ウナギの体でブタ鼻のキメラUMA!? ヘリントン湖の怪物「イール・ピッグ」
東スポWEB / 2024年5月10日 12時8分
【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#566】水生UMAの正体を語る時、それがチョウザメやナマズではないかとする仮説はこれまでにもたびたび登場する。2019年には、ネス湖での環境DNA調査によって、ネッシーの正体が巨大ウナギである可能性が高いと発表されたことで話題となったが、この巨大ウナギというのも水生UMAの正体でよく聞かれる一説だ。
水生UMAは細長くうねった姿で目撃されることも多く、その形状からウナギではないかと推測することはさほどかけ離れた考察ではない。だが、確かにウナギのようではあるものの、そうとは言いきれない大きな特徴も持っている存在がいるとしたらどうだろう。
米国のケンタッキー州にあるヘリントン湖は、3つの郡にまたがる9平方キロメートルほどの人工湖だ。深さは76メートルと州内では最も深い湖となっており、ブルーギル、ナマズ、ホワイトバスなど多くの種類の魚が生息し、釣りのスポットとして知られている。1925年に公益事業のため造成されたというこのヘリントン湖だが、奇妙な生物の目撃例が報告されている湖でもあるのだ。
「ヘリントン湖の怪物」と呼ばれる生物は、ウナギのような体をしており、まだら模様をした魚のような肌を持っていたという。尾はやや巻いており、その体長は12~15フィート(約3・5~4・5メートル)ほどで、ボートのように速く泳ぐと言われている。
最大の特徴は、ブタのような鼻を持っているということである。そのため、ヘリントン湖の怪物は「イール・ピッグ」、直訳するとウナギブタという通称でも呼ばれている。
イール・ピッグの目撃は、ヘリントン湖の造成直後から相次いでいたようだ。1972年、湖畔に家を所有していたケンタッキー大学のローセンス・S・トンプソン教授は、幾度となくその奇妙な生物を目撃してはいたものの、正体が特定できないと報告。それを聞きつけたルイビル・クーリエ氏が教授へのインタビューを行った。「本物の怪物だと信じているか」という質問に、トンプソン教授は「ワニを見たこともない人が初めてワニを見たら怪物だと思うだろう、その意味での怪物にすぎないよ」と回答した。
その正体については、ミシシッピ川をさかのぼりヘリントン湖へ迷い込んだワニ、または北米最大の淡水魚であるアリゲーターガーの誤認ではないかという説が有力視されている。一方では、湖底の鍾乳洞に住んでいた先史時代の生物が、湖のダム工事によって浸水したことで浮上してきたのではないかという少々ロマンに寄った説も唱えられている。
この怪物がいつからイール・ピッグと呼ばれるようになったかは定かではない。現在では、ブタというインパクトゆえか、ブタの頭部にウナギ状の体というキメラめいた姿でイラストに描かれることが多い。だが、目立った報告が先のトンプソン教授以外にほぼ見られないというのも少々疑問であり、伝播によって都市伝説化しているUMAと言えるかもしれない。
およそ100年もの間、その正体が明かされることもなく語り継がれるイール・ピッグは、そのような論争とはお構いなしに今もヘリントン湖で平穏な生活を送っていることだろう。
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