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花冷え。が語る、突然変異型メタルコアの裏側、「やったるぞ!」精神

Rolling Stone Japan / 2023年7月27日 11時45分

花冷え。:左からチカ(Dr)、ユキナ(Vo)、ヘッツ(Ba&Cho)、マツリ(Gt&Vo)

花冷え。のメジャーデビューアルバム『来世は偉人!』が完成した。バンドの存在はRSJでもお馴染みのライターDA氏に2021年8月に教えてもらったが、驚いたのは今年1月に突如発表した「お先に失礼します。」だ。

【動画を見る】「お先に失礼します。」ミュージックビデオ

この曲のミュージックビデオは海外のメタルシーンでも話題となり、現在までに360万回以上の再生回数を記録。コメント欄も海外からのものが圧倒的に多い。そしてさらにビックリしたのが、彼女たちがメジャーレーベルと契約してアルバムをリリースし、その後ヨーロッパ~アメリカと海外ツアーをするというニュース。2023年に入って怒濤の展開なのだが、アルバムを聴くとその騒がれっぷりもよく分かる。メタルコア、パンク、ボカロ、ラップ、J-POPなどが凝縮された超ミクスチャー・サウンドというか、ユキナ(Vo)のデスボイスとマツリ(Gt&Vo)の歌というツインボーカル編成が強力だし、ヘッツ(Ba&Cho)の味のあるボーカルもスパイスになっていて、ボーカルからも演奏からも「バンドを全力で楽しむぞ!」「舐めんな!」という気概が感じられるし、媚びのようなものが一切ない。チカ(Dr)は今年加入のメンバーだが、残りの3人は中学~高校の同級生で、ライブハウスや軽音部で同じ時間を過ごしてきたバンドマンだ。彼女たちが培ってきたタフさや積み重ねてきたエモさが、血となってそれぞれの曲に流れている。



今回のインタビュー後、名古屋ell.FITS ALLのワンマンツアーに足を運んだのだが、「新曲もライブを通して皆で作っていく」というユキナ(Vo)のMCが示していたように、アルバムに収録された曲もリリース前なのに出し惜しみなくガンガン披露。「TOUSOU」のウォール・オブ・デス、「Today's Good Day & So Epic」のサークルピットなど、ライブハウスという空間でしか味わえない熱狂と歓喜が、バンドとオーディエンスによって自然と生み出されていた。会話ではなく、音楽を通してのコミュニケーション。海外ツアーも彼女たちならブチかましてきてくれることだろう。

—ソニー・ミュージックレーベルズのエピック・レコード・ジャパンからリリースされる『来世は偉人!』。大舞台で迎えるメジャー一発目の作品ですが、メジャーの実感はどうです?

マツリ:最初は実感が湧かなかったんですけど、このアルバムを完成させていく過程でじわじわと「ああ、メジャーデビューするんだな」って感じはじめて。ただ、やりたいこととか方向性は全く変えずに、環境だけ、新たなところで再出発するって気持ちです。

ヘッツ:自分たちがインディーズでやってた頃にはできなかったことができるようになったことが、大きな変化かなって思います。以前はSNSの運用とか、お客さんに知ってもらうという点に関しては力不足だったんですけど、メジャーで大きく動いてもらえるようになるとそれだけ知ってもらえる人数も増えるので、よかったなと思います。

—チカさんは今年5月に加入していきなりメジャーデビューする形になりましたが、どうですか?

チカ:花冷え。に入る前は、小さいライブハウスでのライブ活動しかしてこなかったので、いきなりステージが大きくなって「あわわわわ」って感じです。全部が新しいのでメジャーデビューの実感はあんまりないですね。今のところは。

—静岡の音楽専門学校を出た後はドラムを教えてたとか。

チカ:講師もちょっとだけやってました。

—教え子たちも喜んでくれてるんじゃないですか?

チカ:すごく喜んでくれて、花冷え。のことも応援してくれてます。

—ユキナさんはどうですか?

