働き方改革に向けて、ブラック企業の温床となる36協定見直しへ本腰
政治山 / 2016年9月27日 11時50分
政府は、残業時間を青天井で延ばすことのできる労使間の特別条項付きの協定、いわゆる「36(さぶろく)協定」の是正に向けた議論を始めました。労働基準法36条の条文に基づく36協定は、長時間労働の一因と批判されており、これに一定の上限を設けようとしています。
36協定が無視されている現状
同法36条では、労使協定に基づく時間外労働や休日労働を認めています。会社は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働及び休日勤務などを命じる場合、労働組合等との書面による協定を結び労働基準監督署に届け出る義務を負います。この届出をしないまま超過労働を課すなどの違反した場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
しかし現状はザル法とも言われ、同協定を結んでいない、あるいは結んだことが労働者に周知されず暗黙のうちに時間外労働などが課せられている職場が多く、いわゆるブラック企業での過労死や自殺問題の原因とも言われます。また、子育てや働き方の多様性を阻害しているとも指摘されます。
国際比較でも実質労働時間はまだまだ長い?
国内の平均労働時間は高度経済成長の時代と比較すれば漸減傾向にあり、英米と比較してもさほど変わらない水準まで短縮されつつありますが、実際は短時間労働であるパートなどの勤務形態が増えたためで、実質労働時間は年間2000時間前後と言われます。
安倍首相は3月に行われた一億総活躍国民会議で、「長時間労働は仕事と子育ての両立を困難にし、少子化や女性の活躍を阻む原因となっている」と指摘し、「36協定の時間外労働規制のあり方について再検討を行う」と表明しました。
上下とも(資料)社会実情データ図録(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3100.html)
有識者検討会議が始動
これに基づいて厚生労働省は9月9日、長時間労働規制に関する有識者による検討会の初会合を開き、無制限の残業を事実上認めている36協定の見直しに向けた議論を開始。政府は働き方改革実現会議で具体的な残業時間の上限規制を打ち出す方針で、検討会では残業時間の実態を年内にもまとめる方針です。8月の内閣改造で働き方改革担当大臣を新設し、今回新たに「働き方改革実現推進室」を設けたことで、首相の強い決意がうかがえます。
焦点となるのは、(1)残業時間の上限を、過労死のリスクが高まるとされる「月80時間」からどこまで下げられるか、(2)時短そのものに加え、一時的に残業が必要な業種に応じて3カ月や6カ月単位での短縮にするべきか、(3)適用除外となっている業種を広げるべきかどうか――といった議論で、検討会は年内にも論点を整理し、来年3月頃までに労使トップも加わる「働き方改革実現会議」で具体策を打ち出す見通しです。
ただ、実現会議が具体案をまとめても、法整備のためには労使代表による「労働政策審議会」での合意が必要で、政府は2017年春に労政審での議論をスタートさせ、同年秋の臨時国会への労働基準法改正案提出を目指します。
継続審議のホワイトカラー・エグゼンプション
一方、ホワイトカラー・エグゼンプションと呼ばれる、一部労働者に対して労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする等の内容を含んだ労働基準法改正案は、昨年、今年の通常国会で質疑に入らないまま継続審議となっています。
同法案の概要は、(1)中小企業の月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予廃止、(2)年次有給休暇の取得促進(年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、うち5日は時季を指定して与えなければならない)、(3)フレックスタイム制の見直し(1カ月当たり週平均50時間を超える労働時間は割増賃金の支払い対象とするなど)、(4)(少なくとも1000万円以上の年収など)一定の要件を満たす一部労働者に対して、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする――といった内容ですが、世論の反対が根強く成立のメドは立っていません。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
職場でパート勤務の人に「もう1つの勤務先とあわせて10時間働いてるから」と、2時間分の“残業代”を請求されました。うちでは「4時間」しか働いていないので、払う必要はないですよね…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月11日 4時40分
-
新刊『労基署から呼出しが来た!調査・是正勧告への実務対応』発売
PR TIMES / 2024年9月4日 7時40分
-
私の住む地域では最低賃金が「41円」上がるそうです。もともと最低賃金以上の時給で働いている人も、給料アップするのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年8月29日 5時20分
-
有休の当日に、職場から「今日シフト入れない?」と連絡がありました。もし働いたら「残業扱い」になりますか? 支払われるのは“普通のお給料”でしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年8月26日 4時30分
-
会社のルールで「残業代」は15分ごとの支給です。ただ毎日10分ほど「必須の残業」が発生するのですが、それでも残業代は“切り捨て”になりますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年8月26日 2時20分
ランキング
-
1臓器192件移植できず 実施施設の人員・病床不足の理由も 厚労省が初調査
産経ニュース / 2024年9月24日 18時32分
-
2対向車のライトで人が消える「蒸発現象」に注意! 日が短くなる時季にドライバーと歩行者が気を付けたいこと
CBCテレビ / 2024年9月24日 18時13分
-
3東京都 墨田区・港区の一部地域の水道水から異臭 「油のような匂いがする」「シンナー臭がする」 原因分からず 都は水道水を飲むことを控えるよう呼びかけ
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年9月24日 20時28分
-
4深圳の男児刺殺、中国・王毅外相「政治化や拡大化を避けるべきだ」と上川外相に注文か…日中外相会談
読売新聞 / 2024年9月24日 11時43分
-
5大雨被害の能登、母の頬の泥拭い「母ちゃんごめんな」…新たな犠牲者に悲しみ広がる
読売新聞 / 2024年9月24日 21時35分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください