「深刻な薬不足」に陥る薬局に考えられる解決策 全国の薬局が供給不足に陥った複雑な要因
東洋経済オンライン / 2023年12月22日 11時20分
問題は、後発薬の薬価が、毎年引き下げられる改定がされるところにあります。年々薬価が下がってしまうことで、後発薬メーカーの利幅は大きく減り、薬をいくら作っても儲からず、むしろ赤字が続く状況に追い込まれるわけです。
収益性が上がらなければ、生産能力も上がりません。高い品質を維持することも難しいでしょう。採算が見込めない薬の増産に後発薬メーカーが及び腰になるのもうなずけます。
そして日本の薬価の低さは、海外の大手製薬会社の動向にも影響を与えます。「日本は利益を期待できない、魅力が薄い市場」と判断され、新しい薬を投入する優先度が下げられ、薬不足につながっています。
もちろん、増大する医療費を抑制することも大切ですが、薬の安定供給を前提とした薬価制度の見直しも求められているのではないでしょうか。
薬不足の問題に加えて、医療業界で大きな課題になっているのが「人材不足」です。近い将来、医療現場と国民の生命に深刻な影響を及ぼすと考えられています。
近年、「2025年問題」や「2040年問題」といった言葉を耳にする機会が増えました。これらは、超高齢化社会で生じるあらゆる問題のことを指します。
医療や介護の側面でみると、高齢者が増えてニーズが高まる一方で、労働力不足がますます深刻化する恐れがあります。そのため、今のうちにさまざまな手を打っておく必要があります。
2023年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2023」においては、「持続可能な社会保障制度の構築」として、2025年問題と2040年問題を見据えた医療・介護サービスの改革が盛り込まれています。
この改革の基本方針によると、今後の超高齢化社会で、高い品質の医療・介護サービスを安定して提供するには、労働力の確保と効率化、そしてデジタル技術の導入が必要であると定めています。この改革の柱となるのが、医療DXです。
医療DXの具体的な方向性
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術の導入によって社会や生活、ビジネスのスタイルそのものを変革することを意味します。では、医療DXとはどういうものなのでしょうか。
厚生労働省がまとめた第1回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームの資料によると、医療DXとは、保険・医療・介護のすべてにおいて、デジタル技術を用いて業務効率化を進め、より良質な医療やケアを国民が受けられるようにすることを指します。医療DXは「全国医療情報プラットフォーム」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」を3つの骨格として、ロードマップを作成しています。
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