ユキナ:最初は実感がわかなかったんですけど、SATANIC CARNIVALでメジャーデビューの発表をさせていただいて以降、高校時代の友達や知り合いから「すごいね」って連絡がきて。学生の時からずっとバンドをやってたので、続けてるのを見てくれてたんだ、ってうれしかったです。何年も連絡を取ってない小学校の友達から「ニュース見たよ」っていきなり連絡が来たり。それで、メジャーデビューするとこうやってライブハウスにいない人にも届くようになるんだと思って、そういう面でも実感しました。

—ずっとバンドをやってたとのことですが、結成は2015年だからバンド活動歴も長いんですよね。

マツリ:そうですね。今年で8周年になりました。

—海外のバンドだとU2もメンバー4人が同級生だったり、日本だとRADWIMPSの野田(洋次郎)さんと桑原(彰)さんが高校の同級生だったり。そういう同級生ならではのヴァイブスがあると、バンドの一体感やムードも自然と形成されていく気がしていて。花冷え。の音楽にも、時間をかけて築いてきたバンドのパワーみたいなのがある気がします。今回のアルバムには、どんなテーマや狙いがあったんでしょうか?

マツリ:基本的に歌詞より先に作曲をするんですけど、デモができたらとりあえずメンバーに送るんですね。私の中で今回はピコピコ感だったりキラキラ感だったり、華やかな感じにしようと思って作ってて、デモの段階からキラキラしたシンセとかを入れてたんです。それを聴いてもらった上で他のメンバーと「宇宙をテーマにしよう」って話になって。今年はアメリカとヨーロッパのツアーに行くので、日本から海外を越えて宇宙まで、花冷え。の楽曲を届けるぞってことで、宇宙をテーマにして。全体的にコンセプト・アルバムっぽく作りました。

—曲名も「超次元ギャラクシー」ですからね。

マツリ:1曲目「Blast Off」、2曲目「超次元ギャラクシー」はセットのイメージで作ったんですけど、この1〜2曲目がまさに宇宙をテーマにしていて。「宇宙まで花冷え。の楽曲を届けるぞ」っていうのがストレートに歌詞に書いてあります。一方で「今年こそギャル〜初夏ver.〜」や「Warning!!」は、やりたいことをてんこ盛りで入れた曲です。





ユキナ:歌詞で言ったら「Tales of Villain」。「Villain」って悪役って意味じゃないですか。悪役にスポットをあてた曲を書きたいねってずっとマツリと言ってて。今回は今流行りの、某夢の国の某海の魔女をイメージして……。

マツリ:今、まさに映画が公開されている……。

ユキナ:そのヴィランの話なんですけど、他に10曲目の「Today's Good Day & So Epic」も、このアルバムじゃないと出せなかったような曲ですね。ストレートに等身大の自分たちを書きました。

—宇宙っていう大筋のコンセプトはありつつも、自由にやりたいことをやってる。

マツリ:そうですね。歌詞は自由にやってます。


遊びたい放題しても大丈夫

—サウンド的にチャレンジングだった曲はありますか?

マツリ:最後の「Today's Good Day & So Epic」は、花冷え。史上初のメジャースケールの曲なんですよ。自分のルーツにパンクがあるので、好きなテイストで作ったんですけど、これは私的には挑戦でしたね。メジャースケールだけど”花冷え。感”は絶対入れたかったので、そのバランスをとるために足し算と引き算を重ねたのが最後の曲です。



—やっぱりメジャーとマイナーでガラリと変わります?

マツリ:そうですね。花冷え。って意外となんでもアリなバンドなので、その辺の融通は効くんですけど、どうしてもマイナースケールだとクールな感じに寄りがちなので、明るさに振り切りたかったんです。マイナースケールで明るくするっていうよりは、スケールもメジャーにして、とにかく明るいハッピーな曲にしたかったので、そこは大きな違いかなって思います。

—この曲がアルバムの最後を締めくくってるのがいいですよね。ライブでサークルが回ってる様子が見えるかというか。

ユキナ:めちゃくちゃ遊べる曲だと思います。サビでも飛んだり跳ねたり。

—ヘッツさんは「我は宇宙最強のインベーダーちゃんである」という曲を書いてますよね。

ヘッツ:まずマツリから、宇宙っぽいキラキラしたデモが来て、そのデモに「宇宙から交信★」って歌詞が入ってたんですよ。これは宇宙人側の曲なんだなってことで、宇宙人の気持ちを書きましたね。あとは花冷え。が日本から世界へ、宇宙へ行ってほしいってコンセプトを踏まえて、宇宙でも知ってもらってる前提の歌詞にしました。宇宙の人たちみんなに知ってほしいなって気持ちがこもっている曲ですね。



—最初にセリフを喋ってるのはヘッツさんですか?

