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イトーヨーカドー、祖業のアパレル復活なるか アダストリアとの新ブランドが生んだ“相乗効果”

ITmedia ビジネスオンライン 2024年4月25日 10時0分

 イトーヨーカ堂とアダストリアが協業する新ライフスタイルブランド「FOUND GOOD(ファウンドグッド)」が、本格展開を開始した。2月15日から先行導入したイトーヨーカドー木場店を皮切りに、2024年7月までにイトーヨーカドー64店舗への拡大を目指す。

 FOUND GOODは、アダストリアが企画開発・生産した商品をイトーヨーカドーに供給。売場での商品陳列の提案や販促方法、SNS発信といったマーケティングをアダストリアが担当し、イトーヨーカドーは商品の販売、発注量の確認や調整を行う。

 商品ラインアップはレディース(構成比45%)、メンズ(同25%)、キッズ(同5%)の衣類に加え、靴やバッグ類などの服飾雑貨(同20%)、レジャーアイテムや食器といった生活雑貨(同5%)まで幅広く扱う。売場スペースは、店舗により100坪・150坪・200坪・300坪の4パターンを用意した。価格帯は専門店(高価格帯)とロードサイド郊外点(低価格帯)の間に当たる、中価格帯でそろえた。

●イトーヨーカドーが抱える課題

 今回の協業の背景には、イトーヨーカドーが抱える課題があった。「日本の人口構成から見ても、イトーヨーカドーの顧客は高齢層が多く、30~40代のファミリー層が少ない構造となっている」(イトーヨーカ堂 執行役員 専門店事業部長 梅津尚宏氏)

 イトーヨーカドーは今後の成長戦略において、「食」の分野を中心にしている。この「食」の分野を伸ばしていくためにも、30~40代の顧客を獲得することは必要不可欠だった。そこで目を付けたのが、30~40代から高い支持を得ているアダストリアだ。

 イトーヨーカ堂はアパレル事業撤退の約1年半前から、アダストリアと打ち合わせを行っていたという。「情報交換をして理解を深めつつ、30~40代のお客さまを獲得できるか否かを確認したうえで、アダストリアとの協業を決定した」(梅津氏)

●アパレルが生んだ相乗効果

 店舗を改装し、2月15日からFOUND GOODを先行導入したイトーヨーカドー木場店では、成果が出始めている。アパレルの客数は改装前比140%と大きく伸び、うち新規顧客率は12.4%だった。新規顧客の内訳を見ると、改装前にイトーヨーカドーを利用したことがなかった完全新規顧客は10.5%。改装前に食品は購入していたものの、衣料品を購入したことがなかった顧客は1.9%だった。

 アパレルの客数増加は、イトーヨーカドーが今後の成長戦略の柱としている「食」の売り上げ増加にも寄与しているという。「アパレルと食品を同時購入する顧客は、改装前の1.4倍に増加しています。アパレル購入者の82%が、食品を中心に買いまわっていることが分かったのです」(梅津氏)。

 顧客層にも変化があった。改装前は高齢層を中心とした顧客構造だったが、FOUND GOOD導入後、ターゲット顧客である30~40代が増加。中でも30~40代女性の来店客数構成比は、40.7%から49.4%に伸長した。

 こうした効果に一役買っているのが、「接客」だ。アダストリア ビジネスプロデュース本部長の小林千晃氏によると、同社主催の売場スタッフを対象とした接客研修・商品説明会を実施。同社の現役スーパーバイザーが、直接指導を行っているという。

 指導内容は、商品についてや売場メンテナンスの方法、店頭での待機姿勢、声かけの仕方、表情など多岐に渡る。こうした研修を受けた結果、売場スタッフが前向きに業務に取り組めているそうだ。「これまでの『業務といえば品出し』という状態から脱し、ブランドのファンづくりに取り組んでもらいたい」(小林氏)と期待を寄せる。

 FOUND GOODの店舗は、4月24日時点で47店舗までに拡大している。これは両社の計画通りで推移しているという。このうち、アダストリアがフルプロデュースする店舗は14店舗で、今後はこうした店舗から集まった好事例を他店舗でも展開する予定だ。FOUND GOODはイトーヨーカドーの祖業復活のきっかけとなるか。

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