【スバル クロストレック 新型試乗】いい道具は、かよわき乙女を守ってくれるのか?…岩貞るみこ
レスポンス / 2024年5月19日 18時0分
今回のワンポイント確認は、「いい道具は、かよわき乙女を守ってくれるのか」である。聡明なレスポンス読者におかれましては、この『乙女』が意味するものを、好意的に解釈していただきたい(間違っても、ジェンダー平等はどうした!とか叫ばないように)。
うまい人は、よりうまく。下手くそは、最下層からひっぱりあげ、せめて平均まで導いてほしい。スポーツ、料理、運転などすべての場面でいい道具を選ぶ理由はこれだ。特に運転には命がかかっている。下手くそは容赦なく弾劾される。安全に走りたい。周囲に粗相のないように走りたい。そう思うのは当然だろう。
これまでの『XV』から、北米の名前に合わせて『クロストレック』になり、クルマの持つ特徴がクルマにうとい人にも明確になった。力強さを押し出した顔つきにもなり、都会でも荒野のごとき自然環境にさらされる昨今、いかなる場面でも走り切る気概に満ち満ちている。
◆ストレスがなくて、清々しさすら感じてしまう
車内に入ると、大型のセンターディスプレイに思わず「でかっ。」と声が漏れる。過去のスバルは、どうしてもインテリアがださかった。デザインも質感も色気がなくて気分が萎えたものだが、ここへきてぐっとよくなってきた。特に、このボ●ボ似ともいえる、カーナビを中心とした大きなディスプレイは、電力消費量が多いんじゃないのというせこい不安を感じつつも使いやすく、かつ、インテリアの雰囲気を変えることに一役買っている。
シートポジションは、ちょい高め。SUVらしいといえばそうなのだが、走りのスバルと刷り込まれている身としては、もう少しヒップポイントを低くしたいところだ。ただ、背もたれが背中全体をぴったりと寄り添うように支えてくれるため、運転操作が安定する。このあたりは、さすが走りのスバルである。そして、細めのAピラー(前の窓枠)と三角窓により、サイドミラー周辺の外の状況がすごくつかみやすい。ストレスがなくて、清々しさすら感じてしまう。
荷室の床は高めで、もう少し掘り下げてくれればいいのにと感じつつも、後席の背もたれを前に倒すと簡単にフラットスペースになるので、大小さまざまな荷物は積みやすい。
◆そう、これ。この圧倒的なトルク感
ここからがスバルの真骨頂だ。スタートボタンを押すと、どろどろとした独自の水平対向エンジンの音が腹の底に響きわたり、その太い音質に気分が上がる。そして、アクセルを踏み込むと、お世辞ぬきに最初の一秒でうなる。そう、これ。この圧倒的なトルク感。脳内快感としては、いくつもの管楽器が音程を合わせて、見事なファンファーレを奏でたときの心地よさに近い。
よどみも、ひっかかりもなく、まっすぐに空気が震える感じで、潔いほどスムーズに体と気持ちが前方に運ばれる。ああもう、これだけで水平対向エンジン好き! という思いである。これで、もう少し燃費がよかったらいいのに(ないものねだり)。
4WD(スバルはAWDと呼ぶ。4ではなく、AllのA)の安定した走りは、群を抜いている。ハンドルをきった角度に対して、後輪の蹴り出し感があり、背中から向きを変えていく感覚が味わえる。ドライバーは左右への重力をまったく感じずに向きを変えていくような気持ちよさだ。走らせていると、運転が三段階くらいうまくなった気がするし、さらに、数々の先進安全技術に守られている感が半端ない。
◆いい道具は、かよわき乙女を守ってくれるのか
今回のワンポイント確認、「いい道具は、かよわき乙女を守ってくれるのか」は、運転が下手くそで、びくびくしながら運転席に座る乙女でも、ひとつ曲がり角を曲がった瞬間に、肩の力が抜けて運転を楽しめちゃうありがたさ。最下層からひっぱりあげ、せめて平均、どころか、ちょっと自信をつけちゃうほどのよき道具なのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。
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