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史上最悪の金融詐欺が仕掛けた「一貫性の罠」 「リスクなし」「損しない」という甘いカラクリ

東洋経済オンライン / 2024年5月15日 9時0分

詐欺師の表の顔は「一見普通の人」(写真:kai/PIXTA)

「話がコロコロ変わる人は信用できない……」は、洋の東西を問わず、人間の真理であるが、これを逆手に取るのが、詐欺師だ。一貫性がある話をして相手を信用させて、コロッとだましてしまう。多くの人は「一貫性を好む」から、話に筋が通っているだけで、詐欺師を信用してしまう。

このように一貫性は悪用されやすい。また変化のスピードが激しい現代では、一貫性にこだわると、取り残される危険性をはらむ。心理学者のダニエル・シモンズ、クリストファー・チャブリス両氏は、アメリカで話題沸騰の最新刊『全員“カモ”』で一貫性のパラドックスを指摘し、悪用されないために、その対極概念である「ノイズ」を考慮せよと提唱している。

人は損する可能性があるゲームをしない

人は、高配当が見込めても危険な賭けを避けたがる。儲かる喜びよりも、損失を出す心痛のほうが大きいからだ。

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株式市場と似たところのあるコイン投げの賭けを想像してみよう。表が出たら10ドルもらえるが、裏が出れば損をする。損がいくらならゲームをやってもいいと思うだろうか?

資金に余裕があり、長時間ゲームを続けられるなら、裏が出たときに9.99ドル損しても問題ないだろう。くり返しすればコインを投げるたびに平均0.01ドル儲かることになるからだ。

ところが、たいていの人は5ドル程度と答える。0ドルと言う人も多い。要は、損する可能性があるなら、ゲームをする気などないのだ。

損失のリスクはどんな合法的な投資にもつきものである。こうしたリスクを嫌う人々がバーニー・マドフの提案に群がった。それは、負ける年のない細く長く安定した年間リターンだった。

ウォール街でマドフが運営していたインチキ「ヘッジファンド」は、おそらく過去最大かつ最長記録のポンジ・スキームだろう。ポンジ・スキームは、今では、後から参加する出資者の金を既存の出資者の配当金に回す投資詐欺の一種として定義されるようになった。

プロの投資家を信じ込ませたカラクリ

詐欺が明るみに出てファンドが閉鎖される2008年まで、マドフは顧客の金を実際には運用していなかった。名だたる投資家やセレブリティたちが長年にわたり約200億ドルを彼に預け、取引明細書によれば、閉鎖したときのファンドには約650億ドルがあるはずだった。しかし、実際には2億2200万ドルしかなかった。

マドフの詐欺は各方面で詳細に報じられたが、そのしくみやそこから学ぶべき教訓については多くの誤解がある。マドフは突飛な率の運用益を約束しなかったし、損失に対する保証もしていない。彼の投資家たちは非常に世慣れているため派手なポンジのやり口にはひっかからないからだ。

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