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「株は究極のボケ防止や」脳梗塞、心筋梗塞、高血圧を経て18億円の資産を築いた“87歳現役トレーダー”「もう自分は年を取ったから、というのは逃げ文句ですわ」

集英社オンライン / 2024年4月21日 12時0分

87歳現役トレーダーが乗りこなした時代の波…戦後のペットショップから雀荘経営を経て投資家に…資産10億を溶かしたバブル崩壊、阪神大震災を振り返る〉から続く

87歳現役トレーダー、藤本茂さんは、バブル崩壊や阪神淡路大震災の影響で株から離れてしまう。しかし2002年にインターネット取引に出会い衝撃を受ける。それから20年かけて18億円を築くまでの経緯、そして最後に「いつまでトレーダーを続けたいか」を率直に聞いた。

ネット取引の衝撃とトレーダーの復帰

──茂さんが株を再開された2002年にはインターネットでの株取引が一般的になっていました。

藤本茂(以下同)
そやな。こんなにも株取引が効率的になったのかと衝撃を受けたんや。



──それまではネット取引ではなかったんですね。

僕が株をはじめた頃の売買は、証券マンが取引所の立会場で手でサインを出すことによって成立してたんよ。いわゆる”場立ち”と呼ばれる手法。1970年くらいには、東京証券取引所(東証)の立会場だけで2000人くらいの証券マンがいましたわ。

──すごい数ですね。

立会場で見ることのできるサインも個性的でおもしろくてな。銘柄を伝えるとき、たとえばNTT(日本電信電話)であれば「電話で話すしぐさ」をするんですわ。トヨタ自動車であれば「片手でカタカナの"ト"を書いてから両手でハンドルを握るしぐさ」。そのあと「買い」か「売り」かの合図と、株数と値段を表す数字を手のサインで示すわけや。よくあれで間違うことなく注文が通るもんだと思ったなぁ。

この”場立ち”は1999年に廃止されたのでもう見ることはできないけどな。ネット証券でしか取引したことのない若い人にとっては信じられない光景だと思うけど、あの頃はものすごく活気が感じられましたわ。

──確かにその光景を知っていると、ネット取引の登場は衝撃的ですね。

そやろ? それまでは株のよしあしも、証券会社の営業マンの話を聞いたりして買うしかなかったわけですよ。でも、それだと約定まで時間がかかるし、営業マンも自分の売りたい株しか勧めてこないからな。

それに比べてネット取引は効率的に売買ができて手数料も安いから、これは使わない手はないと思ったな。それで66歳のときに初めてパソコンを購入して、再び株式投資に専念することにしたんや。

──66歳でパソコンを買う行動力もすごいですね。

なにかをはじめるのに年齢は関係ないですわ!

──ペットショップや雀荘の経営など、藤本さんはさまざまな経験がありますが、そこまで株式投資にハマったのはなぜなのでしょうか?

単純に株は楽しいと思うし、なにより夢があるからなぁ。株はお金をかけて楽しむゲームの中で一番おもしろいですよ。

これまで麻雀、競馬、パチンコなどいろいろやってきましたが、僕は胴元に入るパーセンテージが高いギャンブルが嫌いなんです。その点、デイトレードは証券会社に数%の手数料を払えばたくさん儲けることができるからな。

「株は究極のボケ防止や」

──株が最もおもしろい博打という感じでしょうか。

ちゃう。株は博打とは違って、日々の情報収集とデータ分析、勉強がものをいう世界や。株をはじめたばかりの頃には、たまたま勝って小金を手にすることもあるけどな。

長く勝ち続けるには運だけでは駄目で、勉強が必要や。僕はその日の取引履歴を手書きでノートに記録して、すべての取引を反省することで次の取引に繋げてるんですわ。

──すべて記録を取っているとはすごいですね。この記録はどのくらい見返すのでしょうか?

