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【エンタがビタミン♪】「映画を届ける方法はいくらでもある」上映中止決めた映画祭の名物プロデューサー

TechinsightJapan 2020年3月15日 13時50分

群馬県高崎市にて3月20日から4月5日まで開催予定だった『第34回高崎映画祭』が全プログラムの上映中止を発表した。同映画祭のプロデューサーを務める志尾睦子さんが公式サイトで3月13日、「皆さまへ」と題して中止決定のいきさつと映画への思いを述べたところ、その言葉がテレビ・映画プロデューサーの森谷雄氏をはじめ映画監督たちの反響を呼んでいる。

高崎市にあるミニシアター・シネマテークたかさきの初代支配人を務めた志尾睦子さん。「私は映画館主であり、映画祭プロデューサーである」という彼女には来館者へ「よき環境」を提供することが務めであり、なおかつ「映画の灯を消さない」ことが大事だという強い思いがあった。

新型コロナウイルス感染拡大による影響が報じられるなか、シネマテークたかさきでは彼女と同じ志を持つスタッフたちの努力で環境を整えて映画の上映を続けている。公式Twitterでは3月13日に映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』の上映期間について「3/31(火)まで延長決定デス」と告知した。

高崎映画祭についても同じように「全ての上映に対して何ができるか」を考え、数日間に及ぶ協議を重ねたうえで全プログラムの上映を中止することにした。「私はこれを最善の決定だと思っています」という志尾さんは委員会が終った夜に部屋で一人、映画『フィッシュストーリー』(2009年3月20日公開)を観たそうだ。

伊坂幸太郎氏の同名小説を中村義洋監督により実写化した本作は、劇中に登場する売れないパンクバンド「逆鱗」が1975年に解散前のレコーディングで演奏した楽曲『FISH STORY』をめぐって起きる、時空を超えたエピソードを描いたものだ。「逆鱗」のメンバーを伊藤淳史や高良健吾らが演じ、多部未華子、濱田岳、森山未來、大森南朋などがキャストを務めた。

志尾さんは久しぶりに映画『フィッシュストーリー』を観て、大森南朋が演じたレコード屋の店主のセリフに自分の思いをリンクさせた。人類滅亡の危機が迫り廃墟と化した街で人の姿もないのに営業する店主は、ある男になぜ店を開けているのか聞かれて「レコード屋ですから」と答える。その店主の生き方に憧れた彼女は高崎映画祭についてもそのような姿勢でありたいと思い立つ。

さらに中村義洋監督が描くスピーディーな展開に刺激を受け、それまでとは違う自分に気づき「ぽっかりと開いた心」に新しい風が吹き抜けたという。

彼女は改めて「映画を身近に感じる」とはこういうことだと分かり、ネット配信で作品を堪能したことから「映画を届ける方法は、いくらでもある。今はそう思っています。たとえ、映画祭が開催中止になったとしても、それでも、高崎映画祭が皆さんに映画の素晴らしさをお伝えすることはできるわけです」とさらなる可能性に目を向けるのだった。

そのように映画と向き合う志尾睦子さんのメッセージに映画関係者から大きな反響があった。

『最初の晩餐』(2019年)、『33分探偵』(2008年)、『みんな!エスパーだよ!』(2013年)など映画やドラマを手掛ける森谷雄氏がTwitterで「読んでいるうちに涙が出ました。本当に映画の力を信じている方の言葉です」とつぶやいており、『第34回高崎映画祭』で最優秀作品賞に選ばれた『嵐電』(らんでん)の鈴木卓爾監督は「映画を愛する皆様ぜひ読んでください」と呼びかけた。

また映画監督で写真家の枝優花さんは、志尾さんについて「この方がプロデュースする映画祭が、地元であることの誇り。お会いする度に、元気と愛を頂いてる」と触れてから「映画を含め芸術が何のために存在しているのかを、改めて考える日々。人生を彩る上でなくてはならない存在なはず。少なくとも私は」と思いをつぶやいた。

画像は『高崎映画祭takasakifilmfes 2020年3月13日付Instagram「【第34回高崎映画祭 全プログラム上映中止のお知らせと、鑑賞券・専用チケットの払い戻しについて】」、2019年5月2日付Instagram「高崎映画祭プロデューサー志尾睦子のコラム」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)

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