田中均が予測 「日本が備えるべき地政学リスク」 世界の構造変化は9.11同時多発テロから始まった
東洋経済オンライン / 2024年4月15日 7時20分
米欧がウクライナ支援をいつまで続けられるのかという疑問もある。トランプ大統領が再登場すれば再び米欧の連携は崩れる。G7(主要7カ国)の対ロ経済制裁は、中国やインド、さらには「グローバルサウス」といわれる主要途上国がロシアとエネルギーを含む経済関係を維持していることにより、事実上効果が薄れている。
また、ロシアとイランや北朝鮮との軍事協力関係も強化されつつある。中東ではハマス、ヒズボラ、フーシ派といったイランの支援を受けたイスラム過激軍事集団がイスラエルや米国を標的に軍事作戦を展開している。
現段階ではイランはイスラエルや米国との正面切った対決に進むのではなく、ロシア、中国との協力関係を強化して米国の影響力を排除することを企図するのだろう。
核開発のドミノ
一方、東アジアでは日米の対中戦略が大きな意味を持つ。安全保障面については、日米の統合的抑止力の向上を図ると同時に、台湾や朝鮮半島問題も念頭に中国との安保対話を継続強化していくべきだろう。
朝鮮半島について中国は、北朝鮮の核開発は韓国や台湾にも核開発のドミノを起こしうるとして警戒的であり、また何よりも朝鮮半島で戦争が起きることは避けたいと考えているはずだ。ロシアと結託し、北朝鮮を支援することには慎重だろう。日米は朝鮮半島の非核化について中国と協力する余地を探求するべきだ。
日本は東アジアのさらなる緊張を避けるため、米国との同盟関係の強化だけではなく、対中戦略をよく練っていく必要がある。日本が政治経済面で米国につねに同調する必要はなく、分断を避ける意味でも中国を関与させる政策を取っていく必要もあるだろう。
田中 均:日本総合研究所 国際戦略研究所 特別顧問 前理事長
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