GW特集!日本全国「男はつらいよ」穴場観光スポット30【画像】寅さんとマドンナが愛した風景
日刊大衆 / 2024年4月25日 7時0分
「桜が咲いております」の初セリフから半世紀以上。車寅次郎が旅した愛すべき各地の名所の魅力に迫る。
渥美清主演の国民的映画
名優・渥美清主演の国民的映画シリーズ『男はつらいよ』が、公開55周年を迎えた。寅さんといえば旅であり、出会いである。
そこで、きたる行楽シーズンに合わせて、改めて寅さんとにちなんだ全国の観光地、名所を振り返ってみたい。
『男はつらいよ』シリーズは全50作品。寅さんは、ニッポン全国を旅した。
「『男はつらいよ』ロケ地巡りツアー」を企画し、BSテレ東『寅さんと50年』にも出演した山岳ガイドの高野努氏は語る。
「『奮闘篇』(1971年)のロケ地だった青森にある嶽温泉の旅館で、“ここは『寅さん』に出たんですよね?”と聞いたら、“ウチのおじいちゃんが映画に出ているよ”と言うんですよ。そうした話は日本全国にあるんだと思います」
なにしろ、ロケをやっていない都道府県は、埼玉、富山、高知だけなのだ。
旅先では安宿で日本酒をチビチビやるのが定番
全国津々浦々を巡った寅さんにとって、旅とは、どんなものなのか?
「寅さんの旅は商売が前提です。基本的に貧乏旅なので、泊まるのは安い宿。たまに歓待されて大宴会に参加することもありますし、『寅次郎相合い傘』(75年)ではリリーさん(浅丘ルリ子)たちと長万部でカニを食べに行きます。
しかし、それは特別なことで、ふだんは旅先で、その地の名物料理をたっぷり食べるということは、まずありません」(前同)
寅さんには旅が日常であるため、贅沢はしない。安宿で日本酒をチビチビやるのが定番のスタイルだ。
メジャー観光地は少ない
ページ以降の表を見て分かるように、行き先は誰もが知るメジャーな観光地は意外に少ない。
映画評論家の秋本鉄次氏は、このように考察する。
「京都の有名な寺とか、厳島神社のような荘厳な建築物とか、そうした場所にはあまり行かないですね。寅さんが行きそうな小さなお祭りがある場所というのは、著名な観光地と多少ズレるのかもしれません」
前出の高野氏も同意見だ。
「先日、『寅次郎紅の花』(95年)のロケ地だった加計呂麻島に行ってきました。素晴らしいところでしたが、あそこも、けっして全国から人が集まる観光地ではないんです。『花も嵐も寅次郎』(82年)は大分の湯平温泉がロケ地ですが、普通なら近くの由布院温泉で撮ると思うんです。それをしないのが、山田監督のこだわりなんでしょう」
『寅次郎恋やつれ』で吉永小百合さんと再会し
過度に観光地化されていない、ひなびた場所の風景こそ、旅情をかき立てるのだろう。
「例えば、『寅次郎恋やつれ』(74年)で吉永小百合さんと再会する島根県の津和野なんかは、その典型です。自然の中に適度な人の匂いと、ぬくもりがある。行ったことのない人も、どこか懐かしさを感じるでしょう」(映画ライター)
寅さんの足は主に公共の交通機関である。特にローカル線で、のんびり移動するシーンは味わい深い。
さりげなく映る鉄道、雄大な自然
「例えば、『寅次郎真実一路』(84年)の筑波鉄道・筑波線など、今では廃線になった鉄道が、いくつも出てきます。また、力強い蒸気機関車が映る場面も多い。映画の中に、失われた昭和の風景があるんです」(前同)
また、さりげなく映し出される雄大な自然は、作品に奥行きを与える。
「オホーツク海、太平洋、日本海、東シナ海と、日本列島を囲む多様な海の情景を堪能できます」(同)
山岳ガイドが本業である高野氏は山にも着目する。
「『寅次郎夢枕』(72年)で、現在の山梨県北杜市のシーンがあって、駒ケ岳がド~ンと映るんです。それが、とても印象的です」
山田洋次監督のこだわり
日本全国を旅する寅さんだが、全体を俯瞰すると旅先に一定の傾向がある。
「山田監督の考えなんでしょうが、真冬に雪が積もった場面は皆無ではないものの、極めて少ない。つまり、北海道や東北で撮影した作品は夏公開であることが多いんです」(高野氏)
前出の映画ライターは補足する。
「寅さんは、暑い時期は北へ、寒い季節は暖かいところに行きがちです。渥美さんが還暦を過ぎて、年2作公開から正月のみの年1作公開になったことで、西日本ロケ、南国ロケの割合がさらに増えました」
美女との出会いこそ旅の大きな醍醐味!
寅さんの旅で最大のイベントが、いわずもがな、マドンナとの出会いである。
「寅さんが佐渡で都はるみさん演じるマドンナと親しくなる第31作は『旅と女と寅次郎』(83年)というタイトルです。これこそが、シリーズ全体のテーマだといってもいいと思います」(高野氏)
映画の専門家である秋本氏に、その視点で推しの作品を教えてもらった。
浅丘ルリ子の出演作品、色っぽい松坂慶子
「やっぱり、皆さんと同じで、『寅次郎ハイビスカスの花』(80年)など、浅丘ルリ子の出演作品はいいですよね。また、個人的には『浪花の恋の寅次郎』(81年)が好きです。色っぽい松坂慶子が大阪の芸者を演じています。しかも、部屋で寅さんを押し倒さんとばかりに迫る。寅さんがその気になればなんとでもなりそうな……結局、何もしないんですが(笑)。そんな危ういシーンが楽しめました」
“永遠のマドンナ”リリー登場作以外で人気が高い作品に、兵庫県龍野でロケをした『寅次郎夕焼け小焼け』(76年)がある。
「あれも芸者でしたね。太地喜和子が演じたマドンナは、リリーと同様に寅さんと同じ体温を持っていました。観ているほうも、うまくいくんじゃないかと思った」(秋本氏)
だが、うまくいかないからこそ、シリーズは長く続いたのである。
51作目となる新作の布石か
そして今年、松竹が展開する「Gо!Gо!寅さん」プロジェクトは、“51作目となる新作の布石か?”という憶測も呼んでいる。
「山田監督は92歳でまだ元気ですし、第50作『おかえり寅さん』(2019年)では寅さんは死んでいないことになっていたので、第51作もありえるかもしれません。人生100年時代、寅さんが今もどこかで生きていてもおかしくない」(前同)
仮に新作が実現しなくとも、寅さんは、多くの人の心の中で永遠に旅を続けているはずだ。
読者の皆さんも、これからの新緑の季節、寅さんのように気ままな旅に出かけてはいかがだろうか。もしかすると、マドンナとの出会いがあるかも……。
【画像】寅さんとマドンナが愛した風景
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