分掌変更に伴う退職金が認められるかどうかは持ち株数次第?(松嶋洋)
相談LINE / 2016年11月18日 19時0分
実際に退職していなくとも、実質的な退職があったとして認められる分掌変更に伴う退職金については、分掌変更した後でも経営上主要な地位を占める役員については認められないという取扱いになっています。この経営上主要な地位という用語について、実務上問題になることの一つに、会社に対する支配権を意味する株式数があります。
ほとんどの中小企業は、役員(社長)が会社の株式のほとんどを握っている同族会社です。このようなオーナー社長は、会長に分掌変更をしても、会社の支配権のほとんどを握っていることになりますから、会長になった後の業務内容に関係なく、経営上主要な地位を占めていると判断される可能性が大きいと言われています。
■通達上は監査役への分掌変更だけ
このため、会社の株式の大部分を握るオーナー社長については、分掌変更に伴う退職金は原則として認められず、支給する場合には後継者に株式を譲っておくべきと言われます。実際のところ、税務調査や判例においても、保有している株式の数が多ければ、分掌変更に伴う退職金は認められないとするケースがほとんどです。
しかし、分掌変更に伴う退職金の要件を定めた通達上、分掌変更する役員が保有する株式数が問題になるとしているのは、取締役が監査役に分掌変更したケースのみであり。例えば非常勤役員に分掌変更した場合の取扱いとして、株式数が問題になるとは記載されていません。このため、実務上の取扱いは別にして、会社の大株主である社長が非常勤役員に分掌変更したとしても、通達上は問題にならないと考えられます。
■株式数は直接関係ない
この点、非常に興味深い判例があります。この事例では、筆頭株主である取締役が監査役に分掌変更した場合の退職金について問題になったのですが、株主として会社に影響を与える場合と、役員として影響を与える場合は異なるとして、筆頭株主であることは分掌変更に伴う退職金の判断に影響を与えないと説明されています。
株式会社は、所有と経営の分離という性格があると言われます。会社の所有者(株主)と経営者(役員)は本来的には別人であり、このような性格があるからこそお金をたくさん投資家から集めながら、効率的な経営が可能になると言われます。
■国税の対応は厳しい
この本質的な性格を踏まえると、経営における主要な地位と株式数は関係ないはずですから、分掌変更に伴う退職金が認められるべきであり、この点国税の寛容な対応が求められます。
しかし、やはり国税の対応は厳しいですから、筆頭株主などに分掌変更に伴う退職金を支給する場合には、株式は譲渡しておいた方がいいでしょう。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。
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