65歳以降も学び続け元気な人と学ばない人の差 記憶力の衰えでなく好奇心の衰えこそが大問題
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 19時0分
日本で年金を受け取れるようになる年齢は原則として65歳。ここから事実上の「老後」が始まると言っても過言ではないでしょう。シニアになると身体のさまざまな部分が衰えてきますが、知的能力が低下して新しいことを学べなくなるかというと決してそんなこともありません。
「シニアにとって勉強の妨げになりうるのは、記憶力よりも好奇心の低下です」
こう話すのは、経済学者として日本経済を観測し続け、大ベストセラー『「超」勉強法』をはじめ、独自の勉強法を編み出してきた経済学者の野口悠紀雄氏。「人生100年時代の勉強法」を伝授した『83歳、いま何より勉強が楽しい』より一部抜粋、再構成してお届けします。
好奇心があるから研究する
好奇心こそ、さまざまな知的作業の源泉です。2021年のノーベル物理学賞受賞者の真鍋淑郎博士も、それを強調していました。まったく賛成です。
私がとくに強調したいのは、好奇心があるから仕事をし、そして仕事をするから好奇心が生まれるということです。一日中テレビを見ていては、好奇心は湧かないでしょう。
そして、書いたものを読んで貰って評価されることほど、嬉しいことはありません。私は、この中毒症状になっているのではないかと、最近思っています。何を取り上げられてもよいから、書く仕事を取り上げないでほしいと、心の底から願っています。
好奇心は勉強の最大の原動力です。知識が増えると、好奇心が高まり、さらに勉強したくなります。
「知りたい」という欲求は、人間の本能です。なぜなら、人間は力ではなく、知的能力によって他のあらゆる動物よりも優れているからです。
ところで、人間は生まれたときから食物連鎖の頂点に立てるわけではありません。生まれたときの人間は、他の動物とは異なり、能力がほとんどありません。肉体的能力も低く、知的能力も非常に低いのです。
そのまま一人で森の中に放置されれば、他の動物の餌食になるか、または死亡します。肉体的能力は時間と共に向上しますが、知的能力の多くは学習によって得られます。人間だけが勉強によって進歩します。このことから、勉強は人間を特別な存在にしている要因であることが分かります。
人間は人生の多くを勉強に費やしています。大学まで進学する場合を考えると、0歳から22歳までが学習期間、22歳から64歳までが労働期間、そして65歳以降が引退後の期間となります。人間は生涯の4分の1を学習に使っているのです。大学院まで進むと、学習期間は3分の1にも延びます。このような長い期間を学習に費やす生物は人間の他にはいません。
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