黒鉛が生命誕生のカギだった可能性 ケンブリッジ大の研究
財経新聞 / 2024年4月7日 17時38分
地球生命の起源は、DNAが宇宙に既に存在しておりそれが地球に飛来し、進化を遂げ現在に至るとする説(パンスペルミア仮説)と、そもそも地球にはDNA誕生の好条件が偶然そろっていて幸運にも地球でDNAが誕生し、現在に至るとする説のどちらが正しいのか、現時点では分かっていない。
パンスペルミア仮説は、DNA誕生の謎解きを避けており、現在までに地球で起こった生命進化の説明には便利だが、地球以外の惑星でいまだに生命の痕跡を確認できない理由を説明できない。その意味で、地球でDNAが誕生した前提での理論展開は、正統派科学の在り方なのかもしれない。
ケンブリッジ大学の科学者らは2日、地球でDNAが誕生した前提で、黒鉛(炭素)の存在が生命誕生のカギを握っていたとする研究論文を公開した。これによれば、生命誕生のカギを握る事件、すなわち生命誕生の元となるDNA分子が生成されるために必要な材料がそろう状況をもたらしたのは、地球誕生から約5億年間の冥王代と呼ばれる時代に起きたと考えられる、複数の巨大天体衝突であったとしている。
まず地球誕生約1億年後に火星サイズの天体が地球に衝突。その破片が現在の月になったのだが、その際に原始地球上の様々な物質が高温にさらされ、最初の分布状態の再編が起こった。
この事件により、現在の地球上で様々な鉱物を鉱脈から採取可能になった。だがこの状態では、生命誕生の条件は整わず、地球誕生から約3億年後に月と同じくらいの大きさの天体の衝突が起こったはずだという。この時、地球上では黒鉛が豊富に存在していたはずだ。
この状態において、1~1000気圧で1500~1700度の環境を仮定。黒鉛を多量に含む地殻を通過する、高温の窒素に富む火山ガスが供給される地表噴出孔をモデル化した実験を実施。その結果、RNAやDNAの塩基の1つであるアデニンの元となる分子が生成されたという。
つまり、大量に存在する黒鉛が火山ガスにさらされ、様々な有機化合物が生成され、それらが生命誕生のきっかけとなったとの結論だ。だがその先の何が、DNA誕生をもたらしたのか、まだまだたくさんの謎解きが必要なようだ。
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