「解散は顔ファンだけのせいとは限らない」ハイツ友の会、電撃解散…なぜ女芸人に解散と引退が続出するのか
集英社オンライン / 2024年4月2日 17時27分
将来を有望視されていた女性お笑いコンビ・ハイツ友の会が3月31日に突然、解散を発表した。その理由をめぐって、「顔ファンではないか?」とのコメントや報道が相次出いる。近年、女芸人が芸能界で活躍する中で、実はその取り巻く環境には大きな障壁がいくつもある。
顔ファンのせい? ハイツ友の会の解散に衝撃
3月31日、女性お笑いコンビ・ハイツ友の会が解散を発表した。清水香奈芽は芸人を引退、西野はピン芸人として活動していくという。将来が有望視されていたコンビの突然の解散は、お笑いファンに衝撃を与えている。
2019年4月にコンビを結成し、独特な世界観のネタで人気を博していた実力派のハイツ友の会。M-1グランプリでは、2021年に準々決勝、2022年に準決勝、2023年に準々決勝と、女性コンビの中ではトップレベルの結果を残しており、昨年放送された『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)では決勝に進出。センスのあるネタが審査員たちから称賛された。
ファンも芸人たちも、「ハイツ友の会はいずれM-1の決勝に…!」と思っていた矢先の突然の解散。その理由を2人はそれぞれコメントで発表している。
2人のコメントは基本的に共通しており、活動する中でさまざまな辞めたい要因が積もってしまったこと、そしてこのまま続けていても、賞レースで優勝するのは難しいと考えていたことを解散の理由としてあげている。
西野は自身のXにて、〈様々なことが重なり昨年の春頃に芸人を辞めたい気持ちが閾値を超えました。それから気持ちの上がり下がりはありましたが一定閾値を超えた状態での上がり下がりでした〉〈賞レースの決勝まではいけても優勝できる気がせず、特にこの1年間本当に苦しかったです。さまざまな言葉をかけていただきますが、今の漫才やコントの形を変えると自分たちのやりたいネタではなくなります。ですが今の形のままだと優勝できません。優勝できない状況でやり続けるより、今辞めてしまおうと思いました〉とコメントするとともに、
〈私たちを応援してくださる方は女性が多くいてくださったように思います。とても嬉しかったです。女性の皆さんありがとうございました。本当に“お笑い”が好きな男性もありがとうございました〉と意味深な感謝の言葉をつづっている。
これを受けてSNS上では、「“顔ファン”の男性に悩まされたのでは?」という指摘も多い。実際、女芸人には、ネタを見ずにルックスだけで応援するようなファンがつくことは多い。
さらにそういったファンは出待ちなどをした挙句、謎の上から目線でアドバイスやダメだしをしてくることもあるそうで、こういった被害をヒコロヒーが告白していたこともある。
いったい、ハイツ友の会は何に苦しみ、解散に至ったのか。女芸人の難しさについて『女芸人の壁』(文藝春秋)の著者、西澤千央さんに見解を聞いた。
「昔は楽屋でメイクするのが怖かった」女芸人の悩み
「『本当に“お笑い”が好きな男性もありがとうございました』という文章の真意は西野さんにしかわからないですが、『本当に“お笑い”が好きな男性』の対義語が“顔ファン”というのも少し違うのではないかと個人的には思います。芸人は言葉や表情や動き、体全体で表現するのが仕事なので、“顔が好き”というファンがいても当然だし、そこは否定されるものではないかと。
しかし、女性芸人を何人か取材して感じたのは、芸人界においては“女性”であるというだけで必要以上に“女性”を意識させられるということ。Dr.ハインリッヒが『女のクソ仕事』と呼んでいたような、セクハラにキャーキャー言ったり、逆に若手の男性俳優にセクハラまがいのことをしたりする役割もそうですし、ちょっとネイルをしていただけで『見た目ばっか気にしやがって』と男性芸人に揶揄されるとか、ブレイクすれば『女だからな』的な見方をされるという話も聞きました。
Aマッソの加納さんが『昔は楽屋でメイクするのが怖かった』と話していたんですね。たしかハインリッヒの彩さんも『髪の毛を巻けるようになったのは最近』だとラジオで言ってました。メイクや巻き髪を女性的なアイコンとして捉えられてしまうことに必要以上にピリピリせねばならなかったのではないでしょうか。実際に一部の男性ファンに嫌気がさしていたのもあるのでしょうが、メディアも含めた『女性芸人の「女性」の部分ばかり見てくる(求めてくる、立たせてくる)』風潮全体のことを言ってるのかなぁと思います」(西澤氏、以下同)
また、今回ハイツ友の会が解散をしたことで、女性コンビの解散率の高さも指摘され始めている。アジアン、少年少女、はなしょー、根菜キャバレー、ねこ屋敷…そして、ハイツ友の会と同じく、今年の3月31日に尼神インターも解散を発表した。いずれも、テレビ仕事があったり、賞レースのファイナリスト経験であったりと、人気を博していた中での解散だ。
また、ピン芸人の中でも、ブルゾンちえみ、田上よしえが芸人を引退。ほかにも、活動場所をお笑い以外のフィールドに移した女芸人は多い。なぜ女芸人の解散・引退率は高いのだろうか。
Aマッソ加納が語る女芸人の難しさ
「『女芸人の壁』に掲載されている対談で、加納さんが『ワタナベエンターテインメントの芸歴10年以上の芸人が出るライブに女性がほとんどいない』と話していました。『売れなくても続けていればいつか…』みたいな幻想を持たない女性芸人が多いこと、直近でそういうモデルとなるような女性コンビがあまりいないことなどが理由にあるんじゃないかと考察されてましたね。