取引が終わった直後に、その取引がよかったのか悪かったのかを反省はしますが、それさえ終わればもう見返すことはないな。次の取引に繋げる必要はあるけど、「どれだけ儲かったか」「どれだけ損をしたか」と過ぎ去ったことばかりに執着してしまうのもよくないからな。

投資を続けていくためには成功・失敗にかかわらず、あまり過去にこだわらないことも重要な秘訣や。

──なるほど。メモすることを通して反省ができればよく、その後は見返しすぎないということですね。

そや。我が家にはネット取引をはじめた2002年からのすべての取引の記録がノートに保管されてますよ。そんな風にすべての取引を記録して反省しながらデイトレードを続けた結果、87歳で資産は18億円まで増え、月6億円を売買するまでになったんや。

──ちゃんと結果が出てて、すごいですね。

「すごい」とはよく言われるけどな、僕からすればまだ十分とは思えんなぁ。僕の生活は株を中心に回ってるから、その労力を思うと18億円でも見合うとは思うなぁ(笑)。
 

──(笑)。藤本さんは87歳で現役バリバリですが、年齢による衰えを感じたりはしないのでしょうか。

確かに年を取って記憶力は低下してきたな。デイトレードをしていても、今自分がいくらで注文するつもりだったか忘れてしまうこともありますよ。でも、それは仕方のないことやと思う。

それを補うためにも、メモを取っているんですわ。ひとつひとつの取引をメモに書いて反省することは、頭ではなく身体に覚えさせることになるからな。「記憶力が衰えた」と落ち込んでいても何も変わらへんから、自分ができることをするしかないんや。

──なるほど。

ただ、記憶力は衰えても、判断力は衰えていないと感じるなぁ。もし判断力が衰えていたら、瞬時の判断が求められるデイトレードで勝ち続けることはできないやろ?

「能力が衰えてきた」と思う高齢者の多くは、ふだん頭を使ってないからや。そりゃあ60歳とか65歳までバリバリ仕事をしてきた人が定年になった途端に頭を使わなくなれば、一気に衰えるやろ。

僕のように丸一日頭をフル回転させていれば、そうそう判断力は衰えない。頭は使い続けることが大事。株は究極のボケ防止や。「もう自分は年を取ったから」というのは逃げ文句ですわ。

最近も倒れたけどデイトレーダーを続けたい

──頭だけでなく身体の健康も大事だと思います。87歳になっても身体が健康でいられる秘訣はありますか?

それでいうと、僕は特別、身体が健康というわけではないよ。

──と、言いますと?

2016年には脳梗塞を発症して、翌年には心筋梗塞になりましたわ。血流を守るために、いまも心臓の冠動脈に3cmほどのステントが入ってます。先月(2024年2月末)にも、脳梗塞で倒れて入院したばっかや。デイトレードができないとやることがなくてつまらないから「1週間で退院させてくれ」と医者に頼んで退院させてもらったけどな(笑)。
 

──大丈夫ですか……。

それと、僕は血圧も高いんですわ。最高240mmHg、最低が120mmHgを記録することもあるくらい、高血圧もいいところや。

でも、特に食事に気をつけたり、降圧剤を飲んだりすることはないな。無理に降圧剤で血圧を下げようとすると、頭がボーッとして、判断力が求められるデイトレードには向かないように思うからな。そもそも、年をとって血圧が上がるのは自然なことや!

──健康というよりも、デイトレードが第一優先なんですね。

そや! 薬を飲んで健康のために生きる生活より、何か1つでも打ち込めるものを見つけて、その打ち込めるものを追求するために時間を使ったほうが「最後まで自分を全うできた」と言えるんやないかな。

僕はいまこの生活がすごく楽しいからな。健康だけを気にして好きなこともできずに窮屈に生きるよりも、好きなことをやって楽しんで生きるほうが絶対にいい人生ですわ!

──確かにその通りですね。では、これからも続けられる限りはデイトレードを。

そやな。もし僕がデイトレーダーを引退するとしたら、死ぬときや。


取材・文・写真/山下素童

『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え  資産18億円を築いた「投資術」』

藤本 茂
『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え  資産18億円を築いた「投資術」』
2023年11月29日
1760円(税込)
単行本
ISBN: 978-4478119181
1936年(昭和11年)、二・二六事件が起きた年、兵庫県の貧農の家に4人兄弟の末っ子として生まれた。
 
高校を出してもらってから、ペットショップに就職。そこでお客だった証券会社の役員と株の話をするようになった。そして19歳のとき、4つの銘柄を買ったことが 株式投資の始まりだった。あれから68年、高度経済成長、ブラックマンデー、阪神大震災、リーマンショック、東日本大震災、コロナショック──時代の移り変わりと危機をこの目で見てきた。
 
今、資産は18億円まで増え、月6億円を売買しながら、デイトレーダーとして日々相場に挑んでいる。お金を増やしたいのは二の次、ただただ楽しいから毎朝2時起きで株のことを考えている。
 
本を書くことになるなんて思ってもみなかったが、どうせ書くなら読んでくれるみなさんの役に立ちたい。だから、隠しごとなしに日常生活から投資法まで全部書いた。

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