能登半島地震、被災体験者の声からリアルに学ぶ「地震災害への備えと対策」
日刊SPA! / 2024年3月20日 8時50分
柳瀬を案内してくれたのは、ぶなの森で地域おこし協力隊として働く池田隊員だ。自治体主導で家屋を失った人と空き家をマッチングさせる取り組み「空き家バンク制度」をサポートするぶなの森の活動にも尽力。池田隊員がマッチングした空き家で新しいスタートを切った人もいる。
「お正月に大きな揺れを感じた直後、町内放送(防災行政無線)で大津波警報が発令されたことや避難指示が出ていることを知りました。でも、柳瀬は高齢者がほとんど。私の家にも90歳を超える年寄りがいたので、高台にある避難所へ向かうのは本当に大変でした」
現在は、ぶなの森が宝達志水町といっしょに情報を集めた空き家のひとつを賃貸で借りることができ、生活基盤を整えつつあるAさん(女性・60代)は当時を振り返る。そして、「紙オムツはかさばるけど、避難所にはないだろうから持って行かないといけない。これも荷物になって大変でした」と話す。
「絶対に持ち出さなければいけないものもあるので、実際に避難となると、『アレも必要、コレも必要』と、すぐには家から出られませんでした。また、90代の年寄りは歩くのも大変。でも、道路は寸断や損傷していて車での避難は無理でした。津波の避難所は高台にあるので、年寄りを支えながら荷物を抱えて上がっていくうちに、ほかの避難者にどんどん追い抜かれていき、最初に到着した避難所はすでにいっぱいになっていたのです」
その後Aさん一家は、避難先で親切な人に車で送ってもらい、Aさんの実家に身を寄せた。けれど、Aさんの夫が慣れない生活で体調を崩す日々。持病もあり入院した夫のこと、そして今後の生活を考え途方に暮れているとき、ぶなの森などが集約した空き家との縁に恵まれた。
「私はありがたいことに、こうして空き家を安く借りることができています。ただ、避難所にもいつまでも居られないですし、お金がなくてどこにも行けずに倒壊した自宅と同じ敷地にある納屋などで暮らしている人もいます。お金を貯めていた人たちは同じ石川県内や県外といった別の場所で家を建てるなどしているようですが、まさか家が倒壊するなんて想像もしていなかったので、いままで普通に生活していた人がほとんど。私も倒壊したあの家でずっと住む予定だったので、まとまったお金もありません」
災害時に「まとまったお金が手元にないというのは、本当に心細い」と言い、ある程度のお金は貯めておくべきだということを体感したというAさん。このことから地震保険を掛け、さらには数百万単位のまとまったお金を貯めておくことの大切がわかる。また、緊急時に持ち出せるよう荷物をまとめておくことも必須だ。
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