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粉飾決算によって過大に納めた法人税を返してもらう時の注意点(松嶋洋)

相談LINE / 2016年8月19日 19時0分

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前回、粉飾決算をしているとなると、調査官が嫌がるという話をしましたが、調査官が嫌がることはすなわち税務調査のリスクが小さいことを意味しますので、税理士は粉飾決算に対して、それほどリスクがないと誤解する傾向があります。しかし、前回見たとおり、法人税においては、粉飾決算の修正をしない限り、粉飾決算によって過大に納付した税金を返して貰えませんので、粉飾決算をすると、それを解消する時に大きな問題に発展するリスクがあります。

■粉飾の解消は5年しかダメ

法人税において、粉飾決算を解消する場合、その粉飾決算を行った事業年度にさかのぼって、過大に申告している所得金額を修正することになります。例えば、3年前の本当の所得金額が200万円であるにもかかわらず、在庫を800万円過大に粉飾した場合、その800万円は3年前にさかのぼって減額されることになります。

ここでご注意いただきたいのは、税務署が法人の所得金額を減額する処分は、時効のため原則として5年しかできない、ということです。このため、仮に先の粉飾が6年前に行われていれば、6年前は時効で減額することができませんから、過大に申告した800万円の取戻しは、永久にできないということになります。

■立証責任は納税者にある

上記の通り、粉飾決算の解消は5年間しかできないわけですが、その手続きは税務署に減額の処分を求める更正の請求という手続きで行うことになりますので、立証責任が納税者にある、というデメリットも生じます。

具体的には、いつからいくらくらいの粉飾をしていたのかなどについて、詳細な立証をしなければ認められませんので、この点も非常に大きな労力がかかります。

■解消を見据えておく必要性

大企業は会計監査の制度がありますので、粉飾決算を未然に防ぐ体制が整っていますが、中小企業はこのあたりがいい加減で、安易な粉飾決算がなされることが多々あります。

このあたり、本来は税理士や税務署がしっかりと指導すべきですが、粉飾決算であれば税務調査リスクが大きくないとして、甘い判断をすることがあります。しかし、粉飾決算はいつか解消する必要があるわけで、解消時に大きな問題になることになります。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。

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