ヘッツ:そうですね。「地球上のみんな! 聞こえてる?」って。

チカ:イントロから面白いよね。

マツリ:デモの段階ではフリー素材で喋らせてたんですけど、人間に言ってもらいました(笑)。

—1分40秒のショートチューンですけど、かわいい曲ですよね。

ヘッツ:詰め込まれてますよね。

マツリ:花冷え。のヘッツというよりは、ヘッツ名義での曲ぐらいに私は考えてたので。

ヘッツ:インベーダー・プロジェクト。

マツリ:そう、ソロプロジェクトみたいなノリで入れました。

ヘッツ:今回のアルバムからちょいちょい私の歌うパートが入ってきてて、そういう意味でも新しいなって。

—他に、ヘッツさんがこのアルバムで自分が歌って印象的だった曲はありますか?

ヘッツ:印象的なのは「Warning!!」ですね。ユキナがかっこよく歌ってて、楽曲もかっこよくてっていうところにいきなりぶち込まれる”頭グルグルタイム”。

一同:(笑)。

マツリ:ここはヘッツに歌ってもらうしかないと思って、歌詞とデモを送って、「ここ明日仮歌入れてもいい?」って頼みました(笑)。

ヘッツ:いきなり前日に言われて、「よし、じゃあやるか」って。”頭グルグルタイム”と”Z世代超超最高!!”がいいんじゃないかなって思いますね。



—声のキャラクターがすごく合ってますよね。自分の歌パートも増えて歌詞も書いて、より前に出てくる機会が増えそうですね。

ヘッツ:そうですね。もっと頑張らないとなって思います。でも花冷え。の曲の幅が広がるのはいいことなので。

—ベースプレイ的に、今回のアルバムはどうでしたか?

ヘッツ:今回のアルバムはやりたいこともできたし、今までよりいろんなことができたなって思います。それこそ「Today's Good Day & So Epic」は初めてのメジャースケールの曲だったので未知の世界で。でもやっぱりメジャースケールだから、弾いてる方も楽しく、明るくできるなって思いました。あと今まで花冷え。では、ベースのグルーヴィなフレーズが少なかったんですよ。前のアルバムの曲まではギターとユニゾンする部分が多くて、あんまり遊びを入れるところがなかったんですけど、今回のアルバムではそういう部分が多くて、いろいろ遊べて楽しかったです。

—マツリさんは今回の楽器パートのバランスに関してはどう意識したんですか?

マツリ:初めてのアルバムの『乙女改革』は高校生から大学2年生ぐらいまでのとりあえずの集大成みたいな作品だったので、硬派に作ったつもりではいて。今回は楽曲のコンセプト的に、遊びたい放題しても大丈夫って自分の中で思っていたので、ベースが目立つフレーズを作ったりしました。あと縦を揃える、いわゆるメタルコアみたいな曲っていうよりは、ミクスチャーっぽい曲が多いので、そういう意味でもグルーヴ感あるフレーズをバンバン入れた部分はありますね。



—意図的な部分もありつつ、自分たちが成長した部分もあるだろうし。

マツリ:今やりたいことをやってるって感じですね。

—前はできなかったけど、今は成長したからできるようになったこともあるでしょうね。

マツリ:はい、いっぱい入ってると思います。

—曲のバリエーションもたくさんありますが、チカさんはそれを自分のものとしてプレイしなくちゃいけないじゃないですか。このアルバムの曲のドラムはどうですか?

チカ:テンポも変わったり、同じ曲とは思えないような展開がどんどん出てくるので、叩いてて面白いですね。

マツリ:リード曲の「今年こそギャル〜初夏ver.〜」のサビが裏打ちで、めちゃめちゃグルーヴ感あるドラムのフレーズなんですけど、彼女はそれが一番得意で。

チカ:シンプルな裏打ちが一番得意なんです。

マツリ:すごい気持ちいい感じで叩いてくれた。

ユキナ:MVもこの間撮ったばっかりなんですけど、すごい楽しそうだった。うわー、ここ、気持ちいいんだろうなーって(笑)。





曲の中で緩急が一番大事だと思ってる

—歌詞のプロセスはどういう感じなんですか?

