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香港税関が摘発、過去最大級「黄金密輸出」の手口 重量146kg、時価18億円超を空気圧縮機に偽装

東洋経済オンライン / 2024年4月26日 18時0分

金地金の売買に課税されない香港は、密輸グループの輸出拠点になっているとされる。写真は香港国際空港で取り締まりにあたる税関職員(香港税関のウェブサイトより)

世界的な地政学リスクの高まりなどを背景に、金(ゴールド)の国際価格の高騰が続いている。そんな中、香港政府の税関が過去最大級の金の密輸出事件を摘発した。押収された黄金の重量は約146キログラム、時価ベースの価値は約9490万香港ドル(約18億3966万円)に上る。

【写真】密輸グループが金で鋳造した空気圧縮機の「部品」

香港税関が4月8日に発表した事件のあらましによれば、香港国際空港の税関分署が3月27日、申告書類に「空気圧縮機」と記された疑わしい貨物を検査した。するとX線検査装置により、貨物の内部に異常に密度が高い部分が存在することが判明した。

密輸出の目的地は日本

問題の貨物は、2つの大型の木箱に空気圧縮機が1台ずつ収められ、総重量は775キログラム。香港から日本に向けて空輸される予定だった。

これらの空気圧縮機は外観に不自然な点は見当たらなかったが、税関職員は異常の所在を確認するために分解を決断。まず1台目の空気圧縮機からモーター、ポンプ、フィルターなどの主要ユニットを取り外し、X線検査装置にかけ直して詳しく調べた。

すると、密度が最も高い部分はモーターの内部にあることがわかった。税関職員がモーターを分解すると、内部の構造が一般的なモーターとは異なっており、疑惑が深まった。

税関職員はさらに分解を続け、歯車などを外してモーターのコアを取り出した。すると、その両端に不自然な接着剤の跡が見つかった。次に小型のハンマーを使って調べると、軽く叩いただけで表面に凹みがつき、このコアが比較的柔らかい金属で作られていることが判明した。

事ここに至り、税関職員はこのコアが本物ではないと確信。表面の銀色の塗装を削り取ると、下から金色の地肌が現われたのだった。

その後、税関職員はもう1台の空気圧縮機も分解して徹底調査。モーターのコアだけでなく、ポンプ内部のスクリューローターも金の鋳造品であることを発見した。

1億6000万円超の脱税企む

「税関の目をすり抜けるため、空気圧縮機の部品を金で鋳造するという、密輸グループの手の込んだ偽装工作だったと確信している」。香港税関空港分署の責任者は、事件の背後をそう分析する。

香港税関で組織犯罪の捜査を担当する劉玉龍氏は、上述の空気圧縮機の輸出手続きにかかわった自称会社役員の31歳の男性を、4月3日に逮捕したことを明らかにした。

密輸グループは事業実態のないペーパーカンパニーを設立し、国際物流会社に輸送を委託することで、空気圧縮機(の内部の金)を日本に持ち込もうとしたとみられている。仮に密輸出が成功していたら、脱税額は約840万香港ドル(約1億6283万円)に上った可能性がある。

(訳注:日本国内では金地金の売買に10%の消費税がかかる。そのため、海外の非課税の国・地域で調達した金地金を日本に密輸しようとする犯罪が増えているとされる)

(財新 駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は4月9日

財新 Biz&Tech

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