてありました。誰が見ても、子どもが母親に無理やり言わされていることが明らか。自分の要望を通すために子どもが道具にされています」
ただ、お金を含めてあらゆる手段で駆け引きをする親の気持ちもわからなくはない。調停で決着がつかなければ訴訟、審判に進み、裁判官が離婚の可否や養育費、子どもと会える回数などを決定するが、現状では、子どもとの面会交流の相場は月1回程度だからだ。これは諸外国に比べて圧倒的に少ない。
月1回程度の約束が履行されないケースもある。取り決めどおり面会交流させてもらえない場合は、子どもを引き留めている元妻・元夫に対して裁判所から「履行勧告」してもらうことができるが、勧告に強制力はない。また審判の決定を履行しない元妻・元夫に対して金銭のペナルティーを科す「間接強制」も可能だが、たとえお金をもらっても、わが子に会いたい気持ちは満たされないだろう。
こうした現状に絶望している親があらゆる手を使ってわが子と会おうとする行為を一概に責めることはできない。問題は、わが子を愛する親に事実上の人身売買をさせる現在の仕組みのほうにあると考えるべきだ。
では何を変えればいいのか。小嶋弁護士はこう提案する。
「面会交流は離れて暮らす親と子どもにとって権利であり、子を監護する親にとっては義務だと考えます。ところがいまは面会交流の法的位置づけが曖昧。法律で面会交流は義務だと明記し、不履行の場合の履行方法を明記することで、制度や裁判所の運用も変わるでしょう」
最後に「個人的意見ですが」と断ったうえで、小嶋弁護士はこう付け加えた。
「私が見ているかぎり、子どもがいる夫婦でハッピーエンドの離婚はほとんどなかった。子どものためを思うなら、成人するまで離婚をこらえたほうがいい。月並みですが、それが子どものためには一番の解決策です」
(弁護士 小嶋 勇 文=ジャーナリスト村上 敬 図版作成=ライヴ・アート)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「共同親権」改正法2026年施行、これからの親子交流(面会交流)10月6日(日)「ペアレントタイムかながわ シンポジウム」初開催
PR TIMES / 2024年9月20日 11時0分
-
長年疎遠でも「元配偶者との子供」の相続権は消えない…「遺産を渡したくない」ときの有効な対策と遺言書に潜む“意外な落とし穴”
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月9日 10時45分
-
「嘘つき!! 払うと言ったくせに、養育費を振り込まないなんて!」自分勝手な理由をつけて、支払いを辞めるチャンスを探す元夫
OTONA SALONE / 2024年9月6日 21時1分
-
離婚しても、元妻の連れ子とは「縁が切れない」…養子縁組を解消しないと、将来の火種に【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月2日 10時0分
-
元夫がクズで関わりたくない…民法改正で取り立てやすくなるも、7割が「養育費未払い」。日本の母子家庭の異常事態【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月26日 10時0分
ランキング
-
1「SHOGUN」エミー賞受賞を喜ぶ人と抵抗ある人 日本人がアメリカで最多受賞した本当の理由
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
-
2朝食前に歯を磨かない人は「糞便の10倍の細菌」を飲み込んでいる…免疫細胞をヨボヨボにする歯周病菌の怖さ
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 14時15分
-
3「高齢者に炭水化物は毒」は大ウソである…長寿国では「パン、そば、うどん」をもりもり食べている事実
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 15時15分
-
4娘の世話を一切しないのに「親権をよこせ」と言う妻。破綻した夫婦が下した“至極当然の結論”
日刊SPA! / 2024年9月20日 15時53分
-
5特殊清掃人が語る“自殺した部屋”に共通している特徴。オカルト的な出来事に遭遇することも
日刊SPA! / 2024年9月20日 8時52分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください