1割が白旗、「自治体システム大移動」で広がる混乱 171団体が「2025年度までの移行は困難」と表明
東洋経済オンライン / 2024年4月1日 7時10分
総務省の担当者は、「行政区を持つ政令市は普通の自治体とは異なり、区をまたぐ転出入でも従前のデータを引き継ぐといった例外的な運用なども行っている。通常とは異なるカスタマイズが入った非常に特殊なシステムを構築しているケースがある」と説明する。
一方、全自治体の半数を占める小規模な町や村で「移行困難」と回答した自治体はわずかで、町が4.6%、村が3.2%にとどまった。
もっとも、こうした数字が実態を映し出しているか疑問視する声は多い。
システム移行の啓発を行う総務省の三木浩平デジタル統括アドバイザーは、「勉強会に行くと、質問が出る団体はおおむね中核市以上の大きな自治体に限られており、町や村の担当者からは反応がない。ベンダー任せになって、今回の事業で非常に大きな影響を受ける状況を理解されているか不明だ。『間に合う』と言っていたベンダーが急に白旗を揚げ、ドミノ倒しで遅れるケースも起きうる」と懸念を示す。
技術的な話がわかる職員は誰もいない
実際、三木氏の懸念は現実になりかねない状況となっている。
総務省が2022年度に行った調査では、町村でDXや情報政策を担う職員の平均人数は2.4人。システムを1人の職員に任せたり(「ひとり情シス」)、専属職員を置かなかったりする自治体は全体の12%に上る。
中国地方の町役場の「ひとり情シス」担当者は、「技術的な話がわかる職員は、私を含め正直役場に誰もいない。システムのことは、ほとんどベンダー任せだ。周囲の同規模自治体も同様の状況で、五月雨に『(2025年度までの移行は)間に合わなくなりそう』との話も聞いている」と打ち明ける。
「政府が法律で決めたのでやらざるをえないが、住民にとっての利点が見当たらず、はっきり言って何のためにやるかもよくわからない」(同担当者)
たしかに、行政の内輪の話である今回のシステム移行では、直接的に住民サービスの利便性向上につながるわけではない。そもそも、どのような狙いがあり、なぜ始まったのか。
国が法律で自治体に義務付けた「システム標準化」とは、簡単に言うと、自治体ごとに違っていたシステムの仕様を、全国共通のものに改める取り組みだ。個別仕様のシステムを使う自治体は従来、国の制度改正のたびにシステムを独自改修していたが、標準化によって国が示す共通基準に基づいた対応ができる。そうすれば、運営効率化やコスト削減を図ることができるというわけだ。
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