「しろえびせんべい」海を渡る 富山の百年企業・日の出屋製菓 米菓の枠超えた展開で雄飛
食品新聞 / 2024年4月10日 11時52分
富山米と富山湾で獲れるしろえびで作られる「しろえびせんべい」が海を渡り人口に膾炙する――。そんな青写真を思い描き、富山の100年企業・日の出屋製菓産業では世代交代が行われた。
3月1日、代表取締役社長に川合洋平氏が就任し、社長職を兼務していた川合声一代表取締役会長は社長職を退任し会長職に専念する。2月26日に創業100年の節目を迎えた動きとなる。
今後の役回りについて、3月8日取材に応じた川合会長は「創業者の薫陶を受けた者は今では私しかおらず、原材料の富山米や企業文化についてはもう少し私が語る必要がある。それ以外については口出ししない」と語る。
社内では会長職に専念しつつ、地元・富山を盛り上げる活動に諸肌を脱ぐ。
バトンを渡した長男の川合社長には、海外事業の発展に期待を寄せる。
「洋平という名前には『太平洋を越えて商売してほしい』という期待を込めた」という。
同社の前期(2月期)売上高は前々期比8%増の39億円。スーパー・量販店に卸している「日の出屋製菓」ブランドを意図的に縮小した一方で、新販路と新ブランドに注力して伸ばしていったことが奏功した。
このうち海外売上高は前々期比2.5倍に拡大し、今期は1億円の大台を突破すべく前年比3倍の伸びを計画する。
バトンを受け継いだ川合社長は「5年以内に海外売上比率を10%に引き上げていくことが最低ラインの目標」と意気込む。
海外事業は現在、13の国と地域で展開している。その中でサンクゼールとの取引が大きいことから、今後はサンクゼールを通して輸出先を拡大させていく。
看板商品「しろえびせんべい」(日の出屋製菓産業)「サンクゼールさまはじめ国内卸企業さまとの関係を深めつつ、現在、海外の卸企業さまともやり取りしており、数年かけて当社のNB商品の展開も視野に入れている」と述べる。
今後の商品開発の方向性は、米菓にとどまらず和菓子など地元のお米や特産品を使った様々な食を展開していく考えで、その急先鋒に新業態ブランド「おこめぢゃや」を挙げる。
「おこめぢゃや」は、団子とおこわのお米のおやつ専門店。2022年3月、「おこめぢゃや富山マルート店」を全国初出店したことで立ち上げられた直営店ブランドとなる。現在6店舗を展開し、今後はショップインショップの展開を強化すべく「ささら屋」2店舗の改装に伴うオープンを予定している。
「『おこめぢゃや』は団子とおこわのお米のおやつ専門だが、今後は富山米を中心とした様々な富山の食を取り扱う総合的な直営店を目指して勢いを加速させていく」。
海外事業にも寄与するものとして川合社長が重視するのは商品開発。
「『類ありて比なし』の社是を掲げており、他が真似できない商品づくりにこだわり続けている。世にない新しい商品をどれだけ企画・開発できるかがポイント。ローカルの価値でグローバルに打って出るグローカルの考え方が大事で、富山米と地元・富山という軸をぶらさずに菓子から食品へと領域を広げていきたい」と意欲をのぞかせる。
海外事業の拡大は、単に外貨を稼ぐことに加えて、富山の方の誇りにもつながりうるという。
新業態「おこめぢゃや」「地域を守るには物質的な幸せもあるが、心の幸せが最初にあり、そこに対してわれわれは寄与できると考えている。富山に根ざしたグローバル企業のモデルを目指していく中で、地元の方がより地元好きになってもらえるように活動していきたい」と述べる。
社内体制はボトムアップ型を志向。
「トップとして引っ張っていくことはもちろん必要だが、『人づくり品づくり』の中で皆さんの知恵や知見が集まって100年やってきたことを考えて、役職や先輩後輩の垣根を越えて、一人一人の力を生かしていきたい」との考えを明らかにする。
賃上げについては「これから5年間かけてしっかりやっていきたいため、利益を出せる社内体質にして売上をある程度伸ばしていく」と説明する。
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