「GDP4位転落」日本に数学嫌い克服が必要な理由 「何の役に立つのかわからない」というイメージ
東洋経済オンライン / 2024年2月20日 12時20分
日本のGDPは、1968年から2009年までは1位のアメリカに次いで2位だったが、2010年に中国に抜かれ3位になり、2023年は4位になることが今月15日に内閣府によって公表された。また、IMF「国際通貨基金」は2026年にインドにも抜かれると予想している。
またスイスの国際経営開発研究所(IMD)が公表した「世界競争力年鑑」によると、日本は1989年から1992年まで1位を維持していたものの2023年版では35位と過去最低を更新した。このような状況を考慮したかのように、政府の教育未来創造会議は理系分野を専攻する大学生の割合を現在の35%から50%に増やす目標を掲げ、理系学部設置や理系学生への奨学金充実を目指す関係省庁による具体的対策が動き始めた。
現在の日本の出生数は年70万人台に落ち込み、第1次ベビーブーム世代のピークの270万人、第2次ベビーブーム世代のピークの209万人と比べるとあまりにも少ない。それだけに、理系分野の基礎として必須の数学に関する「数学嫌い」を減らし、目覚めた人たちが理系分野で活躍する人材に育ってもらうことが大切な課題であろう。
「数学嫌い」対策が必要な理由
ところが、TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)等の調査結果でも、日本の青少年の「数学嫌い」の割合は、若干は改善されてきたものの、昔から高止まりしたままで推移している。理系学部で定員割れの危機に瀕している大学もいくつかある状況では、抜本的な「数学嫌い」対策を施さない限り、理系分野の充実は絵に描いた餅になるのではないだろうか。
GDPが1位のアメリカは、1983年に「A Nation At Risk」(危機に立つ国家)を教育省が発表した。その後、全米科学アカデミーの研究部門であるNRC(国家研究評議会)は「数学的な問題解決の方法を学ばなければ将来、世界から取り残される」との危機感を打ち出した報告書を出した(朝日新聞1989年1月28日夕刊)。さらに1997年には、教育省は「Mathematics Equals Opportunity」(数学により広がる将来のチャンス)を発表し、数学の学びの意義を訴えた。
その80年代から90年代にかけて日本では反対に、「(技術立国として)経済成長を遂げた日本は、これからは文化だ」という発言が大手を振って歩き、「ゆとり教育」に突入したことは残念でならない。
「ゆとり教育」での数学授業時間
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