恩田陸作品史上「もっとも美しくヤバい天才」爆誕 萌え保証!一人の天才少年をめぐる「春」の物語
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 12時30分
絢爛かつ耽美、まるで少女漫画のようでした……と、読了後のインタビュアーが胸いっぱいに嘆息すると、恩田はカラカラと笑った。「少女漫画的な耽美ですよね。やはり美しくなきゃ。子どもの頃から、妄想が尽きたことはないんです。小学校くらいから、漫画やお話などなんやかやと書いていたので」。
少女漫画のみならず、少年漫画にも没頭する子どもだったという。萩尾望都に山岸凉子、一条ゆかりや美内すずえ、石ノ森章太郎そして手塚治虫……。「ドラマティックな、ザ・ストーリー漫画が好きで」(恩田)。恩田が得意とする美的な世界観、“ドラマが起きないわけがない”ワクワクする予感をはらむ舞台設定や抒情的なストーリーラインは、そこで培われたのかもしれない。
優れたエンタメストーリーテラーである恩田の作品が取材する世界は、驚くほど多岐にわたる。演劇、音楽、学園、英国貴族の館、民間伝承や特殊能力、都市伝説、テロやAI、そして無差別殺人などなど。さまざまな舞台設定やキャラクターを操ってストーリーを編み続ける、尽きぬ想像力の源はなんなのだろう。
実は、恩田は圧倒的なインプットをする作家としても知られる。それは読書に限らず、映画などの視聴や観劇、あらゆる“本物”を貪欲に摂取していくという方法論、いや性分のようだ。「時間が足りないですね。本は寝る前は必ず1冊読むようにしています。2時間くらいで1冊読めるので、そのまま寝落ち。本や映画、準備している小説によってはオーケストラやバレエも、たくさん摂取しないといけないのですごく忙しいんです。だから、テレビドラマを見始めてしまったら終わりだと思って、それはなるべく避けてる(笑)」。
今作『spring』執筆に当たっても、かなりの量のバレエ公演や映像を見た。「2014年に、編集者さんと次はバレエを書きましょうという話になって、クラシックバレエの全幕ものを観始めました。それまでミュージカルやコンテンポラリーバレエは好きでよく観ていましたが、まだ書けないと言っているうちに、結果的に6年たっぷり観て」。
「書く」と「考える」を同時進行
「ある程度観て、蓄積しないと書けないんですよね。インプットしないと書けない部分もあるし、寝かせる必要もある。舞台を観ると、その場その場の印象は反芻するんです。かといって、反芻して満足しちゃいました、では書けなくなるし。執筆に取り掛かったのも、書くべき作品が“見えた”というよりは、さすがにそろそろ書かねばやばいなと、見切り発車です。書きながら考えていくというのを同時に並行してやっていました」
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