配偶者控除見直し―103万円のカベ撤廃で1500万人が負担増に?
政治山 / 2016年9月8日 17時30分
政府税制調査会は配偶者控除見直しに向けた議論を9日から再開します。11月にも提言をまとめ、来年度税制改正に向けた材料となります。
政府税調は2014年3月、安倍首相の指示のもとで見直しに向けた議論を開始。その後、他の優先課題や政治日程に押されて議論が止まっていました。参院選を乗り切ったことで当面の政権運営が視界良好となり、男女共同参画社会や一億総活躍社会に見合った税制のあり方が求められています。
視界良好の政権、賛否渦巻く難題に着手?
配偶者控除は、専業主婦や年収103万円以下で働く主婦の世帯に対し、1960年代から税負担を軽くしてきました。未婚や働く女性から見れば税負担の不平等との不満がある一方で、現在約1500万人に適用されており、全廃されれば年収600万円の夫で約7万円の負担増になるとの試算もあります。税のあり方は家計に直結するため支持率にも大きな影響を与えます。
しかし、日本が人口減少社会に転じ労働力不足が深刻になる中で、安倍政権としては税制面でも働く女性が損をしない仕組みづくりを目指すことが課題となっています。他方、専業主婦のメリットが失われれば、結婚して家族を作ろうとする夫婦が減少し少子化対策にも悪影響となりかねないため、年収に関わらず夫婦に控除を適用する「夫婦控除」の案が出ています。
配偶者控除103万円ではなく、社会保険料130万円の壁が重要
配偶者控除は、専業主婦やパートで働く妻の年収が103万円以下であれば、夫の課税される所得金額から38万円を差し引く仕組みです。103万円を超えても、141万円未満なら額に応じて控除措置が受けられるので、世帯の年収は緩やかに増加します。
年収が103万円を超えても手取りが減るわけではありません。しかし130万円を超えると、配偶者控除とは別の問題が発生します。それは、年金と健康保険料、つまり社会保険料の支払い義務が生じます。夫の被扶養者としての支払いができず、妻の収入から支払う義務が生じ、手取り額がガクッと下がります。妻の年収が129万円の場合、手取り額は121万円ですが、年収が130万円を超えた場合、154万円未満であれば手取りは逆に下がってしまいます。
ただ、夫の勤務先が既婚者への手当を支給している場合、多くの企業が条件として「妻の年収が103万円以下」としています。103万円の壁は、配偶者控除よりも会社からの支給手当の方が手取りに影響することが多いので、そちらの計算を怠らないことが賢い節税対策となりそうです。
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