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「TV放送を食うサブスク」の頭打ちが続く納得事情 約220万台の視聴ログでわかった視聴者ニーズ

東洋経済オンライン / 2023年12月19日 18時30分

まず有料動画配信の分析結果に着目すると、チャートが左に偏っていることがわかる。ドラマと映画といったジャンルからの乗り換えが中心で、ニュースやワイドショーといった情報系のコンテンツからの乗り換えは少ないことを示す結果だ。

次にABEMAに目を移すと、バラエティやワイドショーに対するニーズも一定カバーしていることがわかる。扱っているジャンルの幅が広く、かつ番組表に基づいた配信も採用していることの結果だろう。ただし、それでもドラマからの乗り換えが最も大きいのは有料動画配信と共通した結果だ。

対してYouTubeの分析結果が示すのは、対応する視聴者ニーズの広さだ。ドラマではABEMAより低い値だが、バラエティやワイドショーも含めてまんべんなく広いジャンルから視聴者を集めている。テレビ放送の視聴時間の74%がバラエティ、ニュース、ワイドショーであることはすでに見た。

YouTubeは対応する視聴者ニーズが広く、受動的な情報や気軽なエンタメといったテレビに対する大きいニーズも満たせている。有料動画配信が頭打ちしてきた現在でもYouTubeの視聴量が伸び続けている理由はここにあるだろう。

そしてこの分析結果は、動画配信がテレビのバラエティやニュースと同じ視聴者ニーズを満たすための方法は、テレビ放送と同じ(FASTのような)フォーマットを採用することだけではないことも示している。

YouTubeはテレビ放送とは異なるオンデマンド配信であり、番組表は採用していない。また視聴できるコンテンツもテレビ放送とは異なり、短尺中心のユーザー投稿動画だ。

それでも、YouTubeはテレビ放送でバラエティやニュースを見る視聴者のニーズをうまくつかみ、そこからの乗り換えを発生させることができているのだ。動画配信サービスがどのような視聴者ニーズを満たすかは、フォーマットやコンテンツといった外形的な要素だけで決まるわけではなく、それらを統合した視聴体験全体によって決定されることがわかる結果だ。

テレビ視聴体験のイノベーション

視聴者はなぜテレビを見るのだろうか。テレビに何を期待しているのだろうか。そしてインターネットにつながったテレビは、その期待にどのように応えられるだろうか。レコメンド、オンデマンド配信、双方向配信など、テレビで実現できることがインターネットによって飛躍的に拡大した今こそ、視聴者がテレビに期待することの本質を捉えることが必要だ。

本稿で見てきた視聴データ分析の結果は、テレビに対する視聴者の期待に、動画配信がまだ十分応えられていない領域が残されていることを示している。朝のテレビ視聴に、またニュースやワイドショーの視聴に、インターネットはどのようなイノベーションを起こせるだろうか。視聴者の期待を捉えた新しい視聴体験を自由に構想できれば、テレビの可能性はまだまだ高まるはずだ。

山津 貴之:インテージ メディアアナリスト

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