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NYダウ最高値でも、ささやかれる「もしトラ」リスク。どうなる日経平均?(窪田真之)

トウシル / 2024年2月5日 8時0分

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NYダウ最高値でも、ささやかれる「もしトラ」リスク。どうなる日経平均?(窪田真之)

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
NYダウ最高値でもささやかれる「もしトラ」リスク。どうなる日本株?

日経平均反発、外国人の買いが継続

 先週(営業日1月29日~2月2日)の日経平均株価は、1週間で約406円上昇して、3万6,158円となりました。外国人投資家の買いの勢いは少し低下していますが、それでも買い越しが続いています。今年に入ってから1月26日までの外国人の買い越し額(株式現物と株価指数先物の合計)は2兆円を超えました。外国人買いによって、日経平均は堅調に推移しています。

日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と先物の合計):2022年1月4日~2024年2月2日(外国人売買動向は2024年1月26日まで)

出所:東京証券取引所「投資部門別売買動向」より楽天証券経済研究所が作成
注:外国人売買は、株式現物と日経平均先物、日経平均ミニ先物、TOPIX先物の合計。棒グラフが上(プラス方向)に伸びているのは買越、下(マイナス方向)に伸びているのは売越を示す

2024年1月の週別、外国人投資家による日本株買越・売越額と、日経平均変動幅

出所:QUICK、東京証券取引所「投資部門別売買動向」より楽天証券経済研究所が作成

 1月第2週(営業日1月9~12日)に外国人買いが急増しましたが、その後、少しずつ買いの勢いが低下しています。

 第4週(同1月22~26日)は日経平均が反落したので、外国人が売り越しになった可能性を考えましたが、実際の売買統計を見ると、外国人は3,193億円の買い越しでした。この週は、信託銀行経由の国内年金基金のリバランス売り【注】が増えたために、日経平均は反落したと考えられます。

【注】年金基金のリバランス売り
 年金基金ファンドは、株式の組み入れ比率を決めて運用している。株価の上昇が続くと、時価ベースで株式の組入比率が、基準よりも高くなる。基準からの乖離(かいり)が大きくなると、基準となる組入比率に戻すために株を売却する。これを、リバランス売りと言う。

 先週(第5週:営業日1月29日~2月2日)の売買統計はまだ出ていませんが、円安が進み、日経平均が約406円高となったところを見ると、外国人の買い越しは続いていると思われます。

米景気指標強く、ドル高(円安)進み、NYダウは最高値

 米景気が想定以上に強いことを受けて、NYダウ(ダウ工業株30種平均)は先週また最高値を更新しました。

NYダウおよび日経平均の推移:2021年1月4日~2024年2月2日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 2月1日に、1月の米国の景況をよく表すISM製造業景況指数が発表されました。49.1と、事前の市場予想を上回りました。まだ50を割り込んだままですが、持ち直しの兆しがあります。

米ISM製造業・非製造業景況指数:2020年1月~2024年1月

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 さらにサプライズ(驚き)だったのは、2日に発表された1月の米雇用統計が強かったこと。非農業部門の雇用者が前月比で35.3万人の大幅増でした。

米雇用統計:非農業部門の雇用者増加数(前月比):2021年1月~2024年1月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 雇用増加が20万人を超えると米景気は好調と判断されます。コロナショックからの回復の過程で2021~2022年は高めの雇用増加が続きました。2023年に入り、コロナで失った雇用を取り返した後は、増加数の減少が続き、一時20万人を割り込みました。

 ただし、足元、急速に雇用増加が拡大しています。2023年12月・2024年1月と30万人を超える大幅増加が続き、雇用は再び、強含んでいます。

米雇用統計:完全失業率:2021年1月~2024年1月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 このように米景気指標が予想以上に強いことを受けて、ドル高(円安)が進み、円安が外国人の日本株を呼び込む展開が続いています。

ドル/円為替レート:2021年1月1日~2024年2月2日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

