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激しく扉を叩いて…夜中「紫式部」訪れた男の正体 「布一枚残して消えた」空蝉と紫式部の共通点

東洋経済オンライン / 2024年4月21日 14時0分

(イラスト:ならネコ/PIXTA)

事実は小説より奇なりという有名な言葉がある。

それはバイロンというイギリスの詩人の作品、「ドン・ジュアン」の中に登場する一節から生まれた表現だそうだ。確かに、世の中に起きている出来事は、人間の想像を度々超えてしまう。そればかりか、小説家たる者は自らの体験や日々飛び交うニュースなど、身辺の珍事に対して敏感で、現実に基づいた、奇妙かつ面白いネタをつねに物語の中に忍ばせている。

紫式部本人に似ている「登場人物」は?

古典の王様とでもいうべき『源氏物語』もしょっちゅうリアルライフにインスピレーションを受けていると言われてきた。桐壺帝のモデルは醍醐天皇なのではないかとか、光源氏は、好色放蕩な美男・在原業平にまつわる武勇伝を基に創作されたとか。私たちですら、物語の向こうにある現実世界に興味津々だが、当時の事情を知っているだけに、同時代の読者にとってそれはさらにエキサイティングな読書体験だったに違いない。

そこで、やはり気になる。『源氏物語』のページを彩る数百人のキャストの中には、作者本人に似ている人物がいないか、と。

紫式部はすべての登場人物になりきって、彼女の心の声は幾度も和歌などから滲み出ているように感じる。しかし、人妻ゆえに愛を拒絶した女性・空蝉の巻を読んでいると特に、作者式部のことを思い合わせずにはいられない。

空蝉は光源氏を振った最初の(数少ない)女君だ。「NO」と言われた経験がほとんどない我らが源氏にとって、それは苦い記憶として深く脳裏に刻まれると同時に、物語における印象的なエピソードを作り上げている。そんな忘れがたき空蝉は、紫式部によく似ているのだ。

空蝉は桐壺帝に入内する予定だったのに、父親の死去によって没落してしまい、伊予国(現代の愛媛県)を管轄する年老いた官僚の後妻になった経緯が語られている。つまり、彼女は、学者肌の父の元に育った紫式部と同じく、中流階級というか、中の下くらいのランクに属していたことになる。

年の差婚も作者と同じだ。紫式部は夫・藤原宣孝とは親子ほどの年齢差があって、彼には複数の妻がいたそうだ。さらに宣孝の長男は式部とほぼ同い年だったと同様に、空蝉とその義理の娘・軒端荻(伊予介の先妻の娘)も同年代という設定になっている。

こうして見ると、空蝉の待遇や素性は作者とかなり似ていることは一目瞭然だが、それは偶然だろうか? 紫式部は、布一枚を残して、恋を諦めた空蝉の物語に一体どのような思いを込めたかったのか、読めば読むほど妄想が膨らむばかりである。

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