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日銀がこれほどまで円安を「無視」する3つの理由 「為替は管轄外」では、結局うまくいかない?

東洋経済オンライン / 2024年5月4日 9時30分

この結果、金融資産市場においては、変化はあっという間に実現する。実物経済(あるいは実体経済)との、変化が実現するスピードの差は、とてつもなく大きくなる。

そして、この差が問題で、経済に決定的な影響をもたらす。

金融市場は、実体経済が変化する前に変化してしまう。そして、この変化のスピードが21世紀になってさらに加速しているのだ。この結果、実体経済が中心で、それをサポートする金融市場という本来のあり方から、金融市場の変化が実体経済を振り回し変動させるという状況が定着してしまっている。これが新しい世界だ。

それにもかかわらず、日銀は(アメリカの中央銀行も)まだ20世紀の経済世界に生きているから、この変化の加速を無視し、実体経済の変化を中心に観察している。この結果、中央銀行が、実体経済の物価だけを注視し、実体経済を調整しようとしても、金融市場を直接にコントロールの対象に入れなくては、うまくいかないことになる。金融市場における最も重要な価格である為替をコントロールの対象外にしていては、経済運営はうまくいかないのだ。これが第2の理由である。

一方、21世紀は格差拡大が加速すると同時に、金融資産市場の規模が実体経済に比して急速に拡大しているという現実がある。

新しい現実を直視しない中央銀行

このような状況において、金融政策における大規模緩和の影響はどこに行くか。もちろん、金融市場である。インフレを起こそうとして金融緩和をすれば、実物経済は動かず、金融資産市場だけがバブルになる。

このバブルにより、富裕層と呼ばれる新成金資産家たちがぜいたく消費を増やすが、それは広がりを持つはずがない。住宅・土地価格は上昇し、庶民は家が買えなくなるし、高額品、レジャー品は金持ちの独占状態になる。

彼らのぜいたく消費に企業もターゲットを絞るが、こうした新富裕層は、新製品、画期的なモノ、流行モノなどに夢中になるから、物価指数は上がらない。なぜなら、物価指数に組み入れられないモノだけが高いからだ。例えばトヨタ自動車のレクサスハイブリッドから、テスラに乗り換えたときに、物価指数は上がらない。

レクサスハイブリッドがテスラに対抗するには、レクサスも全面的にEV(電気自動車)に変更するか、ハイブリッドの値下げあるいはサービスや質の向上で対抗するから、むしろ物価指数は下がる可能性すらある。

資産市場の影響を受ける物価指数は、住宅部分だけだ。だから近年、物価水準の動向は、世界的に住宅価格の影響が大きくなっているのだ。この結果、金融政策の影響はほとんど資産市場に吸収され、実体経済への影響は資産市場経由のものがほとんどであり、二次的なものであるから小さいうえに資産市場の変動には大きく及ばない。そして、景気が過熱しても、物価はそれほど上がらないことになる。

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