軽バンなのに輸入車! 佐川急便と共同開発した『ASF2.0』はこれまでの商用EVと何が違う?
レスポンス / 2024年2月16日 8時0分
ポルシェやメルセデスベンツなど高価な輸入車が多数参加するJAIA(日本自動車輸入組合)試乗会の会場で、軽商用車の『ASF2.0』は異彩を放つ存在であった。
ASFは“And Smart Future”の頭文字から取られた社名。本社は日本にあるが、製造を中国の自動車メーカーに委託しているため、輸入車という扱いになる。トヨタの『ハイラックス』や三菱の『トライトン』が国産ブランドながらタイ生産で輸入車となるのと同じような考えだといっていい。
◆改造車ではなく新規に開発された軽商用EV
AFS2.0と名付けられたASFの最初のクルマは、軽商用車である。いわゆる軽バンだ。それもバッテリーEVである。最初にみたときはどこかのメーカーのボディやフロアパネルを使って、バッテリーEVに改造したのかと思ったのだが、おどろくことにすべて1から作っているというのだ。もちろん、パーツとして他車と共通のものはあるが、パネル類などは新規に開発しているという。
ボディサイズは全長×全幅×全高は3395×1475×1950(mm)で、軽自動車最大サイズ。ホイールベースは2430mmで三菱の軽商用EV『ミニキャブEV』の2390mmよりも長い。デリバリー型の軽バンとして開発されたため、乗車定員は2名の設定のみ。荷室床面地上高は660mmで、ミニキャブEVの675mmよりも低い。荷室長は1690mmでミニキャブEVの1830mmよりも短いが、荷室高は1230mmで同寸。ただしミニキャブEVの全高は1915mmと低い。
モーターは30kW/120Nm、搭載バッテリーはリン酸リチウムイオンで容量は30kWh、一充電あたりの走行距離は243km(JARI測定値)。ちなみにミニキャブEVはモーターが31kW/195Nm、バッテリー容量が20kWh、一充電走行距離は180km(WLTCモード、国土交通省審査値)。
◆軽サイズで1130kg、積載状態を前提にした乗り味
走りについては軽の箱バンだと考えれば必要十分なパフォーマンス。EVの利点を生かして低速からしっかりとしたトルクがあるので、荷物を積んでの走りも問題ないだろう。商用モデルということで、遮音材などの採用は少ない。走らせればモーターの音も聞こえるし、タイヤのノイズも聞こえてくる。しかし、そうした快適性を追求したモデルではない。そのような状態であっても、昔の軽バンにくらべたらずっと快適だ。
走行モードはDモードとEモードの2つのモードが用意されている。Dモードが通常モードで、Eモードはエコモード。もっとも違いを感じるのが回生ブレーキの強さだ。70km/hからアクセルペダルを一気に戻したときの減速感がEモードのほうが圧倒的に強い。メーター横の液晶モニターには回生ブレーキ時の電気量が表示されるが、Dモード時が最大7kWであるのに対し、Eモード時は最大15kWを示した。
ハンドリングうんぬんを語るクルマではないが、その部分にも触れよう。乗り味は基本的に硬めだ。軽自動車サイズながら車両重量が1130kgもあり、そこに350kgの積載量が積まれる前提だ。そして安全性を考慮した設計を行うので、過積載であっても安全が確保できるようにするのは当たり前、そうなると乗用とは異なる味付けになって当たり前だ。
いわゆる空荷での試乗となったので、サスペンションは突っ張ったような印象が強い。これも荷物を積めば安定方向になる。また、タイヤが145R12 8PRと一般的な軽バンの145R12 6PRよりもプライレーティングの高いタイヤを採用しているので、タイヤそのものの当たりもきつめだ。
◆リース販売のみ、黒ナンバーの補助金額に注目
AFS2.0は基本的には企業向けにリースされるモデルで、いわゆる販売はされない。だが個人がリースできないわけではなく、コスモマイカーリースを利用すれば乗ることが可能で、価格は260万7000円(一例)とのこと。驚くのは補助金の額だ。
ちょうど切り替え時期なので令和23年度の例になるが、個人使用の黄色ナンバーだと55万円(経産省)だが、営業用の黒ナンバーになると116万円(環境省)もの補助金が支給されるという。実質150万円以下でリースできるというわけで、事業用に導入しようと思っている企業や個人にはかなり魅力的だと言える。さらに東京都の場合はプラス37万5000円の補助金が支給される。
現在、共同で開発した佐川急便はもちろん、マツモトキヨシなどで運用が開始されているAFS2.0。コストを重視する現場では、歓迎されること間違いなしだろう。
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