経済同友会副代表幹事(リクルートホールディングス会長兼取締役会議長)・峰岸真澄「例えば、シニアの労働参加を促すため、短時間でも働けるような働き方の柔軟性が必要」
財界オンライン / 2024年2月5日 7時0分
仕事を細かくタスク分解することで…
─ 少子高齢化、人口減少時代に入り、あらゆる産業で人手不足が深刻化していますが、峰岸さんは現状をどのように受け止めていますか。
峰岸 マクロの状況で言いますと、リクルートワークス研究所の調査では、2030年に約341万人、2040年には約1100万人が不足するというデータが出ています。
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これは少子高齢化で労働人口が減少し、これからさらに高齢化が進むということなんですが、これを解消するには、機械化・自動化・DX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上と65歳以上のシニアの労働参加率を上げるという二つが大きな課題です。
わたしはこの二つに関しては、経営者自身で解決しうる課題だと思っています。一つは、経営者が生産性向上のために機械化・自動化・DXにしっかり投資する意思決定ができるかということ。もう一つは、エッセンシャルワーカー(医療、物流、小売りなど、日常生活を支えるのに不可欠な仕事の人たち)の人手不足に関して、シニアにいかに労働参加をしていただくかということですね。
─ 具体的にどう進めていけばいいですか。
峰岸 今のエッセンシャルワーカーを始めとするサービス産業のエリアで言うと、いろいろな業務内容が基本的にフルタイムの働き方を前提に仕事がつくられているので、そこをBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)しなければいけない。つまり、既存の制度や業務プロセスを抜本的に見直す必要があるということなんです。
BPRによって、仕事を細かくタスク分解することで、機械でできることは機械化し、自動化し、DXしていく。残った仕事を人間がやるということです。それも1週間フルに働くことを前提とした旧来型の働き方ではなく、タスク分解して、短時間でも、希望した人が働ける時に働けるようにタスクを切り出していくことが大事です。
─ なるほど。細かく業務内容を切り出していく。
峰岸 これはシニアの労働参加率向上にもつながる話です。
シニアの労働市場参加率で考えると、現状、60歳までは約80%の方が働いているんですが、これが65歳になると約50%になり、70歳以上になると一気に約20%まで減少します。
結局、肉体的にも、時間的にも、シニアがフル稼働で1日長時間働くのは大変ですから、毎日長時間働くということではなく、短時間でも働ける時に働くとか、働き方の柔軟性が必要になるんです。シニアの労働参加率が低いのは、働き方の柔軟性、受け入れる側の企業の柔軟性が低いということもあるのです。
─ リクルートでもそういう工夫はしているんですか。
峰岸 はい。リクルートでも採用の仕事がありますが、長時間働くのは避けたいとか、毎日は嫌だというのがあるので、普通に募集しても集まりません。
ですから、普通に求人を出しても人は来ないけど、今の仕事をタスク分解することで、仕事を切り出していく。マルチタスクではなく、シングルタスクにすれば人は来ます。ですから、個別企業ごとに見れば、そうした事例はいろいろあるんです。
例えば、コンビニエンスストアは仕事内容が多いですよね。公共料金の支払い対応から商品の陳列やトイレなどの掃除まで、いろいろあるわけです。これも例えば、朝5時から7時まで掃除だけ切り出していくと、近所のシニアや主婦の方が来てくれたりするんです。
こうした事例を積み上げていって、業界全体がからんでいくというのが一つの解決策になるかと思います。
─ そうやって徐々にシニアの労働参加を増やしていくということですね。
峰岸 はい。ですから、65歳から75歳までの方々が約1500万人いらっしゃいますが、そのうち10%が働いてくれれば150万人、20%が働いてくれれば300万人になる。これは相当な労働力です。ここにDXで企業が生産性を向上していけば、相当のインパクトがあると思います。
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