米中双方の行動論理の背景に潜む「思考のクセ」 「敗戦国の日本」はどのように振る舞うべきか
東洋経済オンライン / 2024年1月15日 10時0分
疫病と戦争で再強化される「国民国家」はどこへ向かうのか。拮抗する「民主主義と権威主義」のゆくえは。思想家の内田樹氏が、覇権国「アメリカ」と「中国」の比較統治論から読み解いた著書『街場の米中論』が、このほど上梓された。本稿では、世界中で「内戦」が急増している現状とその原因、アメリカでも内戦が勃発する潜在性が高まっている状況を分析・警告した『アメリカは内戦に向かうのか』(バーバラ・F・ウォルター著)の訳者・井坂康志氏が同書を読み解く。
「想像力の栓」としての読書
型にはめないこういう本が好きだ。型にはめないどころか、いつの間にか脳内にねじこまれたきついキャップを抜いてくれる。どんな読み方をしても怒られない。それは「想像力の栓」としての読書である。ぴんとこないところを飛ばして読もうが、何度も線を引いて考え込もうが自由だ。ネットを含むほかの「慌ただしい」情報源とは一味違う。
ただし、いささかの難点もある。その記述の1つひとつは固有の洞察と理解を与えてくれるように私には思える一方、あまりに「自由」すぎて、風をつかまえるような困難も覚える。いつの日か著者による全集(もしくは著作集)が編まれるとき、出版社の担当者は、各巻の分類にそうとうに苦労するだろう(大きなお世話だが)。
そこで、私としては、いくつか印象に残ったポイントを拾ってみることで書評に代えたいと思う。
米中関係とは、しかるべき歴史の積み重ねの結果できた「強い」論理の1つである。現在、二国関係は世界の巨大変電所の役割を果たしている。そこから送電されたエネルギーがほかの多くの国や地域に否応なしに変えてしまう。
もっぱら著者が関心を示すのは、国家としての米中関係よりも、メタ・インフラとしての米中関係のように見える。現代を取り巻く問題群の背景には、米中を取り囲む膨大なフローの関係性が控えている。そうした全域的なフローが局所化と渋滞を招くのは、政治でも経済でも軍事でもない。両者の集団主観的な思考の「癖」なのだ。
「癖」を考えるには、固有の文脈にフォーカスする視点も必要になる。
戦後は、「世界のアメリカ化」と「アメリカの世界化」が並行的に起こった時代である。このような現象は、何か単一の論理に帰着するものではなく、2つもしくはそれ以上の論理の間で揺らいできた。
「アメリカは建国から250年かけて、『政教分離以前の段階』に退行してしまったかも知れない」(p.80)
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