パワー半導体でもニッチを攻めるミネベアミツミ 手綱を取るのは事業売却方針を一転させた人物
東洋経済オンライン / 2023年12月22日 7時30分
一方、アナログ半導体は、音や光などの数値化されていない情報をデジタル信号に変換する役割を担う。人間の機能にたとえると、デジタル半導体は脳、アナログ半導体は視角や触覚などに該当する。製造方法も異なり、アナログ半導体で最終的な性能の優劣を決めるのは、技術者の腕だという。
「簡単に言うと、デジタル半導体は、小さなレゴブロックを並べたり積んだりして作るイメージ。アナログ半導体は、さまざまな形状の電子部品を少しずつすり合わせ、1つに形成していく」(矢野氏)
つまり、アナログ半導体は職人芸で勝負できる分野なのだ。この点、矢野氏には確かな自信と自負があった。こう貝沼氏を口説いたという。
「ミツミ電機には、すごい技術力があります。たとえ小粒だとしても、ピリリと辛い山椒のように、ニッチ分野では必ず存在感を示せます。大海ではなく、湖でいちばん大きな魚を目指しましょう」
矢野氏はもともと、半導体設計の技術者だ。1985年に日立の半導体子会社「日立北海セミコンダクタ」へ入社。当初はデジタル半導体を手がけたが、転機となったのは2004年だった。ミツミ電機が北海道千歳市の事業所を譲り受け、矢野氏も移籍。そこでアナログ半導体と出会った。
「ものすごい額の投資をしなくても、知恵と匠の技があれば生き残れる。製造する過程も面白い。部品同士が調和し、ピタッとハマって優れた物を作れた時は、本当に気持ちいい」(矢野氏)
そんな魅力に取り憑かれた男の言葉が、貝沼氏の心を動かした。貝沼氏は「アナログ半導体事業は売却候補だったが、旧ミツミ電機から素晴らしいプレゼンがあり、逆にしっかり取り組もうとなった」と振り返っている。
アナログ半導体でも買収を駆使
事業の継続が決まり、最初に設定された目標は売上高500億円。当時の規模から倍以上の数字だ。矢野氏はまず、得意のニッチ分野をさらに磨き上げる戦略をとった。2020年にアナログ半導体の国内メーカー、エイブリックを買収したのだ。
狙いの一つは、スマートフォンなどで広く使われるリチウムイオン電池保護ICの強化だった。バッテリーの劣化を防ぐための部品で当時のシェアは、ミネベアミツミが約4割と世界1位、エイブリックは約3割で同2位。買収後は約8割の世界シェアを誇り、確固たる地位を築くことに成功した。
次なる目標は売上高1000億円。これを達成するためには生産能力の増大が不可欠と考えて2021年、滋賀県にあるオムロンのアナログ半導体工場を買収。2022年には千歳事業所を含めてパワー半導体の生産能力を3倍に増強した。
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