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レアな「有料の急行」 元“通勤電車”で中身は“特急”!? 埼玉の至宝「秩父路」に乗ってみた

乗りものニュース / 2024年5月11日 7時12分

秩父鉄道の有料急行「秩父路」に使われる専用車両6000系電車(安藤昌季撮影)。

埼玉県の秩父鉄道には今や珍しい有料の急行列車が走っています。1969年から運行されており、今年で運行開始55周年。専用車両も使われる急行の今を見てきました。

1日2往復のみ

 かつて日本全国を走っていた有料の「急行」列車。その大半が廃止され久しいですが、現在も埼玉県内で運行される有料急行があります。
 
 それは秩父鉄道の羽生~三峰口間を走る急行「秩父路」です。同鉄道は全線で71.7kmと、地方私鉄としてはかなりの距離を持ち、「秩父路」も全線を走ります。

「秩父路」は、平日に影森~熊谷間を1日2往復、土休日に羽生~三峰口(上りは影森~羽生)間を1日2往復運行します。全線を通しで走る「秩父路3号」の場合、所要は1時間40分。停車時間を含む平均速度である表定速度は43km/hと、高速ではありませんがクロスシートの専用車両6000系電車を投入し、平日には普通列車の追い抜きも行います。

 その歴史は1969(昭和44)年に遡ります。運行区間は熊谷~三峰口間で、300系電車にて運行されました。300系は座席間隔1500mmと国鉄急行形よりも広いクロスシートを備え、トイレも備えていました。「秩父路」運行開始後は専用車両として、1992(平成4)年まで使われています。

 2代目の専用車両は、元・国鉄急行形である165系電車を改造した3000系電車です。前面非貫通化、トイレ撤去、デッキの仕切りドアの自動化を行い、1992年から2006(平成18)年まで使われました。3000系は3編成が導入されたため、急行は増発も可能となり、羽生駅への乗り入れも実現しました。

 2006年に3代目専用車両として登場したのが現在の6000系です。1979(昭和54)年に製造された西武鉄道新101系電車を改造しています。もともとは3扉のロングシート車でしたが、中央扉を埋めて2扉としたうえで、西武鉄道10000系電車「ニューレッドアロー」に装備されていたリクライニングシートを取り付けました。

終点まで乗る人は少ない

 リクライニングシートは回転機構を固定され、ボックスシートとして設置されています。戸袋窓部分は向かい合わせではなく、集団見合い式の2人掛け。埋められた中央扉部分は大型の固定窓となっており、座席が特急形のため優等列車らしい区画です。それ以外の座席は元・通勤形らしく、窓が開閉できます。運転席の後ろにも座席はありますが、前面展望は困難です。

 それでは、今や全国的にも貴重な有料急行の利用はどの程度あるのでしょうか。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2024年4月の土曜日に、影森駅8時48分発の「秩父路2号」に乗車しました。

 羽生行きの車内はほぼ空席でした。8時51分発の御花畑駅で乗車がありましたが、それでも15人程度。6分後に羽生行き普通列車が出るため、210円の急行券が必要な「秩父路2号」は敬遠されているのでしょう。終点まで乗れば普通列車との差は22分まで広がりますし、リクライニングシートは快適なのですが……。

 とはいえ秩父駅、皆野駅と少しずつ乗客を増やしました。秩父~皆野間にはセメント工場が隣接した貨物駅の武州原谷駅があり、貨車が多数止まっています。皆野~長瀞間には荒川橋梁があり、水面からの高さ20mという迫力の景色が楽しめます。

 9時10分発の長瀞駅で4人乗車。下車も見られ、次の野上駅出発時の乗客は14人でした。東武東上線、JR八高線と接続する寄居駅では、3人下車し、1人乗車。ここで三峰口行き「秩父路1号」と列車交換しました。あちらは茶色の入った秩父鉄道旧標準色編成。「1号」は座席の半数程度が埋まり、乗車率は50%ほどと見受けられました。

 寄居駅を出ると速度が上がります。最高速度である85km/hを出しているようで、振動も大きくなりました。

午後の便の様子は

 2018(平成30)年に開業したふかや花園駅では2人乗車、武川駅では5人乗車と次第に乗客が増え、9時50分着の熊谷駅で大半が下車しました。下車した乗客からはホームで急行券が回収されます。

 筆者は熊谷駅から、10時15分発の「SLパレオエクスプレス」で三峰口まで戻り、皆野駅でSLを見送った後、15時5分発の「秩父路4号」で再び羽生駅を目指しました。午前中とは異なり、今度は窓側の座席が埋まっており、乗車率は60%ほど。乗車率が高い状態でも、リクライニングや中間肘掛けを使う人はほぼ見られませんでした。

 15時11分発の長瀞駅でかなりの下車と乗車がありました。高い乗車率だったのは、15時51分の熊谷駅着まで。ここで大半の乗客が下車し、乗車率は10%ほどになりました。土曜日なので、急行列車は羽生駅まで運行します。途中は行田市駅にのみ停車しますが、16時11分に終点の羽生駅に到着するまで、車内はガラガラでした。

「秩父路」に乗車した感想ですが、座席は元特急形ですから、総じて快適と感じました。一方で羽生~三峰口間は最大1時間48分かかりますから、トイレは設置してほしいところです。

 富山地方鉄道で西武鉄道10000系「ニューレッドアロー」が3両化されて導入されましたが、6000系置き換えの際に、秩父鉄道も導入するのはいかがでしょうか。西武の車両ですから、必要があれば西武鉄道からの直通もできるでしょうし、土日祝には、大きな側窓が観光客にも喜ばれそうです。

 ともあれ、伝統ある有料急行「秩父路」が、今後も愛される列車であってほしいものです。

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