では、なぜ『続けていればいつか…』とならないのか。そういう女性コンビがいなかったのか。それはまさに『女性芸人であるかぎり「女性」から逃れられない』という現実が立ちはだかったいるからなのでしょう。芸人界において、“女”であること自体が非常に“情報量が多い”とされてしまう気がします」
西澤氏によると、女性が芸人という職業に就いた場合、「なんで“女”がこんなネタしてるの?」「“女”が芸人やってるの?」といったことをまず解説する必要があり、わかりやすいキャラ(デブ、ブス、非モテ、ババア、ギャル、やさぐれetc)が求められるという。
「ハイツ友の会はそのキャラづけを拒否して自分たちがおもしろいと思うネタだけでやっていきたかったのだと思いますが、それを貫くのは相当キツかったのではないかと。またキャラでブレイクしても、そのキャラに自分自身が苦しめられて辞めていく女性芸人も少なくないです。“売れる”という観点でいえば、男性コンビと比べて女性コンビのほうが可能性は高いかもしれませんが、それは“ガラスの天井”に近いものなのかなと思います」
最近では、男性優位な芸人界においても女性が増えてきており、女芸人だけが出場できる賞レース『女芸人No.1決定戦 THE W』なども設立されて、活躍の場を設けようと業界も動きはじめている。
「賞レースが芸人の一生を極端に左右してしまう」
今後、女芸人がさらなる活躍をするために、そして、ハイツ友の会のような悲しい解散劇が起こらないように、我々のするべきことはなんなのだろうか。
「厄介なことするファンって、自分が厄介なファンだとは微塵も思っていないので、ハイツ解散でこんなに議論が起こっても、そこにはまったく届いてないでしょうね。となるともう、わかってる人たちがちゃんとしていくしかないのかと…。私は西野さんのステイトメントで『今の形のままでは優勝できない』という一文もショックでした。
賞レースが芸人の一生を極端に左右してしまうことが、芸人界にとって果たしていいことなのだろうかと思いますし、そうでなくても“情報量の多い”女芸人が、フラットにおもしろさを審査してもらえるのだろうか。そういう構造の歪さも、ハイツ解散の一つの要因だと思いました。やっぱり手っ取り早く変われるのは私たち視聴者だったりファンだったりだと思いますので、もう少し謙虚に、自分の中にある“無自覚な差別意識”に向き合えたら」(西澤)
人々の意識、芸人界の構造が変わっていくのは10年、20年スパンかもしれないが、それでも彼女らが今戦っていることが、この先の明るい未来に繋がっていると信じたい。
取材・文/集英社オンライン編集部
外部リンク
- なぜM-1グランプリで女芸人は優勝できないのか?-テレビでは3秒でわかる面白さを求められる
- 「芸人」ではなく「女」の仕事をさせられることに声を上げ始めた女芸人たち
- M-1決勝“餅つき”や“YMCA寿司”…ヨネダ2000の奇天烈ネタはどう生まれるのか? 「まず2%で愛さんに伝えて」「どう頑張ってもお客さんに伝わらなさそうだなと思うときもあります」
- 「ブスが一番おもしれえのに、なんだってんだ!」女芸人まちゃまちゃが「ブスいじり」は全然あってもいいと思う理由と過保護な「ルッキズム」への思い
- 骨が飛び出るくらいの大怪我も…「あの時SNSがあったら確実に終わっていた」女芸人まちゃまちゃと、モリマン・モリ夫の衝撃的な酒カス伝説
この記事に関連するニュース
-
変顔しても「大美人」 謎多き女芸人、独特すぎる世界観に大悟「この子は芸能界に染めたらあかん」
クランクイン! / 2024年4月30日 10時18分
-
『有吉の壁』出演芸人ランキング…男性1位は? 女性1位は高い歌唱力を生かした歌ネタが人気のお笑いコンビ
まいどなニュース / 2024年4月24日 20時45分
-
“顔ファン”めぐり芸人激論「劇場レベルで問題になることも…」 小籔千豊は主張「何も悪くない!」
ORICON NEWS / 2024年4月12日 20時11分
-
コットン、“顔ファン”がネタの邪魔になっていた過去告白「劇場レベルで問題になることも」
マイナビニュース / 2024年4月12日 18時30分
-
「ハイツ友の会」解散の背景に“マウンティングおじさん“か、西野が残した“意味深“投稿の真意
週刊女性PRIME / 2024年4月6日 14時0分
ランキング
-
1人気バンドマン 「ラヴィット」生放送でライブチケット1600枚売れ残っていると告白 スタジオどよめく
スポニチアネックス / 2024年5月3日 13時23分
-
2鈴木亮平、2011年のブログがネットで話題「マジですごい」「言霊ってあるんだ」「本当に夢叶えてる」
スポニチアネックス / 2024年5月4日 15時58分
-
3「オリラジ」藤森慎吾、「ブランチ」で結婚生会見…出会いは「ノブシコブシの吉村さんとのお食事会」
スポーツ報知 / 2024年5月4日 9時33分
-
4「マジで本当に怒ったことない」千鳥ノブ、人生で初めてマジギレした相手明かす「何してんだ、てめえって」
スポーツ報知 / 2024年5月4日 5時38分
-
5「まるでホスト」速水もこみちが“ワイルド系チャラ男”に激変イメチェンの現在地
週刊女性PRIME / 2024年5月4日 12時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください