【蹴トピ】三笘も衝撃「考えられない!」 川崎Fアカデミー&地域密着型施設の充実ぶり
スポニチアネックス / 2024年4月24日 6時2分
川崎Fがアカデミーの強化と地域密着の促進を目指して川崎市多摩区に開設した「Ankerフロンタウン生田」が今春で運用開始から1年を迎えた。総事業費33億円で人工芝ピッチ2面やクラブハウスなど競技施設を完備すると同時に遊具を備えた広場や体育館を併設。保育施設や整形外科クリニックなどがテナントに入る。クラブの未来を担う多目的複合施設に注目した。 (東 信人)
高校生年代最高峰のプレミアリーグ。川崎F・U―18は21日の前橋育英戦を2―1で制して唯一の開幕3連勝を飾り、EAST首位を守った。会場となったのが1年前にできた新拠点。長橋康弘監督は「日本一の施設。有効に使って選手とチームの成長につなげていかないと」と訴える。
22年W杯カタール大会で三笘薫(ブライトン)、田中碧(デュッセルドルフ)らを日本代表に輩出した川崎Fアカデミー。異なる施設で異なる時間に練習していたU―18(高校生)、U―15(中学生)、U―12(小学生)年代の練習場を集約し、好きな時に好きなだけ練習ができる環境を整えた。トップチーム顔負けの豪華施設。長橋監督によれば、昨夏に顔を出した三笘と田中碧は曜日ごとに練習場を転々としていた自身の在籍時と比較し「考えられない!」と驚きの声を上げていたという。
指導者が実感しているのが食生活の改善。選手には日々、クラブハウスで夕食が提供される。JAXA(宇宙航空研究開発機構)で実績がある管理栄養士がメニューを考案。練習終了から30分以内にたんぱく質を摂取することで筋肉の修復や成長が促され、疲労回復を早める効果がある。
「食事も練習」という考えのもと、食堂では指導者自らふりかけなどを用意し「まだ食べられるか?」と配膳。長橋監督は「以前は他チームの選手と比べて食べる量が少ないと感じていたが、食事と筋トレのフィジカル強化で体つきが明らかに違っている」と明かす。
最低1回をノルマとし「正」の字を加えていく「おかわり表」で食事量をチェックして体重の推移も管理。1年で5キロ増というU―18の八田秀斗は「厳しくコントロールするようになってからみんなの意識が変わった」と話す。新施設でトレーニング器具が増えたにもかかわらず、全体練習の前に各自が行う筋力トレでは順番待ちが発生。八田とともに前橋育英戦でゴールを決めた加治佐海は「体の切れが増して、この施設ができてから自分の体が変わったな、と。大きい相手でも当たり負けしなくなった」という。
22年はプレミアリーグ昇格1年目でいきなりEASTで優勝したものの、WESTを制した鳥栖U―18との決勝に敗れて日本一は逃した。23年はEAST3位止まり。強化の成果が表れてきた今季の好発進に「一年が終わったあとに日本一という結果を出せれば」と長橋監督は手応えを口にする。
結果はもちろん、クラブ全体の底上げも求められている。現在、トップチームには下部組織から生え抜きの選手が8人いるが、今季J1で同時に先発したのは第7節・町田戦の3人(脇坂泰斗、山内日向汰、高井幸大)が最多。アカデミー統括部門の高田栄二ヘッドオブコーチングは「個人的には将来、トップで出場する選手の半分がアカデミー出身になれば」と力を込める。
トップに昇格しても全員がチームにとどまるわけではないが、クラブの安定と繁栄は優れた育成部門があってこそ。「大分投資しているので、その分いい選手を育てて1人でも多くプロになってもらいたい。サッカー界にもっと貢献できるような選手を大勢輩出したい」と話すのは吉田明宏社長だ。第2、第3の三笘や田中碧をどれだけ生み出せるか。充実した拠点を得たことで、アカデミーへの期待はこれまで以上に高まっている。
《一般利用もOK 愛される施設へ》
東京ドームに匹敵する4万8000平方メートルという生田浄水場内の広大な敷地。その約7割で川崎市と借地契約を結んだ川崎Fが、市と協力で施設を整備して管理運用する。吉田社長は「壁をなくして誰でもいつでも来てもらえる施設にしたかった。1年でイメージしていた以上の反響がある」と確かな手応えを感じている。
高機能の人工芝ピッチはアカデミーが使わない時間帯はテニスコートや体育館などとともに一般利用も可能。スタジオなどでヨガやダンスなど子供から高齢者までカバーする運動プログラムをお手軽価格で用意している。浦野珠里支配人は「“居心地のいい場所”がテーマ。365日、市民生活に入り込めたら」と語り、予約とキャンセルは自由。会員登録もなく、利用へのハードルを下げている。
障がいの有無に関係なく遊べる「インクルーシブ遊具」を備えた広場や1周900メートルのランニングコースは市が整備。テナントとしては保育学童施設やコインランドリーに加え、今春には整形外科クリニックが開院して体のケアまで可能となっている。
「我々はサッカーチームですが、街になくてはならない地域のインフラになりたい」と吉田社長。新たな拠点でさらに浸透を図る。
《世代間交流も盛ん》
○…練習場集約で世代間交流も活発化。合間の時間に異なる年代の選手がミニゲームに興じることもある。年少組は近未来を具体的にイメージしやすくなり、年長組は年下の選手に教えることが新たな気付きや基礎の確認につながる。ロッカーは隣り合わせで「上の子には模範になるよう伝えています」と長橋監督。目につく中学3年の選手をU―18の練習に参加させるなど枠を超えた取り組みも容易になり、こちらも相乗効果が期待される。
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