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企業にとって「利益の追求」だけが美徳なのか? 企業と世界の関係という歴史から得られる教訓

東洋経済オンライン / 2024年5月17日 10時20分

歴史を振り返ると、かつて企業は利益だけを追求する存在ではなく、共通善を促進するという公的な目的を持った、公的な事業体でした(写真:tadamichi/PIXTA)

企業は世界の動向につねに多大な影響を及ぼしてきた。そして企業は、誕生した当初から、共通善(社会全体にとってよいこと)の促進を目的とする組織だった。しかし今、企業はひたすら利益だけを追い求める集団であり、人間味などとは無縁のものであると考えている人は多い。では、企業はどこで、どのように変節してしまったのか? 今回、古代ローマの「ソキエタス」から、現代の「フェイスブック」まで、8つの企業の功罪を通して世界の成り立ち知る、『世界を変えた8つの企業』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

企業が正しい方向へ進むためには?

企業に共通善を促進させるためには、具体的にどういう政策を取るのが最もいいのか。これは難問だが、この問いを考えること自体が、正しい方向へ進む第一歩になる。

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ヘンリー・フォードは、どうすれば社会全体と従業員の両方を幸せにできるかとみずからに問い、安価な車と高い賃金という答えにたどり着いた。グレンビル・ドッジは、米国社会には大陸横断鉄道が必要だと確信し、鉄道そのものを犠牲にしてでも、コストを切り詰めて株主に過剰な配当を支払おうとするユニオン・パシフィック鉄道のほかの重役と闘い続けた。

もうひとつ、同じぐらい重要なことがある。それは共通善については、答えるのがむずかしい問いがある一方、答えが明白な問いもあるということだ。

投資家の無知につけ込んで、利益を貪る企業は、間違っている。自社を倒産させておいて、経営者に大金を支払う企業は、間違っている。環境への悪影響があることを隠す企業は、間違っている。顧客のデータが盗まれたときに見て見ぬふりをする企業は、間違っている。


重役たちに自分の行動や自社の行動が他者にどういう影響を及ぼすかを考えさせるのは、企業の本来の目的と合致している。重役陣がそのような観点を持つことで、企業が直面する倫理的な問題のすべてが解決するわけではないが、それでも多くの問題は解決するだろう。

一方、利益を追求すれば、結果的に必ず社会全体の利益を増進するという盲信は、誤りでもあれば、危険でもある。誤りだといえるのは、あらゆる分野において、利益を生む戦略の中には社会を害するものがあるからだ。

フェイスブックは広告主を引き寄せるために、中毒性の高いサイトを作ったが、デマや対立を煽る投稿であふれかえったサイトによって、社会は損なわれることになった。

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