いつまでも「3年中計」を作る日本企業の大問題 前例踏襲癖から抜けられないサラリーマン病
東洋経済オンライン / 2023年12月27日 18時30分
地球温暖化など長期に及ぶ問題に直面しながらも、こうした分野で先進的な企業が現れない日本企業。その背景には1980年代以降のサラリーマンの前例踏襲癖が抜けないことがあり、その典型例が、今になっても「3年中計」を作っている思考にあると、武庫川女子大教授で、『グローバル メガトレンド10―社会課題にビジネスチャンスを探る105の視点』著者である岸本義之氏は指摘する。
成功体験=前例踏襲の癖が抜けない
近年、社会課題という言葉が多く使われるようになってきた。「地球温暖化が進んでいる」「天然資源の奪い合いが熾烈化している」「少子化・高齢化がさらに進行している」「移民が多くなって問題が広がっている」「所得格差がより広がっている」「海外企業との競争がどんどん熾烈になっている」「AIに仕事を奪われる可能性が高まっている」などが例として挙げられる。
こうやって社会課題をみると気が重くなるという人は、「サラリーマン病」の患者である危険性が極めて高い。なぜかというと、サラリーマンとして数十年を費やしてきた人の多くは、「前例踏襲」の能力だけを高めてきたため、前例のないような課題に直面しても、解決策を考えることができなくなっているからだ。
かつての高度成長時代のサラリーマンは、欧米企業という手本に「追いつき、追い越せ」と頑張ってきたのだが、1980年代以降に欧米企業を打ち負かした(ような気になった)後は、自分たちの過去の前例を手本とするようになってしまった。
1960年代のサラリーマンは、戦争の焼け跡からの復興を知る世代であったが、1980年代以降にサラリーマンとなった世代は、そうした原体験もないままに、ただ前例踏襲だけをする人生を送ってきた。
本書はあえて若い人向けにと、記して書いたのだが、それは、サラリーマン病にかかっていない世代であれば、「社会課題こそがビジネスチャンス」ということを理解してくれると考えたからだ。もちろんそれ以外にも理解してくれる人はたくさんいるだろう。
地球温暖化や天然資源の問題は、技術革新によって解決できる可能性のある課題であり、高齢化や格差問題なども、前例にとらわれない発想からビジネスモデルを構築することで解決策を編み出すことができ、ビジネスにすることができる可能性があることを。
「社会起業家」をどう思うかで世代がわかる
古い世代の中には「社会起業家」という言葉自体に胡散臭さを感じている人も少なくないかもしれない。社会課題を問題視するということは、産業化そのものを否定する思想であるに違いなく、そうしたアンチ・ビジネスの活動を行うことなのだと、解釈してしまうのであろう。しかし、社会起業家の多くは、そうしたアンチ・ビジネスの思想ではなく、むしろ社会課題を解決するビジネスを成功させれば、自分たちも儲けることができると考えている。
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