Amazonから新しいFire HD 8(第12世代/2024年発売)が登場した。外観は前モデルを継承しつつ、名称も従来と同じ第12世代だが、これまでメモリが2GBだったのに対して、メモリ3GB/ストレージ32GBモデルと、メモリ4GB/ストレージ64GBモデルの2つが用意されている。いわば性能強化版といったところだ。
さて、Amazonのタブレット「Fire」シリーズは、音声アシスタントAlexaが使えることが1つの売りだが、中でもこのFire HD 8は、スマートディスプレイ「Echo Show」シリーズと似た画面で利用できる「Showモード」をサポートしているのが大きな特徴だ。
従来は、型番末尾に「Plus」が付いたワイヤレス充電対応モデルが存在しており、専用のワイヤレス充電スタンドに乗せるだけで、このShowモードへと切り替わっていたが、今回のモデルではワイヤレス充電対応モデルが消滅したため、切り替えはあくまでも手動となる。このあたりの使い勝手の変化は気になるところだ。
今回は、メーカーから借用した上位のメモリ4GB/ストレージ64GBモデルを用い、Showモードを含め音声アシスタント「Alexa」の使い勝手にどのような変化が生じているかをチェックしていく。
●外見は従来モデルとほぼ同じで見分けがつかない
まず外見をチェックしよう。ややずんぐりとしたボディー形状は、従来モデルと変わらない。これまでのFireは、マイナーチェンジであってもボタンの色が変わったり、位置が入れ替わったりするなど細部の変化が見られたが、今回の製品は背面の加工が2022年発売モデルとはわずかに異なるだけで、その他は非常にそっくりだ。
こういったことから、今回登場した3GBモデルと4GBモデルを見分けるには、設定画面のストレージ容量の項目で見分けるほかない。このようにメモリ容量、およびリアカメラのスペック強化(2MP→5MP)以外に違いはないことが、従来と同じ「第12世代」をそのまま名乗っている理由だと推察されるが、分かりやすさという点からはもう少しやりようがあったのではないかと思う。
ボディーは画面を横向きに使うことを選定としたデザインで、横向きの状態で上部ベゼルにインカメラが配置される格好になっている。ボタンやポート類は全て右側面に配置されているため、スタンドに立てた状態で充電する場合は、向かって右側からケーブルが伸びる格好になる。
●Alexaがシームレスに使えるのがFireの強み
さて、音声アシスタント「Alexa」の使い方を見ていこう。本製品のセットアップ段階で、Alexaを有効にするか尋ねられるので、そこで「はい」を選択するか、あるいはセットアップ完了後に設定画面からAlexaの項目を開いて有効化することで、Alexaとのやりとりが行えるようになる。
本製品は画面付きということで、スタンバイ状態のFireに話し掛けると、Alexaが音声で応答するとともに、画面にはそのサマリーが表示される。音声だけではなく視覚的に情報を見られるのが、音声だけで応答するスマートスピーカーと比べた場合の利点だ。
最近のスマホにおける音声アシスタントはいずれもこの挙動なので、ことさら特殊というわけではないが、OSレベルでこうしたシームレスさを実現しているのはやはり強みということになるだろう。
●タブレットモードとShowモードの切り替えは従来と変わらず
さて、このAlexaを使うにあたり、本製品の特徴となるのは「Showモード」だろう。このShowモードを有効にしておくことで、ホーム画面のデザイン自体が通常のタブレットモードからShowモードと呼ばれる専用モードへと切り替わり、天気予報や話題、スキルなどさまざまな情報を画面上にループ表示できるようになる。
ここで表示される情報はホームコンテンツと呼ばれ、Echo Showであれば設定画面からカテゴリー単位でオン/オフ可能だ。このFireでも設定画面の「Alexa」→「Showモード」→「ホーム画面」→「表示内容」で、表示するコンテンツの種類を指定できる。また連続してループ表示させるか否かも選べる。
なお、このShowモードはスタンバイ状態になると消灯してしまう通常のタブレットモードと異なり、画面がオフになることなく常時表示されるのが最大の利点だ。その仕組みを利用して表示されるのがホームコンテンツであるため、それを自ら制限するのは少々おかしな話なのだが、実際には画面が頻繁に切り替わる挙動によって注意力が削られることも多いので、不要な項目は遠慮なくオフにすればよい。
またShowモードのホーム画面を右から左へとスワイプすると、連絡/スマートホーム/ミュージック/アラーム/定型アクションなどのメニューが表示される。これらは音声を使うことなく、タップすることによって操作できる。特にスマートデバイスの操作は、この画面からタッチで操作するのが最も手軽だ。
ざっと使い比べてみたが、これらShowモードの機能は、できること自体は従来モデルと変わっていない。細かいところまで目を皿にして見比べると違いはあるかもしれないが、機能自体が大きく進化したり、あるいは省かれたりといったことはないようだ。
●Showモードの使い勝手は一歩後退 ユーザーが取るべき選択肢は?
以上のように、Showモードを始めとしたAlexaの側には大きな変化は見られないのだが、Fireタブレットのラインアップ全体として無視できないのが、ワイヤレス充電モデルおよび専用スタンド廃止に伴うShowモードの使い勝手の変化だ。
従来のワイヤレス充電対応モデルであれば、専用スタンドに乗せるだけで自動的にこのShowモードへと切り替わり、充電しながらAlexaを利用できたが、今回の2024年モデルはこうしたギミックがないため、Showモードへの切り替えは手動、かつ有線ケーブルでの充電を行いながらでないと、バッテリー切れを招いてしまう。
このあたり、タブレットモードとShowモードの切り替えをシームレスに行えたこれまでのモデルと比べて、使い勝手が悪くなったことは否めない。このFire HD 8に限らず、現行のFireタブレットからはワイヤレス充電機能が省かれつつあり、Showモードの利用環境としては後退しつつある。
そのため、ユーザーとしては毎回のケーブルが抜き差しをやむを得ないものとして利用するか、Showモードは使わずに通常のタブレットモードのまま、Alexaを利用することになる。従来のワイヤレス充電対応モデルを所有しているならば、無理に買い替えずに継続利用するといった考え方もありだろう。
ただしタブレットとしての利用がメインになるのであれば、従来モデルに比べてパフォーマンスが改善されているのは新モデルの強みだ。特に今回試用した4GBモデルは、同時発売の3GBモデルと比べて動作も明らかにサクサクだ。従来のもっさり感が気になっていたユーザーにとってはプラスだろう。
とはいえ、実売価格が各2000円アップの1万5980円(32GBモデル)/1万7980円(64GBモデル)へと値上がりしており、かつてのリーズナブルさが失われつつあるのは気になるところではある。セールなどの機会を使ってどれだけ安価に入手できるかによっても、満足度は違ってくると言えそうだ。