マツリ:ユキナと私で曲を元に打ち合わせて、それぞれ書いてくる感じです。

ユキナ:それぞれのパートを自分で書いてきて、組み合わせるみたいな。曲ごとのテーマは、宇宙っぽいものもあれば、自分たちがやりたいことをテーマに作った曲もあって。こういう曲欲しいよねとか、メジャー1発目でこういう曲をやりたいよねってものを詰め込みました。私の場合、マツリから音源が届いて、それをどうやって面白くしようかなっていつも考えてます。今回は普段よりだいぶ遊び散らかした感じで(音源が)送られてきて(笑)、その形を一緒に変えていくのが面白かったですね。

マツリ:自分のパートは、歌詞を付けない状態で適当に歌ったものを入れてました。シャウトの部分は自分の中でイメージが完全に固まってから、大まかな雰囲気だけユキナに伝えて、あとはユキナのやりたいことをやってもらった感じですね。「Warning!!」は、アナウンスみたいなパートとヘッツが歌ってるパート、サビは全部私が書いたんですけど、そことユキナのシャウトの歌詞の辻褄をどう合わせるかを考えるのに一番手こずりました。

ユキナ:同じようなことを歌っていても、どんどん移り変わる感じがあるよね。

マツリ:子どもの頃、熱が出た時に見る変な夢ってありませんでした? それを曲にしたくて書いたんですけど、切り取ったように展開していく感じも歌詞に盛り込めるようにとか、いろんな要素を入れたので結構手こずりました。で、私たちがZ世代なので、「Z世代」というテーマも入ってきて。

—アイデアの出発点は「子どもの頃に見たヘンな夢」だけど、結果的に「Z世代」が主題になったり、発想の種とそこから出る芽がガラッと違うものになることはよくあるんですか?

マツリ:ありますね。ユキナと打ち合わせていく中でコロコロ変わって、着地点が決まることが多いです。

ユキナ:こういうテーマにしようねって決めて実際に書いてみたら、やっぱり別の要素もあった方がいいなとか。

—デスボイスに言葉をはめていく作業って大変じゃないですか?

ユキナ:難しいですね。歌詞は書けるんですけど、RECする時に普通のトーンで歌ったら語呂がいいのに、シャウトすると聞き取りづらいこともあって。日本語の歌詞が多いので、聞き取りづらかったり発声しづらかったりする言葉があるんですよ。「ここで勢い出したいのに、なかなか出ないな」とか、そういう試行錯誤はあります。

—花冷え。のデスボイスは一聴した感じでは何て言ってるのか分からなくても、キャッチーな要素があるなと思いました。

ユキナ:歌詞を見て「こういうこと言ってたんだ!」って発見があって、その後に「じゃあこういう意味なのかもしれない」って気づいたり。歌詞カードを見ながら楽しめる曲が多いと思います。

—「TOUSOU」の”待て、コラ〜!”も歌詞カードの字面だと可愛い感じに見えるけど、音だけ聞いたらデスボイスになってる。

マツリ:「TOUSOU」はシャウトが警察側で、クリーンが逃げてる側で、追っかけっこしてる感じなんです。

—そういう部分は確かに、歌詞カードを見たら楽しめるところですよね。

ユキナ:「TOUSOU」で言ったら、”ワン!北へ逃走 2!南へ逃走 3!東へ逃走”の、123の「1」だけ警察犬みたいに「ワン」って書いてたり、ちょっとしたおふざけもありますね。

—「Today's Good Day & So Epic」の”例の!”と”せーのっ!”のような韻を踏んだ歌詞もグルーヴ感があっていいです。

ユキナ:シャウトしてるとどうしてもキャッチーさが薄れてくるので、ワードが似てる方が頭に入りやすいし、聞きやすさの一つになるかなと思って、韻を踏んだ歌詞も入れてます。

—ラップからのインスパイアもあるんですか?

