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もう逆転には驚かなくなった…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2024年5月11日 22時0分

「差が激しいわね」そんな風に私が溜息をついていたのは金曜日、今週末のメトロポリターノは「Fin de Semana del Nino/フィン・デ・セマーナ・デル・ニーニョ(子供の週末)」と銘打って、スタジアム周辺がキッズパークに化すと知った時のことでした。いやあ、確かに日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)にはセルタ戦もあって、家族連れには嬉しい企画なんでしょうが、折しもその日はレアル・マドリーのリーガ優勝祝勝行事の日。

午前10時半にバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でトロフィーをもらった後、マドリッド州庁舎、マドリッド市庁舎を表敬訪問して、午後1時頃からは交通止めしたシベレス噴水広場のステージでファンとお祝いというスケジュールになっているんですが、その間、アトレティコファンはキッズパークで遊んでいろとでも?まあ、お祝いの様子はレアル・マドリーTVが生中継してくれるため、日本にいるファンも楽しめそうな時間で良かったと思いますが、ええ、水曜にCL決勝進出も決まっただけに、選手たちも一片の憂いもなく、ハジケられますからね。

それと比べ、とうにCLから敗退、来季の出場権もまだ確定せず、未だに4位争いという、お隣さんとは次元の違う闘いに明け暮れているのがアトレティコなんですが、え?もし何かの間違いでもあって、準々決勝でドルトムントを破っていれば、準決勝の相手、PSGはエムバペがまったく存在感を示せず。2連敗で敗退したぐらいなんだから、彼らだって、ウェンブリーでの決勝に行けたんじゃないかって?うーん、そう思うと、私もますます悔しくなるんですが、物は考えよう。

だってえ、木曜にはロンドンへの航空券が800ユーロ(約14万円)近くに高騰しているんですよ。それもお隣さんと当たるとなれば、いくら今季、マドリーが唯一、負けた2試合がアトレティコ戦だとはいえ、CLに関しては異次元の力が働くみたいですからね。2014年、2016年の決勝の二の舞になるのはほぼ間違いなく、アトレティコファンが涙して帰って来る運命にあるとすれば、6月1日は360度大型スクリーンもすでに稼働済み。おかげでピッチに置かれたスクリーンを見るより、ずっと快適に観戦できるようになったサンティアゴ・ベルナベウでのパブリックビューイングで、ドルトムントとの決勝を楽しむのも悪くはないかと思うことにしているんですが…。

まあ、そんなことはともかく、水曜のCL準決勝バイエルン戦2ndレグがどうだったかもお伝えしていかないと。1週間前の1stレグではミュンヘンで2-2とイーブンの結果だったため、特に今回はremontada(レモンターダ/逆転突破)と気合を入れる必要はなかったんですが、この日も忠実なマドリーファンたちは午後7時から、ベルナベウ周辺に集まって、4000人以上がチームバスをお出迎え。そのほとんどは試合のチケットを持っていないため、ええ、丁度、キックオフ1時間半前に私が家を出て、いつもTV観戦する近所のバル(喫茶店兼バー)にコーヒーを飲みに入ったところ、すでにテーブル席を確保して待機しているファンが何人もいましたからね。

チームバスがスタジアムに入った後、座れるバルを見つけるのは難しいんじゃないかと思ったんですが、それはそれ。4200人のバイエルンファンも駆けつけ、超満員になったベルナベウでの一戦はアリアンツ・アレナとは真逆のスタートに。ええ、あちらでは鬼のように攻めてきたトゥーヘル監督のチームに前半15分までに5、6本もシュートを撃たれ、クロースの神パスから、ビニシウスのゴールで先制したのが、冗談みたいでしたけどね。そこはやっぱり、スタンド全面を覆うモザイクで迎えてくれたファンの前で、防戦一方の姿は見せられませんって。

早くも12分にはビニシウスのシュートがGKノイアーが触った後にポストに当たり、そのボールを撃ったロドリゴも止められてしまうという、ビッグチャンスがあったんですが、残念ながら、最初の45分、観客はゴールを祝うことはできなかったんですよ。その脇で27分には1stレグでは控えだったナブリがケガを再発。このところ、マドリー移籍の噂が出たり、消えたりしている左SBのデイビスがピッチに入り、ハリー・ケイン、ムシアラ、ザネと合わせ、アタッカー4人を並べたトゥーヘル監督の攻撃的人員起用が頓挫してしまったなんてこともあったんですが、そのまま、試合は0-0で入ることに。

