法人が個人から時価よりも低い金額で資産を取得した時の課税関係(松嶋洋)
相談LINE / 2016年7月1日 19時0分
社長が自分の経営する法人に土地を売るといったケースは多くありますが、この場合、時価で売却する必要があることに注意する必要があります。
仮に、時価よりも低い金額で売却すると、所得税、法人税、贈与税と3つの税金の課税問題が生じます。
■所得税の課税問題
個人が法人に資産を売却する場合、その売却金額が時価の2分の1未満であれば、実際にうった値段ではなく時価で取引したとして譲渡所得税が課税されます。
具体的に申しますと、300万円で買った土地を400万円(時価は1000万円)で売った場合、時価の2分の1未満で売却していますので、1000万円で売ったとして、700万円に対し譲渡所得税が課税されます。
■法人税の課税問題
法人が資産を時価よりも低い金額で取得した場合、時価との差額について低い金額で取得したとして資産の受贈益を認識する必要があります。
先の例でいえば、差額の700万円は個人で課税されるにもかかわらず、法人においても譲受益として法人税の課税対象になります。
■贈与税の課税問題
同族会社に資産を時価よりも低い金額で売った場合、時価ベースで見ると、会社に資産を売却した株主以外の他の株主の株価が増加することになります。
会社の株価は、原則として会社の純資産に比例して大きくなります。このため、本来1000万円かかる土地を400万円で購入したとすれば、600万円分会社の時価純資産は大きく計算されることになります。
このため、先の例でいえば、社長以外に株主がもう一人いた場合、その600万円分について株価が増加したとして、贈与税の課税が行われる場合があります。
■同族関係者では時価での取引を徹底
他人との取引であれば、損をしてまで取引するということはレアケースですので、時価はあまり問題になりません。しかし、同族会社との取引など、同族関係者であれば財布は一緒ですから、いかようにも取引金額を操作することができます。このような場合に備えて、税の世界では上記のような厳しい取扱いが設けられています。
時価はいくらか、非常に難しい問題ですが、税理士とも相談しながら慎重に対応する必要があります。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。
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