ユキナ:日本のヒップホップは好きでよく聴いてます。今回のアルバムを制作していた時にちょうど、PUNPEEさんのコンセプト・アルバム(『MODERN TIMES』)を聴いてて。ジャンルは違いますけど、そのアルバムから、がっつりしたコンセプト作品を私たちも作ってみたいって影響されたりしてます。

—デスボイスも、そういう風に言葉選びと韻を意識すると聞きやすさが増すんですね。

ユキナ:そうですね。特に日本語の歌詞が多いので。英語だったらかっこよくなったり、みんながよく使ってるワードだったら分かりやすいんですけど、日本語にこだわっている以上、聞きやすさも気にしてます。

—全体的にメロディアスな曲が多いと思いますが、マツリさんは自分のボーカルに関してどう捉えていますか?

マツリ:基本的にユキナの歌詞が遊びに振り切ってるものが多いので、聞き取りやすいクリーンのボーカルも遊びすぎるとコミックバンド感が出てしまう。だから私はあえてストレートに、スッと耳に入ってくる言葉選びをしてますね。クールな感じというか。言うても「今年こそギャル〜初夏ver.〜」はふざけてるんですけど(笑)。基本的にふざけすぎず、曲のテーマが分かるような歌詞にしてます。

—全部が全部ふざけてるわけではないですもんね。

マツリ:そうですね。曲の中で緩急が一番大事だと思ってるので、その辺は調整してます。

—「TOUSOU」も一見面白い感じの曲だと思うけど、”前だけ見てればなんて言うけど 追われては逃げて ひたすら進むんだ 何もかも捨てて”とか、熱いフレーズも入ってくる。

マツリ:「TOUSOU」はエモさも大事にしてたので、めっちゃふざけてるけど、なんかいい曲っぽい、みたいなまとめ方にしてます(笑)。

一同:(笑)。

ユキナ:マツリのパートは、全体的に今までよりもストレートな歌詞が多い気がする。

マツリ:そうだね。構成がごちゃごちゃしてたりするので、サビぐらいは聞きやすい方がいいかなって思いもあり、今回はストレートな歌詞が多いです。





お客さん2人だけの前でライブをしたことも

—「超次元ギャラクシー」はラブソングですか?

マツリ:そうです。ファンの方とかリスナー、最近花冷え。に出会ってくれた方に向けて書いた曲です。「くさいよ」って感じの歌詞なんですけど、あえてですね。

ユキナ:ちょっとアニソン感あるよね。

マツリ:そうだね。生きてて「愛を捧ぐよ」とか言わないじゃないですか。でもそのぐらいありがとうって思ってるんで、感謝を伝えるのは分かりやすい方がいいかなと思って書きました。

ユキナ:私はこれを書いてるとき、『First Love 初恋』っていうドラマを見てて。

マツリ:あ、ネトフリのやつ。

ユキナ:そう。それですごい泣いた後に、どういう曲にしようかなって考えてたんで、「First Love」がめっちゃ入ってます。宇多田ヒカルさんの気持ちが入ってる(笑)。

—”いつものハイエース”から”フィールド超えてエスケープ”までと、その後の”いつだって君がエース”ってところとの対比がエモくていいなと思いました。そう考えると「今年こそギャル〜初夏ver.〜」という曲の異彩感が凄いなと(笑)。

ユキナ:歌詞は完全に語呂感で書きました。海外の人でも、「初夏」とかだったら言いやすそうじゃないですか。夏のなんとかだったら発音しづらそうだなと思うんですけど。

マツリ:「シャカ」とかも言いやすいよね。

ユキナ:この曲が来たとき、”陽キャの季節Sunshine…”と、サビの”遊び尽くせ!!””夏が来たの!!””気合いMAXでいこう”、だけは決まってたんですよ。デモを聴いて、これどういうこと?みたいな(笑)。

一同:(笑)。

マツリ:めっちゃわかりやすくて簡単な歌詞にしてほしいって言ってたんです。それで送られてきたのが、”初夏初夏 EARLY SUMMER”っていう、同じ意味の言葉を並べた歌詞で(笑)。

ユキナ:最初は「なんとかサマー」にしたかったんですけど、夏の曲って「サマー」が入ってることが多いから、そうじゃない曲がいいなと思って”初夏”に辿り着いて。花冷え。のメジャー一発目の初めての夏だから。

マツリ:これはシリーズ化したいと思ってます。



—初夏じゃないバージョンも?

マツリ:そうですね。違うバージョンもちょっと。

—ところで歌詞に出てくる”ヌン活”って何ですか?

