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親のクレカ使用し10万円課金、昼夜逆転生活… 急増する「ゲーム依存症」と家族の苦悩

産経ニュース / 2024年5月19日 11時0分

日常生活に支障が出てもゲームをやめられない-。依存症の一種である「ゲーム障害」の患者が急増している。家族のクレジットカードを悪用して課金したり、家庭内暴力に発展したりしてしまうケースもある。単なる「遊びすぎ」ではなく、脳のメカニズムも関係しており、治療には本人や周囲の理解が不可欠。ただ、依存を抜け出すのは容易ではなく、支える家族も「どう接するのが正解か分からない」と治療の難しさに頭を悩ませている。

自律神経の病気がきっかけ

「息子はここ2カ月で(親の)クレジットカードを使い、ゲームで10万円課金した。情けなくて涙が出る」

「うちの次男は学校に行けるか、行けなくなるかの瀬戸際」

4月下旬、依存症治療を専門に行う神戸市中央区の心療内科「幸地クリニック」。ゲーム中心の生活を送る子供との接し方に悩む親たちが車座となり、互いの心中を明かした。

そのうちの1人で兵庫県内の50代の主婦は、高校生の息子が一日中、オンラインゲームや動画投稿サイト「YouTube」にのめり込んでいる。

中学2年の終わりに自律神経の働きが悪くなる病気で朝起きるのがつらくなり、中3の秋には不登校に。それらがきっかけとなり、オンラインゲームに依存するようになった。それまで1日1、2時間程度だったが、今では昼夜逆転の生活のほとんどをネットに費やしている。

人間関係は希薄となり、家族が外食に誘ってもゲームを理由に断られることもある。ただ、無理に引き離すのも現実的ではない。ゲームを通じてネット上でつながる友人が心のよりどころで、画面越しに楽しそうに会話をする姿も目にするからだ。

「ゲーム依存の生活から抜け出してほしい半面、今の息子にはゲームが支えになっているのも事実」。現状を変えるヒントを探し求め、クリニックに足を運んでいる。

目先の快感を優先

ゲーム障害は、日常生活よりゲームを優先し、健康を損なうなどの問題が起きてもやめることができない依存症とされる。高額課金や生活の乱れに加え、ゲームの使用を制限されると暴力的になってしまう症例もある。

「病気」との認識は近年、急速に広まっている。世界保健機関(WHO)は令和元年5月、ゲーム障害を精神疾患の1つに位置付けた。

国内で初めてゲーム障害の専門外来を設けた久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)によると、平成27年度に全国でゲーム障害と診断された人は251人だったが、令和元年度には856人に急増した。

幸地クリニックで依存症治療に携わる精神保健福祉士の中元康雄さん(49)によると、ゲーム障害には脳のメカニズムが関係している。

ゲームが生活の中心になると、脳がゲームから得られる刺激に慣れてしまい、むしろ「当たり前」と認識する。より強い刺激を求めてゲームへの渇望がますます強まり、逆にゲームを中断されると想定されていた快感を得られなくなるため、怒りがわきあがる。

すぐに発覚すると分かりながら親のクレジットカードを使って無断で課金する患者が出てきてしまうのも、将来のデメリットより目先の快感が優先されてしまうためだという。

依存の背景として、友人がいなかったり学校生活になじめなかったりといった当人が抱える「苦痛」が存在する場合もあり、「ゲームは自分のペースで遊べるうえ、仲間から称賛されれば非常に居心地が良い逃げ場になってしまう」(中元さん)。

依存症克服に向けた一歩を踏み出すには、「日常生活の中で自己肯定感を高め、ゲームなしでもやっていけると思えるようになることが必要」と指摘。「ネットやゲーム以外の趣味はなかなか見つからないもの。些細(ささい)なことでいいのでリアルな生活での喜びや楽しみに気づくアシストを身近な家族がしていくことも後押しになる」という。(倉持亮)

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