後半も序盤はシュートをバイエルンより、多く撃っていたマドリーだったんですが、GKノイアーを破ることはできず、うーん、ドルトムント戦で30本以上シュートを撃って無得点だったPSGはともかく、先週末には私もヘタフェやラージョが撃っても撃ってもゴールが入らない病にかかっているのを目の辺りにしたばかりでしたからね。これはもしやマドリーもと、眉をひそめかけた矢先の23分、バイエルンがカウンターを発動。ケインからボールをもらったデイビスがマドリーエリア内までドリブルで上がり、先制点を挙げてしまったから、さあ大変!

いえ、大変なのはバイエルンの方ですよ。というのも、この0-1という逆境がマドリーのレモンターダ魂を刺激するのは火を見るよりも明らかだったから。実際、即座にアンチェロッティ監督がクロースとチュアメニをモドリッチとカマビンガに代えた後、26分にはモドリッチの蹴ったCKから、バルベルデが撃ったボールがデイビスに当たってオウンゴールとなったんですが、この時はナチョがキミッヒの顔をど突いて倒したとして、VAR(ビデオ審判)注進を受けた主審がモニターをチェック。結果、ファールでノーゴールとなったんですが、何よりマズかったのは、バイエルンが残り時間を計算せずに先制してしまったことでしょうか。

何せ私なんか、マドリーダービーがある度、アトレティコが逆転されずに済むには残り10分?いや、ロスタイム入り直前に得点すれば、逃げ切れるかもしれないと考えている口ですからね。それなのに、トゥーヘル監督が31分にはザネをCBのキム・ミンジュに、40分にはもう大丈夫だろうと大黒柱のケインとムシアラをチュポ・モティングとミュラーに代えてしまったのは早計もいいところ。いえまあ、後で当人はどの選手も身体的トラブルで交代を余儀なくされたと言っていたんですけどね。

さすがに無得点のまま、アンチェロッティ監督が35分にロドリゴとバルベルデを下げ、ホセルとブライムを入れた時には、ええ、2021-22シーズンの奇跡のレモンターダラッシュの決勝トーナメント、奇しくもトゥーヘル監督が率いていたチェルシーとの準々決勝2ndレグやマンチェスター・シティとの準決勝2ndレグで終盤に口火を切ったのはロドリゴでしたからね。これは如何なものかと思ったものの、大丈夫。もう、このチームのレモンターダ根性はどの選手がどうとか言うレベルのもんじゃないんですよ。

それが起こったのはいよいよ大詰め43分、バイエルンのエリアを囲んでの長いプレーで、ビニシウスが撃ったシュートをノイアーがキャッチできず。当人によると、「ボールは胸の辺りに来ると予想していたんだが、芝でイレギュラーに跳ねて、少し上に来た」そうなんですが、こぼれたボールにホセルが脱兎のごとく駆けつけたんですよ。そのまま押し込んで同点ゴールをゲットしてしまうとはまさにシナリオ通り。おまけに1-1では延長戦でまた帰りが遅くなるのが嫌だった私の願いを叶えるがごとく、46分には再びホセルが今度はリュディガーのラストパスから決めて、勝ち越し点を挙げてくれたから、もう場内は興奮の坩堝と化すことに。

いやあ、元はマドリーのカンテラーノ(RMカスティージャの選手)だったものの、その後はクラブを転々。2年前にはアラベスでプレーしていたホセルは、奥さん同士が姉妹という縁で義兄弟となったカルバハルのつてで、パリでのCL決勝リバプール戦を現地観戦していたんですけどね。それが昨季は2部に降格したエスパニョールで16得点挙げ、サラ(スペイン人の得点王)を獲ったこともあり、マドリーにレンタル移籍で来ることになったのも何ですが、まさか、CL準決勝でマドリーのレモンターダの主役となるとは、当人も想像すらしていなかったのでは?