ユキナ:アフタヌーンティー活動。若い女の子たちがホテルとかのアフタヌーンティーを、可愛い格好してみんなで飲みに行くんですよ。

—全然わからなかった(笑)。この曲は冒頭からぶっ飛ばしてて、途中で”休憩しましょう”って一旦クールダウンして、また最後に盛り上がるって構成ですよね。ライブ映えしそうな曲だなと思いましたが、その辺もイメージして書いたんでしょうか?

マツリ:この曲は最初に、フェスでやりたいって想いがあって。みんながジャンプしまくって、夏を感じまくるみたいなイメージをしてました。サビを裏打ちにしたり、テンポチェンジするんですけど、乗りやすいリズムをいっぱい入れたので。それプラス、ユキナが考えてくれた叫びやすいワードで、理想通りの形になりましたね。

ユキナ:前作の『乙女改革』から、ライブハウスの規制がだいぶ緩和されてきたので、ライブを意識しながら書きました。でも「休憩しましょう」とか真顔で言うつもりはないです(笑)(※同曲を披露した名古屋のライブでは当日が猛暑日だったため、熱中症に気をつけろ的な煽りにアレンジされていた)。


Photo by タカギユウスケ


Photo by タカギユウスケ


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—ライブごとにアレンジ変えたら盛り上がりそうですよね。花冷え。は新宿ANTIKNOCKのようなライブハウスで鍛えられてきたからこそ、”バンド力”の強さがあるなと思います。

ユキナ:自分たちでやりたいって集まってライブハウスで活動して、チカちゃんもライブハウスでやってきて、みんな根っこがライブハウス育ちなので。

マツリ;あんまり怖いものはないかもしれないですね(笑)。お客さん2人だけの前でやったりしてたので。

ヘッツ:いろんなことを経験した。

マツリ:高校生の時は反骨精神がすごくて。お客さんが少ないフロアにマイクを持って下りていって、そのままそこで歌うとか(笑)。やりまくってたね。

ユキナ:高校生の時はジャンルもジャンルだったから、(軽音部の)顧問の先生が私たちがライブする時だけ出てきて。ライブハウスに出ることが禁じられていたので、先生たちの署名をもらわないと出られないとか(笑)。ずっと縛られてましたね。

マツリ:そのくせ私、部長だったんですよ(笑)。なんで私なんだよと思いながら。

ユキナ:そういう時代もあったので、常に「やるぞ」って気持ちが根本にありました。

マツリ:そこはずっと変わってないかもしれないですね。

ユキナ:勢いじゃないけど、「やったるぞ!」みたいな気持ちはある。

マツリ:チカちゃんも同じマインドだよね。

チカ:私も中学生の時から別のガールズバンドを組んでたんですけど、発表会的なやつにバンドで出たいって先生に言ったら、バンドはちょっと……みたいな感じで断られたりして。似てるなと思いました。

ユキナ:あるんだよね、やりなやりな、って言ってくれる学校とそうじゃない学校が。

マツリ:勝手にやってたもんね(笑)。

ユキナ:最初にライブハウスに出た時も、「保護者が誰か行ってあげてください」みたいな。

マツリ:本当は(ライブハウスに)行っちゃダメだったんですよ。だから学校が終わった瞬間、みんなで気づかれないように猛ダッシュで校門まで走って制服から私服に着替えて、みたいな。

ユキナ:物販用のキャリーケースをガラガラ引いて。

マツリ:楽器持ってるとバレちゃうんで、それもバレないように。何か話しかけられても聞こえてないふりして走ってた(笑)。

一同:(笑)。

—その青春っぽさが今も延長線上で続いてる感じがいいですね。

マツリ:そうですね。変わってないです。

—8月〜10月にかけて海外ツアーがありますが、いきなり世界を相手にした今、どういう心境ですか?

