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北海道新幹線「札幌延伸延期」で泣く人、笑う人 工事で死亡事故多発、安全とスピードの両立を

東洋経済オンライン / 2024年5月20日 6時30分

北海道新幹線のトンネル工事現場で、貫通の瞬間を見守る作業員や関係者たち(記者撮影)

「トンネル工事に遅れはつきもの。掘ってみないとわからない」――。トンネル工事に従事する鉄道関係者に話を聞くと一様にこんな答えが返ってくる。

【写真を見る】2022年10月に貫通した北海道新幹線・国縫トンネルの長万部側坑口、2023年3月の豊野トンネル貫通の瞬間

トンネル掘削に伴う大井川の水資源や南アルプスの生物多様性に与える影響を理由に工事が始まらず、2027年の開業を断念したリニア中央新幹線に続き、北海道新幹線もトンネル工事の遅れを理由に、2030年度札幌延伸の延期に追い込まれた。北海道新幹線の整備を行う鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、鉄道・運輸機構)の藤田耕三理事長が「2030年度の札幌開業が困難である」と5月8日、斉藤鉄夫国土交通大臣に報告した。

「開業前倒し」が一転

新函館北斗―札幌間の着工は2012年。このときの計画では2035年度の完成・開業を目指していた。しかし、早期開業を熱望する地元の声を受け、2015年の政府・与党申し合わせで開業を5年前倒しして2030年度(最長で2031年3月)とすることが決まった。

このころ札幌市は2026年冬季オリンピック・パラリンピックの招致を表明していたが、2018年平昌、2022年北京に続けて3大会連続してアジアで開催するのは難しいという判断から招致目標を2030年に切り替えた。地元の間では、「新幹線開業をさらに1年前倒しして、オリンピックに間に合わせてはどうか」という威勢のいい意見すら上がっていた。

ところが、2020年10月に風向きが変わった。北陸新幹線・金沢―敦賀間の工事が計画よりおよそ1年半遅れており、2022年度末の開業には間に合わないことが明らかになったのだ。

その後の調査で、2019年10月の時点で工事現場サイドが「遅延回復は困難」と報告していたものの、鉄道・運輸機構の大阪支社は本社に対し、「開業に間に合う」と報告していたなど、機構内の連絡やチェック体制に不備があったことが明らかになった。結局、北陸新幹線の敦賀開業は1年遅れの2024年3月となった。開業が間近に迫った段階での工事遅れの発表は地元の盛り上がりに冷水を浴びせた。

北陸新幹線の反省を生かし、北海道新幹線は早い段階で精査の作業を行うべく、国は北海道新幹線・新函館北斗―札幌間の整備に関する有識者会議を2022年9月に立ち上げた。

会議を重ねるにつれ、北海道新幹線でも工事が遅れ、工事費用が膨らんでいる実態が明らかになってきた。渡島トンネルでは掘削に伴い発生する土砂の受け入れ先の確保が難航しているほか、地質的に軟弱な区間が多く追加のトンネル補強工事が必要になり、現状で3〜4年の遅れが発生しているというのだ。

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