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「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出

東洋経済オンライン / 2023年12月28日 9時0分

階級や格差の固定化、社会的地位上昇機会の喪失……自由民主主義は後退している(写真:zaksmile/PIXTA)

あなたは「新しい貴族階級」か。「新しい奴隷階級」か。私たちはどう生き残るのか。階級や格差の固定化、社会的地位上昇機会の喪失がもたらす「新しいかたちの貴族制」を徹底分析した『新しい封建制がやってくる:グローバル中流階級への警告』が、このほど上梓された。同書に収録された都市計画家、未来学者のジョエル・コトキン氏による序文、およびペーパーバック版への序文を一部編集のうえ、お届けする。

最大の被害者は労働者と中流階級

本来、自分の主張の正しさが出来事によって裏付けられることは、著者にとって何よりの喜びであるはずなのだが、2020年に本書を書き終えて以来、私が目にした事態に喜びを見いだすことは難しい。

この2年間の重要な出来事、すなわち新型コロナパンデミック、世界の主要都市における混乱の拡大、ロシアによるウクライナへの残虐な帝国主義的戦争などはいずれも、私が本書の執筆を始めるきっかけとなった自由民主主義からの後退を証明するものであった。

COVID─19への正しい対応のあり方については議論の余地があるものの、実際問題として、今回のパンデミックは、アメリカのみならず世界中で、寡頭支配を続けるエリートとその他大勢のあいだの格差を広げた。最大の被害者は、どこの国でも労働者・中流階級であった。

レストランや接客業など一部の業界は、さまざまな小規模事業者と並んで、特に深刻な影響を受けた。パンデミックの発生から2年余り経った2022年4月時点でも、アメリカ国内の中小企業の3分の2は苦境に立たされており、数十万社が閉鎖に追い込まれた。特に貧困層や労働者階級の子どもたちは、学習機会を奪われ、社会的孤立に苦しんだ。

一方、大卒でホワイトカラー職にあるリモートワークが可能な人たちは、それほどの影響は受けなかった。

パンデミックによって事実上儲けていた集団もある。左派系ジャーナリストのナオミ・クラインが「スクリーン・ニューディール」と呼ぶ取り組みを推進したテックジャイアント(巨大テック企業)は明らかに勝ち組であった。

彼らは「恒久的で、収益性が見込める非接触型未来」の創造をめざしている。アップル、アルファベット(グーグルの親会社)、アマゾン、マイクロソフト、フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)は未曽有の利益を上げ、2020年7月末までに評価額の合計を2兆5000億ドル以上も上乗せした。その後、収益は悪化したようだが、これらの企業は世界で最も裕福で強大な力を維持しており、うち4社はトップ5に入っている。

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