「オラ!早く行かんかい!」穏やかで優しい上司が車に乗ると豹変…退職が頭をよぎった“地獄の研修期間”
日刊SPA! / 2024年4月18日 15時53分
武田さんは「これが社名の書いてある車だったら、Mさんはとっくにクビになっていただろうな。この人は、こんな運転をしていて事故を起こしたことはないのだろうか?」などと考えながら、ずっとヒヤヒヤしていたとか。
「自分の運転が悪くてぶつかりそうになったり、クラクションを鳴らされたりしているのに、相手のせいにして罵倒するのです。でも、窓を開けて怒鳴ったりはしません。文句を言うときは、ピッチリと窓を閉めてから。前の車を煽ることも頻繁にありました」
◆なぜか社長は上司をべた褒め
けれどそれも、前方の車にピッタリとくっついて煽るわけではなく、信号待ちなどのタイミングで相当な距離を取りながらエンジンをふかし、「オラ!早く行かんかい!」などと罵倒するという具合。前方の車との距離が縮まると急ブレーキを踏むなど、とにかく危ない。
「助手席側に付いているアシストグリップを掴んでいたのですが、掌は汗でびっしょり。何度もスーツのズボンで拭きながら握り直しました。こちらの気も知らず、Mさんは、ずっとご機嫌。しかも、サングラスを外して車から降りると元に戻るのでタチが悪すぎます」
営業先では普段の穏やかで紳士な印象に戻るMさんに恐怖を感じ、会社に帰ってコッソリとMさんについて探りを入れてみたが、誰も悪く言う人はいない。むしろ、人間性を大絶賛。誰も、Mさんの二面性について知らない様子だった。
「ただ、翌日には僕の歓迎会も予定されていたので、そこで社長に相談しようと考えていたのです。人数が少ない会社ということもあり、社長と2人で話す機会もあったのですが、Mさんのことはとにかくベタ褒め。残念ながら、相談できる雰囲気ではありませんでした」
◆研修期間が終わってもモヤモヤ
もし相談をして、「社長や職場の人たちから変な目で見られたら、仕事を続けられないかもという不安感がありました」という武田さんだが、「このまま1か月もMさんとの地獄のようなドライブが続くのかと思うと、何度も退職が頭をよぎった」とも話してくれた。
「入社するまでは、少人数の会社に良い印象しか持っていなかったのですが、アットホームな反面、社員同士の関係がすごく密なため、言いにくいこともあると実感したのです。なんとか新人研修期間の1か月は耐え抜きましたが、モヤモヤは残っています」
地獄のような日々を乗り越えた武田さんは、穏やかでやさしく親切、そして職場で「神様みたいな人」と崇められているMさんの姿を社内で見るたび複雑な気分になるのだとか。そして、またいつか悪魔のようなMさんとドライブする機会もあるかもとヒヤヒヤしている。
<TEXT/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意
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