え、それでも最初は9分、それがホセルの2点目のVARオフサイド判定などにも時間がかかって、延々と続いたロスタイムの13分には、バイエルンもデ・リフトがゴールを決めていなかったかって?まあ、そうなんですが、その際、線審が先走って、リュディガーがエリア内に落ちてきたボールをヘッドした段階でオフサイドの旗を上げてしまい、主審も笛を吹いたため、マドリーの選手たちはプレーを停止。その状態で入ったゴールは認められず、同点にはならなかったのはラッキーだったかと。

もちろん、バイエルンサイドは猛抗議。そのまま試合が2-1と終わった後も「現代のサッカールールに反している」(トゥーヘル監督)、「オフサイドが明確でない時はプレーを続けさせなければいけない。線審はボクにミスだと謝っていた」(デ・リフト)と不満を爆発させていたんですけどね。といっても、たとえ同点になって、延長戦入りしたとて、「Esto es el Real Madrid, siempre creemos en nosotros y ha pasado una vez más/エストー・エス・エル・レアル・マドリッド、シエンプレ・クレエモス・エン・ノソトロス・ア・パサードー・ウナ・ベス・マス(これがレアル・マドリーだ。いつもボクらは自身を信じていて、また同じことが起きた)」(ビニシウス)という、彼らが勝っていたんじゃないかと思うのはきっと、私だけではない?

うーん、さすがに2年ぶりの決勝進出だけに、ピッチで「A por la 15/ア・ポル・ラ・デシモキンタ(15回目のCL優勝を目指して)」と書かれたユニを身に着けた選手たちが場内一周。往復ダイブなどで盛大に祝った後、会見に出てきたアンチェロッティ監督も「Es algo mágico y no tiene ninguna explicación/エス・アルゴ・マヒコ・イ・ノー・ティエネ・ニングーナ・エクスプリカシオン(これはマジックのようもの。全然、説明できない)」と、尋常ではないレモンターダ体質がどうして発現するのか、わからないようなんですけどね。こればっかりは、2014年からの10年間にCL優勝を5回もしているという事実という共に、もうマドリーはこういうチームなんだと思うしかないんですが、となると、おそらく今季の決勝も勝つのは…。

そんなマドリーも、日曜にはリーガ優勝祝賀行事を行うとはいえ、この3週間はリーガの残り4試合をプレーしないとならず、土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)にはアウェイでグラナダ戦に挑むことに。ファンにしてみれば、CL決勝まで間がありすぎて、じれったく感じられるかもしれませんが、アンチェロッティ監督とっては、「Estos partidos nos van a ayudar a preparar la final/エストス・パルティードス・ノス・バン・ア・アジュダール・ア・プレパラール・ラ・フィナル(これらの試合は決勝の準備をするのに役立つ)。ローテーションはするが、全員がプレーする」のだそう。

その中には先週末のカディス戦でプレシーズンにヒザの靭帯を断裂して以来、ようやく復帰を遂げたGKクルトワと、その少し前に同じケガから戻ったミリトンに実戦のリズムを取り戻させる目的もあるようで、いや、シーズン後、ブラジル代表でコパ・アメリカが控えている後者はわかりますけどね。ベルギー代表の前者は今年のユーロに行かないと予め宣言。となれば、調子を上げる必要があるとしたら、ルーニンに代わって、CL決勝でプレーしてもらう下心があるんじゃないかと穿ってしまうんですが、果たして如何に。

それより、気の毒なことになりそうなのはグラナの方で、ええ、19位の彼らは土曜の先の時間でプレーするマジョルカがラス・パルマスに負けない限り、たとえ、マドリーに勝っても今節で2部降格が決定。いえまあ、日曜にホームにマドリッドの弟分、ヘタフェを迎える17位カディスも負けると、セルタ、ラージョ、マジョルカの結果如何によって、降格が決まってしまうかもしれないんですけどね。逆に3チームが確定すると、やはり日曜にアウェイでバレンシア戦となる16位のラージョが助かるという面もあるんですが、この辺はいかにも世知辛い。

一方、木曜にはメトロポリターノでセルタ戦に向けた練習をしていたアトレティコはというと、こちらも土曜のアスレティックvsオサスナ戦の結果次第ではまた、5位との差が勝ち点3になってしまいますからね。ヒメネスが今季7度目の負傷をして、出場できないとはいえ、この試合には前節、出場停止だったグリーズマンも戻って来る上、極楽浄土のホームゲームとなれば、そんなに心配する必要はないはずですが…来週のミッドウィークリーガではコリセウムでの兄弟分ダービー、最終節はサン・セバスティアンでのレアル・ソシエダ戦とまだ2試合も超苦手のアウェイゲームが残っているのが、何か嫌ですよね。



【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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