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道の駅から漬物が消える?食品衛生法改正、猶予期間が5月末終了へ 食文化継承に危機感

産経ニュース / 2024年4月24日 17時22分

京都の冬の風物詩、千枚漬けの漬け込み作業の様子(写真と本文は関係ありません)

道の駅や直売所で人気を集める手作りの漬物が、手に入りにくくなるかもしれない。より厳格な施設基準を満たした業者にのみ製造を許可する改正食品衛生法が6月から完全実施されることに伴い、設備投資する余裕がない個人農家など作り手の大量廃業が懸念されている。漬物には地域の名産となっているものも多く、関係者からは「ふるさとの味が消えかねない」との声も上がる。

「白菜浅漬け」起因の食中毒

これまで漬物製造は基本的に、都道府県へ条例に基づく届け出をすれば認められる「届け出制」だった。一方、平成24年に札幌市のメーカーが製造した白菜の浅漬けを原因とする腸管出血性大腸菌(O157)による集団食中毒が発生、8人の死者が出たことなどを受け、食の安全確保に向けた法改正の動きが活発化。先に控えていた東京五輪・パラリンピックなどを念頭に、国際的な食品衛生管理手法「HACCP(ハサップ)」の考え方も取り入れた改正法が30年、成立した。

改正法は段階的に施行され、漬物製造業は令和3年6月、「許可制」の対象に。3年間の経過措置期間が今年5月31日で期限を迎えるため、その時点までに許可を得ていない業者は漬物の販売ができなくなる。

後継者不足、コロナ禍とのトリプルパンチ

厚生労働省などによると、施設基準では具体的に、▷素材を洗浄するための専用シンク▷レバー式の蛇口(手指洗浄用)ーなどの導入を求めているほか、▷製造場所として家の台所との兼用はできない▷原材料、漬けだるなどの各保管場所は間仕切りで区分けするーといった規定がある。

漬物メーカーでつくる業界団体の全日本漬物協同組合連合会によると、改正法に適合する環境整備ができず、廃業を決断した業者は多いという。また、漬物は、秋田のいぶりがっこや青森のにんにく漬け、東京のべったら漬け、京都の千枚漬けなど、ご当地ものが各地に存在するが、新型コロナウイルス禍による観光地への人出減で、売れ行きがそもそも減少。家族経営の小規模業者では後継者問題も長年の懸案だといい、「ダブルパンチ、トリプルパンチのような状況」(担当者)だ。

同連合会では、かつて1000程度、令和2年でも約800あった加盟社が現状、約700まで減っている。道の駅や直売所などを通じて販売している個人農家などについても、「おそらくメーカーと同じような状況にあるはずで、今回を機に相当に減るのではないか」(同)との見方だ。

天日干しに「屋根設置を」

一部の業者からは、「大根を外で天日干しにしていたら、地元の保健所から『虫やゴミがつく可能性があり、衛生上よくないので、屋根を設置してください』と指摘された。それでは天日干しにならず、商品にならない」といった相談があったという。担当者は「日本の文化ともいえる漬物の伝承が、危うい状況にある。食の安全はもちろん大事だが、許可権を持つ都道府県側は、杓子(しゃくし)定規な対応はせず、よい落としどころを探ってほしい」としている。

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