なぜ「厚底シューズ」を見ると気分が悪くなるのか 日本企業が競争で勝てなかった根本原因は何か
東洋経済オンライン / 2024年4月6日 8時30分
朝、まだ桜が咲いていない公園に、ジョギングの人々が湧き出てくるより前、日の出前の時間に散歩に出かけた。
花見客によって汚染された公園も嫌だが、毎朝のジョギングの人々を見るのも苦痛だ。なぜなら、最近は彼らのほとんどが厚底シューズを履いているからだ。あれを見ていると、散歩で得られ始めた穏やかな心が失われる。
厚底シューズをめぐる2つの「問題」
なぜなら、あれは価格は高いのに耐久性は極端に低く、さらにほとんどの人にとって身体に悪く、レースの記録も悪くなるからだ。ああ、すぐさま「そのシューズを脱ぎなさい」と言ってあげたい。その衝動を抑えるのに七転八倒して、気分と体調を悪くして、私は家路につくことになる。それで、人気(ひとけ)のない夜明け前の散歩をしているのだ。
問題その1。この手のシューズはプロ専用である。
そもそも、ランニングシューズにカーボンを入れて、その衝撃を緩和するために分厚く超軽量のクッション材を追加した“アツゾコ”(厚底)シューズを開発したナイキの意図は何か。それは、ケニアの英雄であるエリウド・キプチョゲ選手が人類初の「マラソン2時間切り」を実現するためだった。
要は、キプチョゲ専用シューズだったのである。その後、アフリカ以外のアスリートにも提供し、日本では大迫傑選手が早くからユーザーとして開発にアドバイスをしていた。例えば、初期にフィット感を高めるためのアッパーの素材が雨中のレースだと重くなるので、改善するよう指摘したことは有名である。メーカーは彼らの協力を得て、超ハイレベルアスリート専用シューズを生み出したのである。
車でいえば、F1用のレーシングカーを公道で素人が運転することは危険すぎるように、カーボンプレート厚底シューズはアマチュアランナーにとってはリスク以外の何物でもない。記録上のメリットも、1キロ3分ペース前後で走るのであれば大きいが、遅くなるにつれてデメリットがメリットを上回るようになるから、要は、ほとんどの人にとってはよいことがないシューズなのだ。
問題その2。であれば、なぜみんな買うのか?
自分に向かないシューズを買う。なぜなら、消費者とは「ほとんど何も理解していない人々のこと」だからだ。現代の商品のほとんどは、消費者にはほぼブラックボックスだ。どうやって作られているかも知らないし、本当のコストも知らない。
行動経済学的「非合理性」とは?
しかし、それ以上に問題なのは、自分に最適な商品がわからないことであり、自分に本当に必要なものがどれかもわからないし、さらに自分が本当は何を欲しているかすら知らないのだ。だから、はやっているシューズを買う。ブランドで買う。イメージで買う。印象で買う。
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