年金改革、アメとムチの対照的な2法案
政治山 / 2016年10月21日 17時30分
年金制度を巡り、保険料の支払期間を短くする「年金機能強化法改正案」と、年金額の伸びを抑える「年金制度改革関連法案」の対照的な2法案が今国会で審議されています。
まんがや世代別の解説で年金制度への理解を図る厚労省の特集サイト
保険料支払期間が25年から10年へ
政府が衆院に提出した年金機能強化法改正案では、年金受給に必要な保険料支払期間が25年から10年に短縮されます。成立すれば来年9月分から新たに対象となった受給者に支給(10月から受け取り)されます。7月の記者会見で、安倍首相が「無年金問題は喫緊の課題」と表明した政策対応の一つとなります。
改正案が施行された場合、新たに受給されるのは約40万人で、厚生年金も含めると約64万人に上ります。支給額は、納付期間が25年の場合は4万630円ですが、10年だけだと1万6252円となります。
必要な予算は2017年度は約260億円、18年度以降は年度あたり約650億円が必要と推計されます。厚労省は、財源として低所得者向けの「簡素な給付措置」に充てていた予算で対応する方針です。
年金額引き下げへスライド方式強化
一方、年金額引き下げ強化を見込んだ年金制度改革関連法案が継続審議となっており、政府はこちらも今国会での成立を目指しています。年金制度改革関連法案では、年金額の伸びを物価や賃金の上昇より低く抑える「マクロ経済スライド」の強化などが盛り込まれており、物価や賃金が下がると年金額も大きく下がった方に合わせて減額される可能性があります。
安倍首相は「世代間の不公平感を解消するため」として理解を求めています。既得権が絡むだけに、アメとムチで法案可決を探る政府・与党と、「厚労省の試算は甘い」と反発する野党の駆け引きは、有権者の高い関心を横目に国会で熱を帯びています。
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