ささやかれる「もしトラ」リスク

 最近「もしトラ」リスクが、急速に注目を浴びています。11月の米大統領選で、「もしトランプ元大統領が再選したら」起こるであろう混乱への不安が、「もしトラ」リスクとしてささやかれるようになりました。

 共和党の大統領候補の指名争いで、目下トランプ氏が圧倒的優勢を保っています。このままの勢いで共和党候補となり、11月の大統領選で、支持率低下が著しいバイデン民主党政権の候補者を破ることも、考えられる情勢となってきました。

 トランプ氏は、大統領時代に「米国第一主義」を打ち出して米中関係を悪化させ、パリ協定を離脱し、保護主義を強化して、世界経済や金融に混乱を与えたイメージがあります。今も、「米国第一主義」を旗印に、米国で熱烈な支持者を集めています。そのトランプ氏が再選となれば、米国第一主義への不安から、株が売られるのではないかという不安がささやかれています。

 現時点で、「トランプ氏が再選するかどうか」「再選した時にどういう政策をとるか」予想するのは困難ですが、私は、トランプ氏が大統領に再選しても、株式市場に対するリスクはそんなに大きくないと考えています。それには、二つの理由があります。

【1】トランプ氏が株式市場に与えたイメージは選挙戦の前後で大きな隔たりがあった

 トランプ氏は2016年11月の大統領選で当選しました。選挙期間中には、「もしトランプ氏が大統領になったら」株式が暴落するリスクが大いに語られていました。そしてトランプ氏優勢が伝わると不安から株が下げました。

 トランプ氏当選が伝わった後、最初に開いた東京市場では日経平均が大きく下がりました。ところが、トランプ氏の勝利宣言を聞いた後の米国市場では株が急騰しました。株式市場に期待を与える内容がふんだんに盛り込まれていたからです。以後、トランプ氏への期待から世界の株が急騰する「トランプラリー」が起こりました。

<トランプ氏の2016年11月の勝利宣言抜粋>
(1)全ての共和党、民主党の党員に対して、米国の国民として団結することを訴えたい。
(2)全ての国と共通のグラウンドを持ち、良好な関係を築いていきたい。
(3)高速道路・橋・トンネル・空港・学校・病院といった社会インフラを再建する。インフラ再建で何百万人の雇用を生み出したい。

【2】トランプ氏は、株式市場に対して友好的だった

 トランプ氏は、株式市場の動きに敏感な大統領でした。米中関係を悪化させる政策が多かったものの、米中関係悪化が原因で株が大きく下がると融和的になる傾向がありました。

 トランプ氏は、2016年の選挙戦では、労働者・低所得者の味方で、大企業・富裕層に厳しいイメージを持たれていました。伝統的な資本主義政策と異なる、社会主義的な政策を実行するイメージを持たれていました。

 ところが、大統領になってから実施した政策は、そのイメージと異なる伝統的な資本主義政策が多かったと言えます。その代表が、大企業・富裕層に有利な大型減税の実施です。トランプ政権の大型減税は、株価上昇に大いに寄与しました。

 トランプ氏が打ち出した「米国第一主義」が不安を生じましたが、孤立主義ではありませんでした。中国に敵対的姿勢を見せる一方、日本との協力関係は強化しました。

 また、ロシアのプーチン大統領に対して友好的姿勢をとっていました(それが原因でロシアゲート事件の追及を受けることになる)。また、イラン原油の禁輸を強化する一方、北朝鮮の金正恩書記長と史上初の米朝首脳会談を実現するなど、外交面で特色を出しました。

日本株押し目買い方針は変わらず

 日本株の投資判断は変わりません。日本株は割安で、長期的に上昇余地が大きいと判断しています。ただし、一本調子の上昇は見込めません。

 今年に入ってからの上昇ピッチはやや速すぎると考えています。今後、短期的に、円高などを嫌気して下落する局面もあると思います。時間分散しながら割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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2024年1月30日:強すぎる米景気。ノーランディングで成長続く?米利下げ遠のく(窪田真之)
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(窪田 真之)

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