ヘッツ:前のアルバムの『我甘党』から海外の人たちに知ってもらえるようになって、SNSのコメントも海外の人だらけになったんです。「みんな待ってるよ」とか「早く来てよ」みたいなコメントがいっぱいあって。だけど海外に行ける機会はなかなかないし、どうやって行こうかって思ってた時に出会ったプロモーターの方がプロモーションをしてくれてツアーができることになったんです。やっとそれを体感しに行けることは、シンプルにうれしいし、楽しみですね。日本のフェスもSATANIC CARNIVALしか出たことがない中、いきなり海外のフェスに出ることになって。海外のフェスって盛り上がりが違うって聞くので、すごく楽しみですね。

マツリ:海外の方が上げてくださるリアクション動画とかも見るんですけど、日本のリスナーとノリ方が全然違うのが、その動画を見ててもわかるので。ヘッツも言ってたんですけど、海外ではどういうノリ方をするんだろうとか、ライブハウスはどんな雰囲気なんだろうとか、各国のフロアの雰囲気を感じられるのがすごく楽しみです。でも、日本でもこんな本数連続でライブをやったことないから、未知の世界過ぎて。

ヘッツ:ないよね。6本はやったことないです。

マツリ:やったことあったのが3本連続までだったんですよ。

ユキナ:初日から3本だしね。

マツリ:楽しみだし、ワクワクしてるんですけど、どうなっちゃうんだろうなって思ってますね(笑)。

チカ:鍛えられて帰ってきたいよね。

マツリ:マッチョになって帰ってくる!

チカ:海外の方からすると、日本人ってちょっと舐められがちってイメージがあって。しかも女の子で23〜24歳って若いし、身体も小さいし、そんな日本人の女の子4人が海外の身体の大きな、タトゥーゴリゴリな人たちを盛り上げるってことに、すごい燃えてます。うれしいなって思います。

ユキナ:ドイツとかでソールドアウトしてグレードアップしてる会場も2カ所あって。人口の多さもあると思うんですけど、日本のキャパシティと海外のキャパシティはやっぱ違うなって、行く前から感じさせられました。グレードアップってどういうこと?、みたいな。花冷え。って日本語の歌詞が多いのに、言葉が通じなくても音楽を通してこんなについてきてくれる人がいるってことは、めちゃくちゃうれしいし、楽しみです。


Photo by タカギユウスケ

<INFORMATION>


『来世は偉人!』
花冷え。
エピック・レコード・ジャパン
発売中
https://hanabie.lnk.to/reborn_superstar

01. Blast Off
02. 超次元ギャラクシー
03. NEET GAME
04. 今年こそギャル~初夏 ver.~
05. Tales of Villain
06. Warning!!
07. 我は宇宙最強のインベーダーちゃんである
08. TOUSOU
09. お先に失礼します。
10. Today's Good Day & So Epic

【花冷え。ヨーロッパツアー】
8/4(金) 「METALDAYS 2023」 Velenje(スロベニア)
https://www.metaldays.net/
8/5(土)Chelsea@Vienna (オーストリア)
8/6(日)Legend Club@Milan (イタリア)
8/9(水) 「Leyendas del Rock 2023」 Alicante(スペイン)
https://www.leyendasdelrockfestival.com/
8/11(金)Hydrozagadka @Warsaw (ポーランド)
8/12(土)Hole44 @Berlin (ドイツ)
8/15(火)Nachteben @Frankfurt (ドイツ)
8/16(水)Kavka Oudaan @Antwerp (ベルギー)
8/18(金) 「Motocultor Festival」 Carhaix-Plouger (フランス)
https://www.motocultor-festival.com/
8/19(土) 「Dynamo Metalfest 2023」 Eindhoven(オランダ)
https://www.dynamo-metalfest.nl/homepage
8/20(日)The Underworld@London (イギリス)

【花冷え。USA ツアー】
9/7(木)- 9/10(日) 「Blue Ridge Rock Festival 2023」 Danville, Virginia
https://blueridgerockfest.com/
9/12(火)Hangar 1819 @Greensboro, NC W/Galactic Empire
9/13(水)Ground Zero @Spartanburg, SC W/Galactic Empire
9/14(木)The Masquerade @Atlanta, GA W/Galactic Empire
9/15(金)The Social @Orlando, FL W/Galactic Empire
9/18(月)Warehouse Live @Houston, TX W/Galactic Empire
9/19(火)Come And Take It Live @Austin, TX W/Galactic Empire
9/20(水)Trees @Dallas, TX W/Galactic Empire
9/22(金) 「LOUDER THAN LIFE 2023」 Louisville, Kentucky
https://louderthanlifefestival.com/
10/6(金) 「AFTERSHOCK FESTIVAL 2023」 Sacramento, California
https://aftershock2023.frontgatetickets.com





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