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大仏殿再興に携わった亡父と母へ 般若寺の笠塔婆㊤ 石仏は語る

産経ニュース / 2024年5月10日 15時0分

笠塔婆(かさとうば)は平安時代後期の「餓鬼草紙」に木製とみられる笠塔婆が描かれており、その源流を見出すことができます。石工の伊行末(いのゆきすえ)の長男・伊行吉(いのゆきよし)が、亡父の一周忌にあたり、一基は父のため、もう一基は存命中の母の後世のために建立したと伝えられる笠塔婆2基が般若寺にあります。

南笠塔婆の正面上部には、「釈迦如来(バク)、普賢菩薩(アン)、文殊菩薩(マン)」と釈迦三尊を蓮華座(れんげざ)上月輪(がちりん)内に刻んでいます。また胎蔵界五仏の種子「大日如来(アーク)、宝幢(ほうとう)如来(ア)、開敷華王(かいふけおう)如来(アー)、無量寿(むりょうじゅ)如来(アン)、天鼓雷音(てんくらいおん)如来(アク)」を薬研彫りとします。

正面下部には「先考宋人行末者異朝明州住人/也而来日域経歳月即大仏殿石/壇四面廻廊諸堂垣塌荒無□□/悉毀孤為□□□□□発吾朝□/陳和卿為鋳金銅大仏以明州伊/行末為衆殿□石壇故也土匪直/也□者也則於東大寺霊地辺土/中得石修造正元二(1260)年七月十一/日安然逝去彼嫡男伊行吉志/□三年建立一丈六尺石率都婆」との十行刻銘があります。

中国明州の宋人石工である伊行末が来朝し、焼けた大仏殿の再興工事のために石段、四面回廊、諸堂の修復に携わることができた。正元二年七月十一日に、その伊行末は死去しました。そこで嫡男の伊行吉が、一丈六尺の卒塔婆を建立します―といった意味でしょう。

右側面には「慈悲於一切/不生懈怠心/十方大菩薩/愍衆故行道(一切を慈しみ、懈怠の心を生ぜず。十方の大菩薩にして、衆を愍れむが故に道を行ず)」と法華経安楽行品偈(げ)があり、左側面には「諸行無常/是生滅法/生滅滅已/寂滅為楽(諸行は無常であり、これ生滅の法である。生滅を滅しおわり、生も滅もない寂滅を楽しむ)」と涅槃経偈が記されています。

裏面上部には「胎蔵界大日如来(ア)」、その下部には光明真言二行「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ、シャナ、マ、カーボ、ダラ/マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバラ、ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」と刻まれています。 (地域歴史民俗考古研究所所長 辻尾榮市)

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