「宇宙ゴミを除去する日本企業」華々しい宇宙開発に期待の一方、上場することの“危うさ”も
日刊SPA! / 2024年5月16日 8時53分
画像はXより
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
さて、宇宙ゴミ(スペースデブリ)を除去するという世界でも珍しい日本企業、アストロスケールホールディングスが、6月5日に新規上場します。衛星やロケットの残骸が稼働中の衛星などに衝突して事故を起こす、スペースデブリ問題を解決する救世主と見られています。
映画や漫画の世界を体現するような画期的な会社ですが、上場することの危うさも見えてきます。
◆「市場そのものを創る」ビジネス構築
2013年5月設立。創業者の岡田光信氏は1997年に当時の大蔵省主計局に入省した元官僚でした。2001年にMBAを取得して同年にコンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社しています。その後、通信会社の起業などを経て宇宙開発へと乗り出しました。
創業当時、関係者の間でスペースデブリの除去に対する具体的なアクションはなく、岡田氏はまったくの白紙状態から事業を立ち上げました。市場そのものを創るという難易度の高いビジネス構築に取り組みます。
2017年11月にデブリの観測衛星「IDEA OSG 1」の打ち上げを行うも失敗。しかし、2024年2月に商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」の軌道投入に成功しました。上場前にプロジェクトを成功させた意味は大きいでしょう。
2020年にJAXAと連携してデブリの技術実装を開始。この年に受注をしています。アストロスケールは莫大な費用を投じて衛星やシステム開発を行っているため、先行投資で利益が出ていません。
◆90億円の損失を出すも手持ちの現金は170億円
2023年4月期の売上高は前期の1.9倍となる17億9200万円でしたが、93億円もの損失を出しています。アストロスケールは投資家からの出資、金融機関からの借入のほか、政府からの補助金で活動資金の大部分を捻出しているのです。
2023年4月末時点で170億円もの現金を保有しており、人件費などの必要な経費を迅速に支払えるよう、潤沢な手元資金を用意しているのがわかります。
上場は資金調達を多様化すると同時に、これまで出資していたベンチャーキャピタルなどの出口(投資回収)という側面が強いものでしょう。
アストロスケールは、上場後も資金調達に奔走する可能性が極めて高いということでもあります。
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